第42話 五大ファミリー
メトロポリスの裏社会を仕切るマフィアの五大ファミリーはそれぞれ資金源とする事業を分けており、互いに不可侵条約を結んでいる。
◆メトロポリスにおける物流関連を取り仕切るモルトシオネ・ファミリー
◆メトロポリスの風俗業界を独占するプレッティーノ・ファミリー
◆メトロポリスの賭場・カジノを運営するスカルスノフ・ファミリー
◆メトロポリスにやってくる移民たち(不法移民を含む)への住居、職の斡旋など行う蔡一門
そして…五大ファミリーの中でも新興組織であり、メトロポリスの暗部ともいえる組織…
◆「ドラッグ」関連の生成・販売を取り仕切るアンブロア・ファミリー
現在の五大ファミリーが形成されたのは先の世界大戦以降であり、それまではアンブロアを除いた四大ファミリーがメトロポリスの裏社会の中心にいた。
世界大戦への合衆国参戦によるメトロポリス内の情勢の混乱。労働力確保のための移民の大量流入における人種間の軋轢と治安の悪化。これらの裏で急速に勢力を拡大したのがアンブロア・ファミリーだった。
アンブロア・ファミリーはこれまで禁じ手された「ドラッグ」に手を出したことで他のファミリーとも距離を取られており、警察側からも最も危険な組織として認知されている。この為アンブロア・ファミリー絡みの案件はアンタッチャブルといってもいいほど、
リスクを伴っていた。
勿論ハリーも警察時代にアンブロア・ファミリーの噂は聞いており、私立探偵に転身してからも極力関わらないように努めていた。
………………………
「…アンブロア・ファミリーの名前が出てくるとはな…中々に劉宗玄の状況も悪いみたいだな」
「今のハリーにいわれる筋合いはない。お前、大々的に指名手配されてるぞ」
「もう知っているよ。お陰で酷い目に遭った」
ハリーは布団から起きると紫蘭に案内されて蔡大老の邸内を散策した。紫蘭に何故アップタウンに来たのか理由を簡単に説明する。
「…ふーん、何というか中々にハリーも厄介事を抱えているようだな」
「まさか此処まで話が拗れるとは思わなかった…どうにもヤバすぎる案件に巻き込まれたようだ」
ハリーはフーッと深い溜め息を付くと邸内の庭園が見えてきた。蔡大老の邸宅はメトロポリスの中心部に近い場所だが、都会特有の喧騒のない雅な趣きがある。庭園は自然豊かで綺麗に手入れが行き届いており、見る者の心を穏やかにしてくれる。
と、そんな庭園の中に一際目立つ黒い塊がポツンとあるのにハリーは気づいた。気になって見つめていると塊が突然動き出す。塊は猫の形となって立ち上がると体をグーッと伸ばした。
「トント!」
思わずハリーは黒猫に向かって叫んだ。名前を呼ばれた黒猫はハリーの方を振り向くと一目散に駆け寄ってきた。ハリーは両腕を広げるとトントは胸に飛び込んだ。
(ハリー、目が覚めたのか!)
「ああ、心配かけたな。もう大丈夫だ」
(もう三日は寝てたぞ。本当に死んだかと思ったよ)
「すまんすまん、紫蘭たちに世話になってたな。………って事故に遭って三日経ってた…だと?」
トントの言葉を聞いてハリーの顔色が一気に悪くなった。紫蘭は不思議そうにハリーとトントを眺める。
「ハリー、そいつはトントというのか?」
「あ…ああ、そうだ。紫蘭、コイツも連れてきてくれたのか。ありがとう」
「名前は教えてくれなかったが、その黒猫からも色々聞かせてもらったぞ。お前の話も聞いて何となく全体の状況は見えてきたようだ」
「そうか…って紫蘭。お前、トントの言葉が分かるのか!?」
「ああ。何となくだが、思っていることくらいは分かる」
ハリーは思わず紫蘭の顔を凝視した。




