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第33話 『浄化』

「何をするの!?返して!」



 アリアはケヴィンに奪われたロケットを取り返そうとするが、ケヴィンはロケットを掲げてアリアを宥めようとする。



「アリア様、落ち着き下さい。このロケットこそが時空転移装置の力を増幅させる鍵なのです」


「何のことよ?」



 ケヴィンは「御免!」といってアリアは突き飛ばすとロケットを時空転移装置の光の球体に向けた。すると光の力が強まり、目を開けられないくらいの輝きを放ち始める。この様子を見たケヴィンは興奮を押さえきれない表情でアリアを見下ろした。



「ご覧なさい!素晴らしい輝きでしょう!このロケットは時空転移装置の元である素粒子の結晶であり、グランシステリア王国の王家に代々受け継がれし、秘宝中の秘宝。ようやく我が手中に収めることができました…」


「貴方…何故このロケットのことを?そして私も初めて聞くようなことを知っているの…?」



 アリアはケヴィンの言葉に恐怖を覚えつつも立ち上がって問いただす。ケヴィンは不気味な笑みを浮かべると懐から手帳を取り出した。



「これは私がグランシステリア王国にて手に入れた情報です。古文書を解読した結果、かつてグランシステリア王国は時空を越える技術を有しており、王家がその鍵を握っていた。ところがこの技術を巡り、クーデターや内乱が絶えずアリア様から八代前の王によって技術は封印されることになりました。そして技術に関する記録等は全て破棄され、ようやく混乱が収まったとあります。しかし、技術そのものが完全に失われた訳ではなかった」


「王家が…その技術を秘かに継承していた」


「その通り」



 アリアは思う節があるのか、青ざめた表情を浮かべている。そしてケヴィンは手帳に記載されたある記録について説明を始めた。



「王家は技術を封印しましたが、時空転移装置である遺跡そのものは破壊しませんでした。何故か?」


「あの遺跡は…王位継承の儀を行う聖なる場所だからよ。このロケットを遺跡に捧げて聖なる光を浴びること…」


「仰る通り。そしてアリア様、貴女の儀式が行われたのはいつでしたか?」


「私のときは…確か五年前だった気がする」



 アリアの言葉を聞くとケヴィンはニヤリと笑った。



「これで辻褄が合う」


「えっ?」



 アリアの頭上にクエスチョンマークが浮かぶ。しかしケヴィンは気にせず話を続けた。



「アリア様、貴女の王位継承の儀を行ったとき一時的に遺跡の時空転移装置が発動した。その時偶然ですが、私は大戦で訪れていた地でとある遺跡に迷いこみ…光に包まれた」


「………」


「そして私が行き着いた先こそグランシステリア王国。時空転移装置の技術はまだ消えていなかった」


「ジョーカー…いえ、ケヴィン。貴方の目的は何?グランシステリア王国の古文書の情報を手に入れて遺跡まで再現して…何を企んでいるの!?」



 アリアの語気が強まる。今のアリアに先程までの怯えた様子はなかった。



「私は…このメトロポリスを綺麗にしたいのですよ」



 そういうとケヴィンは装置の脇に置かれた新聞紙を取ってアリアに手渡した。アリアは新聞紙をゆっくりと開く。



「一面の記事に『次回の五輪(オリンピック)と万国博覧会の会場にメトロポリスが決定!!』とあります。この二つのイベントはメトロポリスの素晴らしさと繁栄ぶりを世界中にアピールできる最高の機会。その為にはメトロポリスの闇や澱みを排除しなくてはなりません」


「闇や澱み…ですって?」


「貴女がいらっしゃったダウンタウン…彼処は正にメトロポリスの闇を集約したかのような最底辺。メトロポリスにとって恥部とも言えるでしょう。もし国内外に知れ渡ってしまったらメトロポリスの評判や権威はガタ落ちです。何としても…『浄化』せねば…」



 アリアの脳裏にハリーの顔が思い浮かぶ。そしてケヴィンが言っている意味を理解すると、慌ててケヴィンの持つロケットを奪おうと飛び掛かった。



「それを返して!!!」



 しかし、アリアの背後から突然二つの影が現れてアリアの両脇を押さえると羽交い締めの体勢にした。ケヴィンは喚くアリアを尻目に時空転移装置の電源を切る。



「アリア様、しばらく貴女を執政部の監視下に置きます。不自由はさせませんので、何卒ご理解ください」


「ぐっ…やめて!離して!私を利用してたのね!卑怯者!!」



 ケヴィンは影にアリアを連行するように命じた。アリアは激しく抵抗するが、敢えなく部屋から連れ出された。ケヴィンはロケットを手にすると再び執政院の建物に向かう。



『ジョーカー』



 突然背後から壮年の男性の声が響いた。慌ててケヴィンは振り返るが、声の先には闇が広がっている。ケヴィンは声の主に向けて跪いた。



「『クイーン』を手中に収めました『キング』」


『よくやった。後は計画を進めるまでだ。残る…邪魔者の始末はわかっているな?』


「仰せのままに」



 ケヴィンは恭しく返事をすると、静かに立ち上がった。

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