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第31話 スカーフェイス

「私をケヴィンと呼んで探しているというのは…貴女を保護していた人物ですか?」



 ジョーカーが眉間にシワを寄せて、少し考え込むような仕草をしてアリアに問いかけた。



「ええ、そうよ。あの時彼が助けてくれなければもっと酷い目に遭っていたわ」


「なるほど…だから貴女ほど高貴な方があのような下賎の住まう処にいらっしゃったのですか…」


「彼に…ハリーに会ってもらえないかしら。彼はどうしても貴方に会いたいらしいの」


「…それは出来ませんね」


「え?」


「どういう意図が有って私に接触したいのかは分かりませんが、今の私には関係のないことです」


「でも…」


「アリア女王陛下」



 ジョーカーことケヴィンの表情が一気に険しくなった。顔についた傷も相まって凄みが更に増す。ケヴィンの変貌ぶりにアリアは恐怖のあまり思わず後ずさる。



「確かに貴女を保護したハリーという男には感謝しなくてはいけません。しかしグランシステリア王国のことが絡むとなれば話は違います」


「どういうこと?」



 アリアは不安そうにか細い声でケヴィンに問いかける。ケヴィンは後ろを向くとフゥと小さく溜め息をついた。



「グランシステリア王国の存在は今のメトロポリス執政部において極秘事項であり、我々が下手に口に出来る状況ではありません。況してやマダム・プレッティーノのような野蛮な連中にまで貴女の情報が漏れている以上、執政院内部の人間すら信用ならない状態です。私共としましてはこれ等の悩みの種を極力排除するためにあらゆる手を尽くしている次第です」


「あらゆる手…つまり…?」


「執政院外部の者でグランシステリア王国のことを知る者、そして情報を調べようとする者は全て抹殺する、ということです」



 ケヴィンの言葉にショックを受けたアリアはその場にへたり込んだ。表情は青ざめ、どう言葉を続けていいか分からない状態である。



「…ハ、ハリーも殺すつもりなの…?」


「無論必要とあらば。…よもやアリア様、グランシステリア王国のことを彼奴に話されたとか…?」


「………」


「…なるほど、そうですか」



 アリアの態度に対しケヴィンが邪悪な黒い笑みを浮かべる。背中越しだが、アリアにもケヴィンの意図が読み取れた。



「待って!それだけは、それだけはやめて!!」



 アリアはケヴィンにすがり付くように懇願した。ケヴィンは振り返るとアリアの必死な様子を不思議そうに眺める。



「?何故です、アリア様。何故そのような下賎の輩の肩を持つのです?」


「彼は私の命の恩人よ」


「それは重々理解しております。しかしグランシステリア王国の情報を知っている上に私の動向を探っている時点で彼奴は危険です。本当に貴女の敵でないとも限らない」


「そんな…」


「後は時間の問題です。ご心配におよずとも既に始末が完了している者もおります」


「え…?」


「貴女が保護されたバーの店主…ご存知ですね?」


「…!?」



 アリアがケヴィンの言いたいことを察して言葉を失う。ケヴィンはニコリと笑うとアリアをゆっくりと立たせた。



「アリア様、貴女に是非ともご覧いただきたいものがあります。私に付いてきていただけますか?」



 ケヴィンは再び柔和な笑みを見せるとアリアをエスコートして会議場を出た。

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