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第23話 意外な来訪者

 ハリーが連行されたのはかつての職場の隣に位置する西区の警察署だった。署内の留置所に入れられたハリーはボーッとした頭を冷やすために一眠りすることに決めた。

 よくよく考えてみたらアリアと出会ってから一睡もしていない。とにかく目まぐるしい状況を一度整理する必要がある。


 ハリーは留置所のベッドに横になると、この一日で起きたことを改めて振り返った。


 プレッティーノ・ファミリーに襲われていた亡国の女王を名乗るアリア。その故郷は世界の何処にもないグランシステリア王国という国。国を追われた果てに突然メトロポリスに流れてきたのだという。


 大戦に召集されてから突如姿を消したケヴィン。再びメトロポリスに現れたとき、グランシステリア王国と思われる見知らぬ土地に飛ばされたという話を賭場のオーナーであるジムに吹聴していた。


 その後メトロポリスの執政部が動き出し、ケヴィンを拘束。しばらくしてからケヴィンは執政部側に付き、グランシステリア王国の情報を封じようとしている。


 そしてアリアが今日…執政部の者とおぼしき人間に連れ去られた。正確には付いていったと言うべきか。


 更にはアリアと出会ったバーの店主であり、ハリーの数少ない友人であったトマスの死。一体誰が彼を殺したのだろうか。


 ハリーは頭の中で情報を整理する内に意識が遠のいていった。



 …………………



「ハリー・ライナス」



 数時間は寝たのだろうか。ハリーは自分の名前が呼ばれたことに気づき、目を覚ました。ふと顔を上げると鉄格子の向こうに自分を連行した初老の刑事が立っている。

 ハリーは体を起こすとゆっくり初老の刑事に近づいた。



「取り調べだ。幾つか確認したいことがある」



 初老の刑事はそういうとハリーを出して、一緒に取調室へと向かった。


 取調室は机が一つに椅子が三つ。そして窓には頑丈な鉄格子がはめられた簡素な作りになっていた。


 ハリーは初老の刑事に促されて椅子に座る。対面には初老の刑事と黒髪の眼鏡を掛けた若い刑事が座った。



「さて。まず貴方が何者であるかを確認したい」



 眼鏡の刑事が切り出した。ハリーは両者を見据えて黙って座っている。



「ハリー・ライナス。現在34歳、独身。メトロポリスのダウンタウン北部にある孤児院出身。職業は私立探偵でダウンタウンの南居住区のアパートに事務所を構えている。南区の警察署に警察官として従事していたが、婚約者を殺害された事件を機に退職。約二年前に私立探偵事務所を興して現在に至る。以上で間違いないな?」


「ああ…イエスだ」



 刑事からの問い掛けにハリーは素っ気なく答えた。



「では次に、先日の「バー・フリーダム」前で起きたプレッティーノ・ファミリーの構成員が射殺された事件について確認したい」


「俺の拳銃が凶器に使われた件か?」


「…話が早くて助かる」


「確かに凶器は俺の持ち物だ。だが撃ったのは俺じゃない」


「目撃者らしき人間によるとその場にいた女が撃ったと聞いている」


「…そうだな。どちらかというと俺はその女が構成員に連れ去られそうになったのを止めに入った。そして連中と揉める内に彼女が俺を助けようと発砲した。が正解だ」


「…つまり正当防衛と?」


「そういうことだ」



 眼鏡の刑事が眉をひそめる。だがハリーは事実を正確に述べているだけなので疑われてもどうしようもない。

 


「とにかく目撃者がいる以上はその話が事実なのだろう。ではその女は何処だ?」


「知らん」


「何故だ?」


「確かに途中までは一緒にいた。だが姿を消したから、今何処にいるかまでは分からん」


「………シラを切るのか?」



 眼鏡の刑事の口調が少しずつ荒くなる。初老の刑事が眼鏡の刑事を諌めてハリーの方を向く。



「若いのが失礼した。これ以上の詮索は無駄のようだ」


「構わんさ。同業者だったからおたくらの気持ちも分かる」


「では次に、「バー・フリーダム」の店主殺害の件についてだ」



 ハリーの表情が一気に曇る。まさかマスターに魔の手が及ぶとは…



「マスターを殺したのは俺じゃない」


「それは我々も把握している。貴方を尾行していたから、店主を殺せるタイミングがないことも貴方のアリバイも証明できる」


「尾行していた…?何故?」


「実はプレッティーノ・ファミリーの構成員殺害の件で、貴方と被害者が事前に揉めていたというタレコミがあってね。重要参考人として動向を張っていたんだ。その流れで店主殺害に出くわした訳だ」


「…なるほど、そういうことか」



 ハリーは深い溜め息をつく。



「ではマスター…トマスを殺したの犯人の目星はついているのか?」


「恐らくプレッティーノ・ファミリーの連中が先日の報復で襲ったのではないかと我々は見ている」


「…バカな。報復にするにしても狙いは俺だろ?トマスは友人だったが、連中の恨みを買うような行為はしてないはずだ」



 ハリーは刑事たちの推論を即座に否定した。仮にハリーを炙り出す為にトマスを襲ったとしてもトマスに拷問を加えられた形跡はなかった。寧ろ即座に射殺されたと思われる。


 何故トマスは狙われたのか。ハリーが狙いでないとしたら、別の何か…口封じ…?トマスは知ってはならない事実を知っていたのか?


 ハリーの脳裏にジムの言葉が浮かぶ。「グランシステリア王国に関する情報を他言したら痕跡を残すことなく消す」と。


 だとすると、トマスを殺した犯人は…。


 その時、取調室のドアにノック音が響いた。初老の刑事が出ると警官が慌てた様子で耳打ちする。耳打ちされた情報に眉をひそめた初老の刑事は警官を戻すとハリーの前に再び座った。



「ハリー、釈放だ」


「「釈放?」」



 ハリーと眼鏡の刑事が同時に声を上げる。初老の刑事は頭を掻いて溜め息をついた。



「上からの指示だ。身元引受人が来たから直ぐに釈放するように。だそうだ」


「身元引受人?」



 誰だろう?心当たりがあるとしたらドン・モルトシオネの手の者か。ハリーは首を傾げて刑事たちに促されるまま身支度を整える。


 ハリーが手続きを終えて警察署を出ると三台ほどの黒塗りの車が出迎えていた。ハリーが怪訝な表情を浮かべていると、一台から見覚えのある男たちが降りてハリーに近づいた。



「先日は世話になったな…ま、とりあえず乗れや」


「…!!!」



 ハリーの前に現れたのは白いジャケットの男と赤スーツの男。「バー・フリーダム 」前でアリアを襲ったプレッティーノ・ファミリーの構成員だった。

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