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第22話 最悪の展開

 ジムがガーランドに粛清された頃、ハリーは賭場を出て一人帰路に着こうと歩んでいた。

 既に陽は傾き、「蜘蛛の糸」の向こうにそびえるアップタウンの高層ビル群の合間に西日が射し込む。


 ハリーはアップタウンの光景を見て、ふと足を止めた。あの向こうにケヴィンがいるとしたら「蜘蛛の糸」を渡る必要がある。


 しかしダウンタウン側から「蜘蛛の糸」を通るには通行証がないといけない。どうしたものかと、フーッと溜め息を付く。



「トント…」



 不意にハリーは賭場にトントを置いてきたのを思い出した。慌てて賭場へ戻ろうとすると、ハリーの目の前に黒猫が現れた。



(大丈夫か!?ハリー)


「トント…そりゃ、こっちのセリフだ」



 ハリーはしゃがんで両手を広げる。トントはハリーの元に駆け寄り、胸に飛び込んだ。



「助かったよ、お陰で有力な情報が得られた」


(そ、そうか…なら良かったんだが……)



 ハリーの言葉にトントは浮かない声を上げる。トントの様子にハリーは首を傾げた。するとトントは突然ハリーの腕から降りて、頭を下げた。



(すまない!!ハリー!私としたことが…もっと早く伝えるべきだったのに…どうしてもあの場で言えなかった…)


「?何のことだ?謝るなんて…」



 ハリーがトントを宥めようとすると、トントは顔を上げた。その表情は自責の念からとても暗く見える。



(アリアが……アリアが、連れ去られた…)


「な、な、何!!!」



 トントの言葉にハリーは思わず大声を出す。慌てて周りを見たが、幸い近くを歩く人間は居なかった。ハリーは改めてトントに尋ねた。



「どういうことだ!?」


(ハリーが出てから一時間くらい経ってからだろうか。突然スーツ姿の男が複数訪ねてきたんだ。アリアが応対したんだが…何やら男たちと話をしたかと思ったら男たちと一緒に部屋を出ていってしまったんだ)


「男たちと話を…?」


(ただ何か無理矢理という訳ではなかった。どうもアリアの方から男たちに付いていったように見えた。だから私も確証が掴めず、やむ無くお前さんに知らせようと賭場へ行ったんだ)


「…そいつらは何者だ?」


(よくは聞き取れなかったが…執政部の手の者と名乗っていたな)


「……!!」



 トントの言葉にハリーは表情が変わった。ジムから聞いたケヴィンの話とアリア…その裏でメトロポリスの執政部が何かしら絡んでいる。

 やはりアップタウンに渡らなければならないようだ。



「トント…一旦家に戻ろう」


(そ、そうだな、ハリー)



 トントは申し訳なさそうにハリーに付いていく。と、ハリーは再び歩を止めた。トントはハリーの様子に驚く。



(どうした、ハリー?)


「…トント、何か嫌な予感がする」



 ハリーは方向転換して歓楽街へと歩を進めた。トントが追い付けないくらいの速さで、ハリーは目的地へと只管進んだ。


 歓楽街に着く頃にはバーや居酒屋、風俗店の看板やライトで街全体がきらびやかになっていた。ハリーはその中で「バー・フリーダム」を探す。


「バー・フリーダム」は本来開店している時間にも関わらず、看板も照明も消えて店内は閉店したかのように静まり返っていた。

 

 ハリーは逸る気持ちを押さえて店のドアに手を掛けた。ドアは鍵が掛かっていないのか、簡単に開いた。ゆっくりとハリーは店内へ入る。



「マスター…?」



 店内は真っ暗で何も見えない。ただアルコールが複数混ざったような強い臭いと靴に液体のような感触を覚える。



「マスター…いるのか?」



 ハリーはトマスに呼び掛けるが、反応はない。留守か?



「トント…ライトをつけられるか?」


(あ、ああ…やってみる)



 トントは入り口近くに照明のスイッチを見つけると前足で器用に押した。店内が一気に明るくなる。すると…


 ハリーが想像している以上に店内は荒れ果てていた。酒瓶やグラスは割れて散乱し、アルコールが床にぶちまけられている。椅子やテーブルもひっくり返されており、まるで襲撃に遭ったのような光景である。


 ハリーは急いでトマスの姿を探す。が、トマスはバーカウンターの裏で頭から血を流して倒れていた。



「マスター!!!」



 ハリーは慌ててトマスを抱き起こして、呼び掛ける。が、トマスに反応はない。ハリーは心音を確認したが、既にトマスは事切れていた。


 ハリーは茫然自失となりグラスの棚にもたれかかってしゃがみ込んだ。トントは心配そうにハリーの元に駆け寄る。



(ハリー…?)


「マスター…トマスは死んだ…」



 ハリーは目の前のことが信じられず、ショックで立ち上がることができない。早く救急車か警察を呼ばねば…。そう思っていたとき、店に誰かが入ってきた。


 入ってきたのはくすんだコートに身を包んだ初老の男と黒髪の眼鏡を掛けた若い男だった。二人はバーカウンターの中でしゃがみ込んでいるハリーとトマスの遺体を見て、ゆっくりと近づいた。



「ハリー・ライナスだな」


「…ああ」


「先日の銃撃事件の重要参考人として出頭してもらう。そして…そこの店主の殺害についても事情聴取を受けてもらう」



 初老の男が胸元から手帳を取り出し、ハリーに見せた。見覚えのあるマーク…二人は刑事だった。ハリーは抵抗することなく、二人に連れられて警察署に連行された。

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