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第14話 束の間の休息

 ハリーたちはトマスの厚意でスモークサーモンのサンドイッチとスクランブルエッグの朝食をご馳走になった。

 アリアは初めて食べるものなのか、興味深そうに朝食を見るとハリーの動きに合わせて口に運ぶ。アリアの舌に合ったのか、表情が綻んだ。



「いかがかしら?」


「ありがとう…とても美味しいわ」


「あら嬉しい、コーヒーもサービスしちゃう!」



 トマスは機嫌良く鼻歌を歌いながらコーヒーを淹れ始めた。ハリーもホッとしながらサンドイッチを口に運ぶ。トントは床でミルクを舐めていた。



「で、ハリーちゃんたちはこれから帰るの?」


「ああ、一旦帰ってこれからやることを整理する」


「気をつけてね。まだ警察がパトロールしてるから」


「ところでマスター。昨日彼女を襲った男たちに心当たりあるか?俺は人身売買組織の連中と睨んでるんだが…」


「うーん…言いにくいんだけど、どうやらあの男たちはプレッティーノ・ファミリーの末端の構成員らしいのよ。顔まで良く見てないから確証はないけどね」


「プ、プレッティーノ・ファミリーだと!?」



 ハリーは口に含んだサンドイッチを吹き出した。そしてハリーの顔色は一気に青ざめていく。その様子をアリアが不思議そうに眺めた。



「知り合い?」


「いや、しかし…ヤバい連中に喧嘩を売っちまったか…」


「まー…相手は末端だし、流石に上層部がでしゃばって来ないわよ」


「だといいが…」



 トマスのいうプレッティーノ・ファミリーとはメトロポリスの裏社会を仕切るマフィアの五大ファミリーの一つであり、モルトシオネ・ファミリーと並ぶ規模を誇っている。


 プレッティーノ・ファミリーの資金源は風俗業界であり、メトロポリスの風俗の影には全てプレッティーノ・ファミリーが絡んでいるといってもおかしくない。


 アリアを襲った男たちは「娼婦狩り」と呼ばれる連中であり、見ず知らずの女を拉致して薬漬けにしてから配下の風俗店に売り捌くという極めて非人道的な行為を行っていた。

 正直ハリーもこれらの行為に関しては胸糞悪く感じている。


 物流関係を資金源として取り仕切るモルトシオネ・ファミリーとは表向きこそ不可侵条約を結んでいるものの、水面下では敵対関係にあり、常に一触即発の状態が続いている。


 もしハリーがモルトシオネ・ファミリーと懇意にしていることや今回の銃撃の件がプレッティーノ・ファミリーに知れたら大規模な抗争の火種になりかねない。



「ハリーちゃん、大丈夫?」


「あ、ああ」



 ハリーが深い溜め息をつくと、頭を抱えた。すると誰かがその背中を擦ってきた。ふとハリーが横を見るとアリアが腕を伸ばしている。



「事情は分からないけど、貴方を巻き込んだ手前これくらいはさせて」


「ふう…すまないな」



 ハリーは少し落ち着いたのか、アリアに笑みを見せた。ハリーは残りのサンドイッチを口に入れると立ち上がった。アリアも食べ終わると上品に口元を拭いてハリーに続いて立つ。トントもミルクを飲み干すとハリーの足元に来た。



「マスター、ごちそうさま。そろそろ帰ろう」


「どういたしまして。また来てね~」



 ハリーたちはトマスの案内で店の裏口から自宅アパートへと帰った。

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