第13話 グッドモーニング、メトロポリス
ハリーとアリアが話している内に徐々に外が明るくなってきた。どうやら夜が明けてきたようだ。
ハリーにとっては何とも濃い一日が終わろうとしていた。気づけばバーボンの酔いもスッカリ覚めてしまっている。
当初アリアを病院に預けて帰る予定だったが、ケヴィンの顔をアリアが知っていたことで急きょ彼女を連れて家に戻ることにした。
ハリーはトントに外の様子を見てくるように頼んだ。規制線が敷かれているなら少し回り道して帰る必要がある。
ハリーはアリアにその辺のタオルケットを渡して身に纏うようにいった。この時期のメトロポリスの朝は冷えるのとボロボロの姿ではきっと警察から職質されるに違いない。
(ハリー、大丈夫だ。規制は一部解除されている。裏口からなら見付からずに出られるだろう)
「分かった、トント。もう少ししたら出発しよう」
トントの言葉にハリーはいつものように返す。が、アリアは怪訝な様子でハリーを見た。
「ねえ、気になったんだけど」
「何が?」
「誰と話しているの?その猫?」
ハリーはハッとしてトントを見た。トントは我関せずとそっぽを向いている。
「ま、まあそんなとこかな…一人暮らしが長いと自然と飼い猫が何考えているか分かるというか」
「変なの」
ハリーは苦しい言い訳をしたが、アリアはそこまで突っ込むことはしなかった。
「…つまり貴方は寂しがりや?」
「そう考えてもらっていい」
ハリーは諦めたように認めた。横でトントがクククと笑う。
と、そこへトマスがやってきた。
「マスター!」
「ごめーん、ハリーちゃん。遅くなっちゃった…あら?」
トマスはアリアとトントを見て止まった。アリアは慌ててハリーの後ろに隠れようとする。
「大丈夫だ、彼はこの店のマスターだ。俺たちの味方だよ」
「あら、目が覚めたの?意識があるなら良かったわ」
「あ、あの…」
「あー、大丈夫。あたしのことは気にしないで。こんなこと日常茶飯事だから。もっと酷いことだってざらなんだから」
怯えるアリアにトマスは笑って落ち着かせようとする。ハリーもアリアの背中を擦って警戒を解こうとした。
「それでマスター…大丈夫だったのか?」
「随分聞かれたわよ。でもあたしが直接見た訳じゃないし、とりあえず逃げた男たちの情報だけは教えたわ」
「恩に着る…」
「大丈夫。貴方たちのことはいってないから。それよりお腹すかない?あたしは一晩中話を聞かれたからペコペコよ」
トマスは場を和ませようと笑ってお腹を叩いた。ハリーとアリアの表情が少し緩んだ。
「ありがとう。少しごちそうになろうかな」
「勿論これもツケにしとくわよ」
「だよな」
ハリーはトマスの肩を叩いて笑った。トントもハリーの足元に寄ってスリスリする。
「トントも腹減ったか?」
「トントちゃんの分もあるわよ」
(流石はマスター。分かってらっしゃる)
トントが安堵するとトマスにひょいと持ち上げられた。
(えっ、えっ?)
「トントちゃん、久しぶり!もうスリスリしちゃう!!」
突然トントはトマスに顔をスリスリされた。トントは激しく嫌がって抵抗するが、トマスは気にせず非常に嬉しそうである。
(おい、マスターやめろ!髭がチクチクして痛いんだ。いい加減ハリーも止めろ!)
「やだね。さっきのお返しさ」
ハリーはいたずらっぽく笑った。つられてアリアもようやく笑みを溢した。




