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第12話 女王陛下の私立探偵

「…断る」


「何故?!」



 ハリーは少し黙ってから答えた。ハリーの答えに納得いかないのかアリアは身を起こして詰め寄る。



「何故といわれても正直あんたの話は何から何まで信じがたい。それに俺には先約がある。あんたに構っている場合じゃないんだ」


「……そうよね、見ず知らずの女にいきなり言われても無理よね」


「そういうんじゃなくて…」



 アリアの目からみるみる内に涙が溢れだす。ハリーは慌てて宥めようとしたが、アリアは声を上げて泣き出した。溜まっていたものが一気に爆発したようだ。



(あーあ、ハリーが女を泣かした)



 トントが脇からハリーを茶化す。ハリーはトントを睨み付けてアリアの背中を擦って落ち着かせようとした。



「とにかくさっきも言ったように夜が明けたら病院へいく。あんたとは其処でお別れだ。そのグランシステリア王国だっけ?そいつは警察にでも行って戻れる方法を聞いてみるといい」


「グスッ…それより私は此処が何処なのかも知らないわ…」


「此処は合衆国いや世界における最大の都市、メトロポリス。で、その最底辺にあたる街だ」


「メトロポリス?最底辺…?」


「要はあんたみたいな高貴な女は来るとこじゃないのさ。というかメトロポリスすら知らないのか?」


「ええ…グスッ…初めて聞くわ…」


「嘘だろ…女王とかいうくらいだから、多少は他国のことも知ってそうなもんだと思っていたが…此処まで話が通じないなんて…」



 ハリーはアリアの言葉に愕然とするが、気を取り直して何か口にするかを聞いた。アリアは首を横に降って拒絶の意思を示した。どうやらまだ警戒は解けないらしい。



「参ったな…ドンの依頼を片付けないといけないし、警察は張っているし…どうしたもんか…」


「ねえ、さっきから貴方のいっている先約って何?」



 ハリーが悩んでいるとアリアがハリーの話に興味を持ったのか少し落ち着いて話し掛けてきた。



「ま、何というか…この街のマフィアのボスから人探しを頼まれたのさ。しかも二週間の期限付きでね」


「マフィア…」


「まー、あんたにゃ関係ない。忘れてくれ」



 ハリーは手を降ってアリアの興味を逸らそうとする。しかしアリアは尚も食い下がってきた。



「その人の顔とか分かるの?」


「え?…うーん、写真ならあるが…まあ見せるくらいならいいか」



 ハリーは懐に入れた手帳を取り出し、間に挟んだドンの息子の写真をアリアに見せた。正直アリアに見せたところで当てなどある訳がない…



「この人、知ってるわ」


「だろ?知ってる訳がな…何ィい!!?」



 ハリーは思わず大声を上げた。



「グランシステリア王国で会ったことがある。確か遠い所から来たとかいっていた」


「嘘だろ…どうなっているんだ?この男は数年前に大戦に参加して行方不明になったんだ。先の大戦のことすら知らないあんたがどうして…」


「他人の空似かもしれないけど、この目付きと顔の傷に見覚えがある。確かに彼よ」



 ハリーの脳裏に特大のクエスチョンマークが浮かぶ。アリアはここぞとばかりにハリーに詰め寄った。



「ねえ、提案だけど私と一緒に行動してくれない?」


「は?なんで?」


「貴方の探し人のことを私が知ってるということは、もしかしたらその人がグランシステリア王国への戻り方を知ってるかもしれない。それに見知らぬ街で一人行動するのも心許ないから、貴方のようなボディーガードが必要なのよ」


「嫌だね、タダ働きはゴメンだ」


「報酬は1000万でどう?」


「マジか!?」


「ええ、王国の隠し財産から1000万()()


「へ?()()?ドルじゃないのか?」


「バルはグランシステリア王国の通貨よ」


「……やっぱりなかったことで」


「ダメ?」


「はー…この街で使えない金を貰っても意味ないよ」


「…分かったわ」



 そういうとアリアは徐に服を脱ぎ出した。突然の光景にハリーは目が点になる。



「…こ、この体で払う…のはどう…?」



 アリアは涙目で顔を赤くしながらハリーを見る。ハリーは我に返ると慌ててアリアにコートを掛けた。



「い、いや報酬はまたでいい。あんたがこの男と面識があるのが分かっただけでも大収穫だ。ひとまずあんたの提案を飲むよ」



 ハリーの言葉にアリアの表情が一気に緩む。思わずアリアはハリーに抱き付いた。しどろもどろなハリーが横を向くとトントが溜め息を付いて仕方ないと呟いた。

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