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第11話 不思議の国のアリア

「えーと、すまない。少し整理させてくれ」



 ハリーはアリアを見て深い溜め息を付いた。亡国の女王だと?身なりこそボロボロだが、確かにアリアはどこか凛とした高貴な雰囲気を醸し出してはいる。しかしながら余りにも信じがたい話である。


 ふとトントに目をやるとトントもハリーと同じような表情をしている。どうやらトントも理解が追い付いていないようだ。



「あんたは亡国の女王ということでいいんだよな?」


「ええ」


「で、この街には気づいたらいたと」


「そうよ」


「……そもそもどうやって此処に来たんだ?」


「それは…」



 アリアの言葉が詰まる。どうやら彼女も何故此処にいるのかが分からないらしい。



「実は私の国、グランシステリア王国で先日クーデターが起きたの。それまでグランシステリア王国は戦争とは無縁の平和な国だった。

 しかし側近の裏切りで私は追われる身となり無我夢中で逃げることになって…。そしてある遺跡の近くまで追い詰められたとき、突如光が降り注いで気づいたらこの街の中心部に佇んでいたという訳。そしたら変な男たちに絡まれて連れていかれそうになったの…」


「………」



 ハリーは次の言葉に迷う。そもそもグランシステリア王国など知らない。一体この世界の何処にある国だというのだ。



「あの…一つ聞いていいか?」


「どうぞ」


「あんたの国はヨーロッパにあるのか?」


「ヨーロッパ…?今まで聞いたことないわね。そんな国」


「いや、国じゃないんだが…つい数年前までそこで世界を揺るがす大戦が起きていたんだが、それもあんたは知らないのか?」


「ええ」


「………」



 ハリーは更に言葉を詰まらせた。ダメだ、こりゃ。まるで話が噛み合わない。

 そのグランシステリア王国のクーデターのニュースなぞ毎日のように新聞を読んでいるハリーすら知らない。

 余程の田舎にある国なのか、或いはこの世界とは別の異次元にあるのか、もしくはこの女の妄想なのか…



(なあ、ハリー。彼女は重症だ。早いとこ病院に連れていった方がいいと思う)


「奇遇だな。俺もそう思う」



 トントと目配せして会話する。アリアは首もとからロケットのようなものを出してハリーたちに見せた。ロケットには年季の入った家紋のような模様が刻まれている。



「これはグランシステリア王国の正当な王位継承者の証。私を襲ったのは男たちはこれを狙った反乱軍の手の者ではないかと考えていたの」


「いや、さっきの連中は人身売買組織と思うからあんたが女王とか関係ないと思うぞ…」



 ハリーは陰謀説を大真面目に話すアリアを見て閉口する。



(ハリー、これ以上彼女に関わると色んな意味でヤバイぞ。早いとこオサラバしよう)


「奇遇だな。俺もそう思う」



 ハリーとトントは深く溜め息を付いてこの状況をどうしたものか悩んだ。



「ところで」


「うん?」


「ハリー、貴方は探偵といってたわよね?」


「ま、そうだが…」


「一つ頼みがあるんだけど、聞いてもらえないかしら?」


「はい?」



 ハリーはアリアの言葉に間抜けな声で返す。



「この私がグランシステリア王国に戻る方法を一緒に探してほしいの。グランシステリア王国は今、大変なことになっているはず。何とか領民たちを助けたいの」



 ぶっ飛んだ依頼にハリーとトントは思わず顔を見合せた。

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