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まぜるなキケン~調合士の迷宮探索~  作者: 十並あそん
二章 新人探索者
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2-08 平原エリア




 女性職員に案内された小部屋、そこはガランとしておりほとんど何もなかった。

 中にあるのは20センチ四方で高さ1メートルほどの石柱と、その奥に置かれた複雑な模様の描かれた台のようなもの、それだけであった。


 部屋に入るとレオンは女性職員の誘導に従って石柱の上に手を置いて魔力を流し込む。すると台の上の模様……魔法陣が輝きだした。

 どうやらこの石柱が認証装置のような役割を果たしているようだ。

 やがて魔法陣がひと際大きな光が発してからその光が収まると、台の上に小さな三角形のプレートのようなものが現れていた。


 これが認証タグと言われるもののようだ。

 三角形は迷宮を表しているようで5層に分かれており、上から順番に1~5つの透明な石がはめ込まれていた。

 これらの石はそれぞれのエリアボスを倒すことによって、宝石のような輝く石に変わるそうなので、これを見れば一目で攻略状況が分かるようになるとのことであった。


 女性職員に言われてその認証タグと探索者証を渡すと、彼女は探索者証にあった三角形の窪みに認証タグをはめ込んでから、なにやら魔力を込め始める。


 それから少しして探索者証を返却されたのだが、窪みのあった場所には初めから1枚のプレートであったかように認証タグがぴったりとはまっていた。

 どうやら彼女は金属加工系のギフトを持っているらしく、その力を使って探索者証と認証タグを一体化させたらしい。

ちなみに彼女はこのギフトのおかげで探索者ギルドに採用されたらしい。

 またギルド本部にも彼女と似たようなギフト持ちがいて、ランクアップした際にはその人たちが認証タグを新しい探索者証に付け替えてくれるとのことであった。


 無事登録を終えたレオンたちはそのまま小部屋を出て探索者たちの列に戻ったのだが、その際同行していた女性職員が先ほどの男性職員に向かって何事かを耳打ちしているのが目に入った。

 そして男性職員の顔色が見る見る悪くなっていくのを見て、レオンはそこからそっと視線を外した。


列に戻った後レオンたちは数分もせずに先頭へと到達し、いよいよ転移部屋へと向かうこととなった。


宝石が緑色になったのを確認してレオンたちはその部屋へと向かう。

部屋の中は先ほどの小部屋と似たような作りとなっており、部屋の中央には相変わらず認証用の石柱が立っていた。

唯一の違いは台の代わりに、床一面に魔法陣が描かれていたことであった。


 レオンとセフィは石柱へと近づいて、探索者証をその上にかざす。

 するとやはり部屋一面に張り巡らされた魔法陣が光り始めた。 

 やがて一瞬浮遊感のようなものを感じたかと思うと、光が収まる。

 部屋を見回して見ると変化は見当たらなかったが、どうやら無事に転移できたようであることはわかった。

 部屋の出口から見える外の景色が変わっていたからだ。


 レオンとセフィはさっそく部屋の出口へと近づき、外の様子を伺ってみる。


 そこは円形のホールのような場所であった。

 外側の壁際にはたくさんの小部屋が並んでおり、中から探索者たちが出てきていることから、それらがここと同じく転移部屋であることが見て取れる。


 そしてその小部屋たち間で圧倒的な存在感を放っていたのが、このホールから外側に向かって伸びている5つの巨大な階段の登り口であった。

 おそらくこれらが各エリアへの入口で間違いないだろう。


また登り口の上部には色違いの大きな宝石がはめ込まれており、探索者たちが時折キョロキョロとそれらを見回して行先を決めていることから、その宝石たちの色がエリアの違いを表しているようであった。



 そしてレオンがさらに観察を続けようとしたところで、唐突に大きな声が響き渡った。


「はいっ、そこの男女二人組!!さっさと転移部屋から離れて下さい!後ろがつかえちゃいますよ!」


 元気よくと言った感じで大声を上げたのはギルドの職員らしき小柄な女性。彼女は明らかにレオンたちの方を見ていた。


 自分たちに周りの視線が集中するのを感じたレオンは、慌ててセフィを促して小部屋から離れた。するとレオンたちがいた小部屋の上の宝石が赤から緑に変わる。

 どうやらレオンたちが居座っていたせいで、次のグループが転移出来ない状態になっていたらしい。


 そのことに気付いたレオンは女性職員の方に近づいて行き頭を下げた。


「すみません、景色に見とれていて気付きませんでした」


 レオンがそう言うとその職員は一瞬驚いたような顔をしたものの、すぐに笑顔を浮かべた。


「ああ、新人さんでしたか。装備がそれっぽくなかったので勘違いしてしましいました。それでは仕方ありませんね、こちらこそ失礼しました」


 確かに彼女のいう通りレオンたちの装備は新人といった感じではなかった。

レオンはホルストの勧めに従って買ったベテラン探索者御用達の革鎧を身に着けていたし、セフィが身に着けているのは全て高級品だ。

 装備だけ見れば勘違いされても仕方なかった。


「いえ、こちらが気付かずに他の方に迷惑をおかけしていたので、むしろご注意して下さってありがとうございました。それでついでにお聞きしたいのですが、平原エリアに向かうにはどの階段に向かえばいいのでしょうか?」


「ああ、それでしたらあの黄緑色の宝石の階段ですね。それから帰還用の転移陣は上がったところにありますので、帰りはそちらを利用して下さいね」


 ちなみに他の宝石の色は水色、オレンジ、紫、桃色となっており、それぞれが渓谷、森、洞窟、塔エリアを表しているとのことであった。

エリアごとの配色がレオンのイメージとはかけ離れていたのだが、このあたりは別の理由があるかもしれないので気にしないことにした。


 職員に礼を言ってレオンたちは平原エリアに通じる階段へと向かった。

 階段自体は100段あるかないかといったところで思ったよりも長くなかったことにレオンはホッと胸を撫でおろした。

 100段でも長いといえば長いのだが、戦闘を生業とする探索者にとってはそれほどキツイわけではない。どこかの観光名所のような1000段以上ある階段でなかっただけマシであった。


 階段を上り切ると今度は100メートルほどの通路が続く。そしてその通路を抜けると唐突に広大な景色が二人の視界へと飛び込んできた。


「うわぁ……本当に平原ですね!」


「…………そうだね」


 そこはどこまでも続くかのような、緑あふれる大平原であった。

 所々に木々や草花が密集した林のような場所やなだらかな起伏はあるが、それ以外に目立った造形物はない。

 後ろを振り返ってみると先ほどの通路は小さな神殿の入り口のような場所となっており、その左右には小部屋が設置されていた。おそらくこの小部屋が帰還用の転移陣なのだろう。

 見渡す限り、これらが唯一の建造物といった感じであった。


 そんな草原の中に一本の道が続いており、探索者たちはその道の上を真っすぐとどこかへ向かって進んでいた。

 レオンたちもその流れに乗って、一本道を進んでいく。


 そんな中、セフィがふと不思議そうに声を上げた。


「あの、レオンさん……。なんか探索者の数が多くありませんか?」


「ああ、そうだね」


「それになんか……」


「ベテランっぽい人が多い?」


「はい」


 セフィの言う通りで実際、他のエリアに比べて平原エリアへと向かう探索者の数は多かった。しかも初心者ばかりではなく、明らかに上位ランクといった感じの探索者も多数混じっていた。


 しかしこれにはもちろん理由がある。


その理由とはこのダンジョンにある転移陣に関する問題であった。

 このダンジョンにある帰還用の転移陣というのは、各エリア入り口付近に設置されており、全てが出口まで直通となっていた。

 しかし上の階層へと通じる転移陣は全てエリアボスのいる地点にしかなく、しかも1つ上の階層にしか進めない。

 つまり上の階層へ進むには、毎回1階層から順番にエリアを踏破していくしかなかった。


そして移動するだけなら楽な方がいい。


 そのため上の階層へと向かう上位ランクの探索者たちの多くが、この平原エリアへと集中することになったのであった。


「へぇ、じゃあ上の階層に向かうほど大変になっていくんですね」


「そうだね、平原エリアを抜けるだけでも数時間はかかるそうだし3階層以降に進むなら移動だけで1日かかるそうだよ。あ、でも必ずしもこれが悪いことばかりってわけでもないんだよ」


「そうなんですか?移動が長くなると疲れるでしょうし、泊りがけだと必要な物資も多くなりますよね。あまりいいことなんてなさそうなんですけど……」


 セフィが不思議そうに言うが確かにその意見は間違っていない。

実際本人たちにとっては、ほぼデメリットしかない。


「うん、本人たちにとってはそうなんだけど俺たち新人探索者にとってはそうでもないんだ。彼らがここを通ってくれることが命綱になるからね」


「あ、なるほど!もしも魔物に負けそうになってもこの道まで逃げてくれば……」


「そうなんだ。そしてそのことは暗黙のルールにもなっているからほとんどの場合は助けてくれる。彼らにとってはそれほど手間もかからないからね」


「確かにそれは心強いですね」


 辺りを見回して見ると、チラホラと探索者の列から離れて魔物と戦っている初心者たちの姿が目立つようになってきていた。

 しかし視界の外まで離れようとする初心者の姿はあまり見かけなかった。 


「まぁけどそれはあくまでも最後の手段だからね。僕たちは彼らのお世話にならないように気をつけよう」


「そうですね。そこを当てにしちゃうとダメですよね」


「よし、それじゃあそろそろ僕たちも道を離れようか」


「はい!」


 そして列から離れること約5分、ついにレオンたちはこのダンジョンに入って初めての魔物との遭遇を果たすのであった。





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