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Black Bird  作者: sikimasu
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~1章 Blessed Gem~

ここは中雲中学校。なんの変哲もない普通の公立中学校だ。

俺の名前は宮内 純平。

中学二年生だ。友達と遊んだり、部活・勉強がたいへん!でも学校生活は順風満帆だ!とはいかない。

普通であれば、休憩時間や放課後友達と遊んだり、部活に精を出すのが一般的だろう。

しかし俺には友達や親友といった類の者はいない。



何故?

簡単だ。




この狭い教室の中で攻撃の的にされているからだ。

家が裕福とは言えず、何回も同じ服を着ていたりしたら徐々に始まった。

俺自身、こんな状況は望むとこではないんだが…ネットで調べた。集団が一人を攻撃して結束するそうだ。

集団心理ってやつかな。まぁ…なんでもいい。

早く一日が過ぎないか。毎日毎日毎日毎日これを考えている。


【キーンコーンカーンコーン】


「今日は以上です。明日は更に難しくなるので、予習をきっちりしておくように。」


「起立・礼!」


授業が終わり担当の先生が教室から出ていく。

ここからが地獄の時間の始まりだ。


「おい宮内!臭いから教室から出て行けよ!」


「やめとけって!本当のこと言うの!可愛そうだろ!」


「はははははは!」


数人が笑っている。いつもの連中だ。ほかの者は腫物を扱うように俺を避ける。

自分が被害に遭うのを避けるためだ。

ただただ無視を決め込むため、いつものように寝ているふりをする。


(休憩時間は10分…10分間耐えれば次の授業にいける。)


タイミングをうかがい次の授業を確認する。


(うっ…体育館で学年集会かよ…)


そういや先生が魔法の適正審査するっていってたな。

この世界では、昔魔鉱石と呼ばれる鉱石が発見された。

その石に触れると魔法が使えるようになるそうだ。

この国では、14歳…つまり、中学二年生から魔法を習得することができる。

魔法っていってもせいぜい火・水・風・土後は闇と光と無だったかな。が操れるそうだ。

後者の3つが適正の人は滅多にいないらしい。

なんでかはおれも知らん。と言うか授業を聞いてない。


「おい宮内~寝てるふりしてんだろぉ?きこえてるんだろ~?」


心無い、バカにしたヤジが飛んでくる。


(あいつらさえいなくなれば…俺はもっと自由なのに。)


【キーンコーンカーンコーン】


授業が始まる鐘がなった。救いの鐘というべきか。


「授業をはじめるぞー。席につけ。」


担任の先生が教室に入ってくるやいなや、生徒達に着席を促した。

いつもと変わらず礼をした後、今から行う授業についての説明を始めた。


「今日は皆お待ちかねの魔法適正審査の日だ。皆は知ってると思うが14歳を超えると魔法を習得できる。魔法を習得し、魔法を人の役に立てるよう今後勉強していってもらうためだ。すぐに体育館で2年生全員集まる。では廊下に並んでくれ。」


( 集団移動だるいなぁ)


そう思いつつも、移動しなければ先生に怒られるので、皆が移動するタイミングを見計らって立ち上がった。


「いてっ」


廊下を歩いていると後ろから丸められた紙が勢いよく飛んできた。

こちらを見てクスクスと後ろで笑っている。犯行を隠さないことに感服しながら歩いていると体育館についた。

体育館を見るとほかのクラスは全員座っており、自分たちのクラスが一番最後だった。

全員が体育館の床に座ると、学年主任の先生が教壇に立ち説明を始めた。


「みんなそろったかね。では始めます。まず、一人ずつ行ってもらいます。と、その前に…一応授業でならっていると思いますが少し説明をします。まず魔鉱石に触れると火・水・風・土・闇・光・無属性に分けられます。」


「さらに、希少ではありますが英雄等が降誕する場合もあります。その場合、自分にしか聞こえない'声'が発せられます。」


「みなさんには適切に魔法を使っていただき、今後'人'として成長していただくことを目的としています。」


「以上、何か質問ありますか?」


そうそう2年生全員、延べ120人程いるところで質問するやつなんていないだろうと思っていると眼鏡をかけた女の子が手を挙げた。


「英雄等って事は英雄以外にもなにか召喚?ってするんですか?」


等って言った事に気づくとは鋭いな。確かにあまりに希少だからと授業ではあまり教わらなかったが…


「そうですね…。英雄の他に、神・王・名将や武将などが召喚する事もあります。日本には歴史上の人物で、足利義輝が召喚した例があります。召喚された者は武器に代わり選ばれた人間と一緒に生きていくこととなります。」


「ですが、ほんに一握りの人でしか確認されていませんので、もし召喚が発現すれば、本人に追って説明することとします。」


学年主任の先生が教壇から去ると体育館に魔法陣が描かれたシートが用意された。

シートの真ん中には台に魔鉱石がはめ込まれた装置がおかれた。

自由の女神像が手に持ち、掲げているあれにそっくりだ。

生徒達は全員、自分が特殊な才能があると信じて適正審査をいまかいまかと待っている。


(一人づつということは…あそこに一人づつ上っていかなければいけないのか。)


体育館のステージに設営された魔法審査の装置。目立つのは必然的であり、自分にとっては苦痛でしかなかった。


「では一人目、相川翔太。」


学年主任がそう告げると、身長の高い優しい顔をした男の子が立ち上がった。

体育館のステージに上がると、装置の上に触れない程度に手を置いた。


「触れて。」


相川はゆっくりと装置に手を置いた。

すると、紫色の眩しい光が一瞬だけパッっと光り、そのまま消えていった。


「相川。そのまま何もせず元居た場所に座れ。よし、次…青木奈々。」


その後、出席番号順に呼ばれ紫色の光が輝いては消え輝いては消えを繰り返していた。

俺はその状況を自分の番が来るまで、静かに眺めていた。


「……次、宮内純平。」


終盤にさしかかったとき、そう宣告された。自分の番だった。

俺はおもむろに立ち上がった。後ろからは、一部から小さいが笑い声が聞こえる。

ステージに上った後、皆と同様装置に触れないように装置の上に手を置いた。


「宮内ー!お前は貧乏の神様を召喚しろよ!」と、ヤジが飛んできた。いや、悪口か。なんでもいい。


学年主任の先生は俺の横から「静かに!」と制止するのみだった。


「さっ、装置に触れて。」


先生に促され、装置に手をふれようとした時静かな空間の中に、




「臭い!」




と一言大きな声が体育館を響いた。俺は全身の体温が下がったかのように固まってしまった。

その後、体育館からはドッと笑いが起きた。まさか自分が全クラスの笑いの的になるとは思っていなかった。

俺は悔しくて、苦痛で、それでいて腹が立った。そしてすごく…泣きたかった。


(早く…早くこの場を終わらせないと!)


急いだ俺は思いっきり装置の中央にある魔鉱石を装置に押し込む形で手を伸ばした。

次の瞬間、バン!と音が鳴り響き一瞬、物凄く眩しい光が自分を包んだ。それはまるで映画で見たフラッシュバンを見た悪役の様に目が見えず、耳がキーンとなり聞こえない状態だった。


「っ…耳がぁ!」


耳を抑えたまま、高速に瞬きをし視力回復を試みた。


【若者よ…現状を打破する力が欲しいかい?】


俺は耳鳴りはまだ止んでない状態で聞こえてきた声に対し困惑し、混乱した。


「…っはぁあ?だ、誰だお前!」


声の主がわからないため、大きな声で回答した。

声が聞こえる方角もわからない。まるで脳に直接話かけられているようだ。


【私は君を助けたいと思い、君に直接話しかけているんだ。】


直接?意味がわからない。

段々と視力が戻ってきたがまだぼやけている。先生達が走り寄ってくるのがうっすらと見えた。

学年主任の先生は横で静かに眠ったかのように倒れている。


【最後です。もし要らないのであれば私は去りましょう。私の力が欲しいですか?】


俺はこの状況で冷静になんてなれず、ただただ今思っていることを振り絞って声に出した。


「…あぁなんでもいい!ここから一生去れるなら!力を貸してくれ!」


力一杯叫んだ。すると、視界が急に鮮明になり周りの生徒を見渡すと驚愕した顔でこちらを見ている。

走ってきた先生達は途中で止まってしまっている。


【さあ、こちらを向いて。】


脳に直接聞こえてくるようなこの声の方向がわからないため、キョロキョロと周りを見渡した。

目の前に飴玉位の小さくて黒い球体が浮いていた。おれはびっくりしてすこし後ずさりをした。


【口を開けて。】


俺は言われるがまま小さく口を開けた。

が…冷静になって考えた。なんで言いなりになっているんだ。…と

が、脳の処理が追いついていないため、ここは慎重に…


【では失礼。】


失礼?と考えていると黒い球体が目にもとまらぬ速さで口の中に飛び込んできた。俺の動体視力では防ぐ事ができなかった。


「ウッゲェ…ゲホッゲホッ」


急に喉に入ってきたので、喉が悲鳴をあげて嗚咽する。


【では、自己紹介…としたいが、その前にここから抜け出そうか。】


おれはまるで体の制御ができない状態に陥ったかのように声にあわせて動き始めた。


【少し…力を借りるね。】


力?…借りる?色々と質問をしたい気持ちが山々だったが、自分の現在置かれている状況把握に全力を注いだ。ここは体育館のステージ。生徒は全員が座ったまま驚愕している。


先生はステージの下でこちらを見て、「宮内君!」と叫んでいる。


「ライトウェーブ」


俺が…俺の中にいる新たな住人が俺の口をつかってそう呟いた。


すると左腕が勝手に体育館…向かって左のグラウンド側方向に向き、綺麗な紋章が浮かび上がるやいなや、大きな光の波が縦一直線状に飛び出した。

「ドーン!」という音とともに体育館間の屋根を含む壁におおきな縦の穴があいていた。

周りを見たがけが人はいなさそうだ。ただみんな固唾をのんでこちらをみている。

中には目に涙を浮かべているものもいる。


【力を誇示することができたね…よし。ここを出よう。】


足が勝手に動き出し、体育館の外へと向かって歩き始めた。

(止まれるかな?)と思い足を自分の意思で止めてみると止まった。案外止める事ができるらしい。

グラウンドから、西門に向かってゆっくりと歩き出しそのまま帰ろうとしているのか、一向にとまらない。


【もうここには来なくていいよ。勉強の仕方など幾らでもある。】


自分にとって都合のいいこの囁きを聞いて本当の味方を見つけた気がした。おれはこの'声'に従うことにした。

体育館では、先生達が生徒に逃げるように指示をしているが、生徒達は興味と好奇心でこちらをのぞき見ようとしている。




呆れる。




「宮内君!どこいくの!」


聞き覚えのある女性の声が聞こえた方向に首を傾けた。


「あぁ…竹本先生。」


この学校に居て、本当に辛いとき俺は保健室に逃げていた。その時親身に俺の相談を聞いてくれ、保健室にいることを許してくれた唯一、心を許せる先生だ。


「俺は…もぅ…」


「一部始終をみていたよ!あなたは何も悪くない!先生とお話しよう?ね?」


先生が必至に説得している様子をただ黙って俯いた。俯いていることしかできなかった。

揺らいだ。すごく。

ただやっぱりおれは竹本先生は好きだが、他すべてが嫌いだ。


「待ちなさい!君!何をしたかわかっているのかね!」


さっきまで死んだ様に寝ていた学年主任の先生が口周りに涎をつけながらこちらをみて怒鳴っていた。


「いいか!先生に暴行したとあっては!親御さんにすぐ連絡する!あと‘警察‘にも!」


「下本先生!彼は今混乱しているんです!きっと召喚して体を乗っ取られているんです!」


「知ったことか!」


すぐさま、竹本先生は俺をかばってくれた。

そうか、学年主任の名前は下本というのか。この2年知らなかった自分が恥ずかしいな。…が。


「先生はなぜ俺がいじめられていることを黙ってみていたのですか。」


一つ。興味があった。

なぜ見てみぬふりをするのか。なぜ知らないふりをするのか。

教員という立場があり、それを抑制することも可能だったはず。


「そんなことは知らない!それよりもだな!…」


【怒っているね。】


怒るさ。知らないと言われれば。

体育館で俺が前に出た時言われた言葉を聞いていなかった?

否そんなはずはない。そんなことはありえない。

ふつふつと怒りが込み上げてくる。


【彼には一度痛い目をみせるとしようか。】


勝手に手が上を向く。

もうどうにでもなれ。そんな思いで制御せずに身を任せた。


「天使達の武器天使達の武器(エンジェルスウェポン)


「ウッ」


一瞬立ちくらみしたが、どうにか片膝をついて倒れずにいることができた。

上がやけに眩しい…そう思い見てみると、


「なんだこれ…」


光の魔法陣から数百もの神々しい武器…槍や剣、弓にひかれた矢等様々な武器がでてきた。

これで攻撃するつもりらしい。だが…きっと俺の体力がこれを発動するのに耐えれないんだな。

おかげで重力が数倍にもなった気がする。すごく体が重い。


「ヒィ!」


気持ち悪い声を出した下本が尻もちをついて恐れ慄いている。


「本当に人を怒らせたらどうなるか!その身で知れ!」


俺の中の住人が怒りに任せて叫んだ。


「タッ…タッ」


「やめて!宮内君!」


竹本先生が走ってきた。自分の身を呈して下本先生を庇った。

想定外の竹本先生の動きに急いで攻撃をやめようと思ったが、その術を俺は知らない。


(くそっ…まずいぞ!止ま…れ…)


後悔した。一瞬の後悔だった。だがどうしよも出来ない。

武器が一気に体育館の方向に動き出した。

静止しようと力を振り絞った俺は、立っていられなくなりグラウンドの上に倒れた。

微かに先生が生徒を避難させている声が聞こえる。



(だめだ…意識がもう…)


「キーンコーンカーンコーン」と学校の鐘が鳴り響く中、俺は意識がとんでしまった。


意識が遠のく中、現状を惨状を悔いた。




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