生き返った赤髪
―――情けなさすぎる
「おい」
―――なんで、こんなしょうもないことで俺は死んだんだろう
「おい、いつまで寝ている」
―――死ぬ前に、見返したかった・・・
「さっさと起きろ」
―――・・・・・って
「死んだ人間に起きろっておかしいだろ!!!!!・・・・・・・あれ?」
先ほど、アジサイの攻撃を受けて死んだであろう兎狼は、ガバッと起き上がる。
そんな兎狼を冷ややかな目で見ている魔女、アジサイ。
兎狼は目の前にアジサイがいることに疑問を持ち始め、辺りを見回し、自身のアジサイに刺された部分を触る。だが、穴が空いておらず、むしろ先ほどと何ら変わり無い様子だった。変わったところであれば、周りを見渡した際に、何故か近くに紫色の狼の形をした魔獣が倒れているぐらいだった。
兎狼は夢か何かと考えた。
「あっ!アジサイちゃ、アジサイくん!これ夢!?」
兎狼はそこまでバカではないので、先ほどアジサイに刺された事を思い出し、君付けに変える。
アジサイは動揺の隠しきれない兎狼に近づき、無言で腹を蹴る。
「ゴハッ!」
「痛みはあるか?」
「い・・・痛みどころか・・・お前・・・殺す気かよ・・・」
「よし、これで現実と分かっただろう」
「てことは俺生きてる?え?なんで??」
「・・・〝生きてる"じゃない。〝生き返らせた"が正解だ」
「あー、なるほどー、そっかー、俺生き返ったのかー・・・・・・・・・・・・・は?」
アジサイはサラッと兎狼にとって衝撃的な発言をした。兎狼はガバッとアジサイの方を見た。当のアジサイは変わらない真顔の表情で小首を傾げる。兎狼は次第に顔面蒼白になり、震える手でアジサイを指差す。
「生き返らせたって・・・どうやって・・・?」
「知り合いのネクロマンサーから教わった蘇生術使った。流石にやり過ぎたと感じたからな。あっ、魂の部分は半分天に逝きそうになってた魂と、たまたま通りかかったそこの狼の魂を半分使って生き返らせた。感謝しろ」
「お前の知り合いどうなってんの!?てかそれ魔獣だろ!お前なんでそれ使った!?俺半分魔獣になったてことだろそれ!!てか感謝以前に謝れよ!俺お前に殺されたんだが!!?」
「自業自得だろ。俺の性別間違えてちゃん付して呼びまくったのは誰だよ」
「はいすみませんでした!間違えてちょっとナンパみたいなことしようとしてたの俺です!」
「まぁ、しかし、そっか・・・、魔獣か。通りで魔力っぽい何かが感じたわけだ」
「・・・お前狼と魔獣の違い知ってる?てか狼見たことある?こんな紫色じゃないぞ???」
兎狼の一言を無視してアジサイは顎に手を軽く当て、ふむふむと考える。
兎狼はアジサイが、実は自分より馬鹿なのではないかと思い、キョトンとする。
「お前、俺が馬鹿だとでも思ったか?」
「なぜバレた」
「刺すぞ」
アジサイは外套に再び魔力を込めようとする。しかし、すぐに兎狼は察して「すみませんでした」と言って土下座をする。その様子を見たアジサイは外套に魔力を込めるのを止める。
「・・・あぁ、言い忘れていたが、この術、成功させた瞬間に双方で契約関係になるってネクロマンサーから聞いたんだが」
「お前なにしてくれてんだよ!」
「まぁ、お前ならなんとかなるだろ」
「会って数分の人間をお前はどこまで理解出来るんだよ!ほとんど理解できてないだろお前!てかなんとかってなんだよ!!」
兎狼はこの現状をどうするか頭をガシガシかきながら悩む。しかし先ほどのアジサイの一言がとても気がかりで頭を悩ませる。ほとんどない脳みそを使って悩ませる。
アジサイはそれを見ながらため息をつく。そして、手を兎狼に差し出す。ちょっとそっぽを向きながら。
兎狼はその手とアジサイを交互に見る。
「何に悩んでいるか知らないが、契約を結んでいる以上、俺と離れるのは俺もどうなるか分からないから、一緒に来るか?」
兎狼は少し考え、アジサイの方に手を出し、そして
「いや、俺やることあるから村に残るわ」
真顔で手のひらをアジサイに見せて、真顔で断った。




