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魔女と狼  作者: 黒い龍酸
5/10

生き返った赤髪

―――情けなさすぎる


「おい」


―――なんで、こんなしょうもないことで俺は死んだんだろう


「おい、いつまで寝ている」


―――死ぬ前に、見返したかった・・・


「さっさと起きろ」


―――・・・・・って


「死んだ人間に起きろっておかしいだろ!!!!!・・・・・・・あれ?」


先ほど、アジサイの攻撃を受けて死んだであろう兎狼は、ガバッと起き上がる。

そんな兎狼を冷ややかな目で見ている魔女、アジサイ。

兎狼は目の前にアジサイがいることに疑問を持ち始め、辺りを見回し、自身のアジサイに刺された部分を触る。だが、穴が空いておらず、むしろ先ほどと何ら変わり無い様子だった。変わったところであれば、周りを見渡した際に、何故か近くに紫色の狼の形をした魔獣が倒れているぐらいだった。

兎狼は夢か何かと考えた。


「あっ!アジサイちゃ、アジサイくん!これ夢!?」


兎狼はそこまでバカではないので、先ほどアジサイに刺された事を思い出し、君付けに変える。

アジサイは動揺の隠しきれない兎狼に近づき、無言で腹を蹴る。


「ゴハッ!」

「痛みはあるか?」

「い・・・痛みどころか・・・お前・・・殺す気かよ・・・」

「よし、これで現実と分かっただろう」

「てことは俺生きてる?え?なんで??」

「・・・〝生きてる"じゃない。〝生き返らせた"が正解だ」

「あー、なるほどー、そっかー、俺生き返ったのかー・・・・・・・・・・・・・は?」


アジサイはサラッと兎狼にとって衝撃的な発言をした。兎狼はガバッとアジサイの方を見た。当のアジサイは変わらない真顔の表情で小首を傾げる。兎狼は次第に顔面蒼白になり、震える手でアジサイを指差す。


「生き返らせたって・・・どうやって・・・?」

「知り合いのネクロマンサーから教わった蘇生術使った。流石にやり過ぎたと感じたからな。あっ、魂の部分は半分天に逝きそうになってた魂と、たまたま通りかかったそこの狼の魂を半分使って生き返らせた。感謝しろ」

「お前の知り合いどうなってんの!?てかそれ魔獣だろ!お前なんでそれ使った!?俺半分魔獣になったてことだろそれ!!てか感謝以前に謝れよ!俺お前に殺されたんだが!!?」

「自業自得だろ。俺の性別間違えてちゃん付して呼びまくったのは誰だよ」

「はいすみませんでした!間違えてちょっとナンパみたいなことしようとしてたの俺です!」

「まぁ、しかし、そっか・・・、魔獣か。通りで魔力っぽい何かが感じたわけだ」

「・・・お前狼と魔獣の違い知ってる?てか狼見たことある?こんな紫色じゃないぞ???」


兎狼の一言を無視してアジサイは顎に手を軽く当て、ふむふむと考える。

兎狼はアジサイが、実は自分より馬鹿なのではないかと思い、キョトンとする。


「お前、俺が馬鹿だとでも思ったか?」

「なぜバレた」

「刺すぞ」


アジサイは外套に再び魔力を込めようとする。しかし、すぐに兎狼は察して「すみませんでした」と言って土下座をする。その様子を見たアジサイは外套に魔力を込めるのを止める。


「・・・あぁ、言い忘れていたが、この術、成功させた瞬間に双方で契約関係になるってネクロマンサーから聞いたんだが」

「お前なにしてくれてんだよ!」

「まぁ、お前ならなんとかなるだろ」

「会って数分の人間をお前はどこまで理解出来るんだよ!ほとんど理解できてないだろお前!てかなんとかってなんだよ!!」


兎狼はこの現状をどうするか頭をガシガシかきながら悩む。しかし先ほどのアジサイの一言がとても気がかりで頭を悩ませる。ほとんどない脳みそを使って悩ませる。

アジサイはそれを見ながらため息をつく。そして、手を兎狼に差し出す。ちょっとそっぽを向きながら。

兎狼はその手とアジサイを交互に見る。


「何に悩んでいるか知らないが、契約を結んでいる以上、俺と離れるのは俺もどうなるか分からないから、一緒に来るか?」


兎狼は少し考え、アジサイの方に手を出し、そして


「いや、俺やることあるから村に残るわ」


真顔で手のひらをアジサイに見せて、真顔で断った。

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