(母と娘)
初めての小説になります。
私には14歳になったばかりの娘がいる。名前は「華絵」内気な性格だが勉強は人より出来て運動は少し苦手みたいだが成績には支障が出ない程度だ。私が教えたピアノに夢中で小さなコンクールだが三度程入選している。
夫と私そして娘、家族三人暮らし保険会社に勤めている夫の収入のおかげでそれなりに裕福な家庭を築いている。
現在では家事をしながら空いた時間で趣味と実益を兼ねて自宅でピアノ教室をしている。平穏な毎日世間的に見ればこれが“幸せ”と呼ぶのだろう。しかし満たされる事はない。
朝、いつも通り朝食を済ませて夫を見送って洗い物を済ませた所
「お母さんちょっといいかな?」
華絵は私にたどたどしく聞いてきた
「どうしたの?」
「進路の事なんだけど..」
中学二年生の半ばを迎えて先生の方から進路についての話でもあったのだろうか?どうやら進路の相談みたいだ。
「お父さんにはもう相談したんだけど、私東京の高校に行きたくて…そこは国立だし先生も応援してくれるし学生寮もある所なんだけど駄目かな?」
「駄目に決まってるでしょう!」
私は大きな声で荒げてしまった。
「華ちゃんが今行っているとこは中高一貫型なのよ!高校まではエスカレーター式で行けるの!そのために私立の中学校に通ってるんじゃない!?」
「でも…」
一度感情が溢れると止まらないこの子が内気な性格なのは多少私の影響もあるに違いない。
「でもじゃない!なに?そんなに私から離れたいの?お母さん華ちゃんに悪いことした?まだ子供のあなたが親元を離れてひとりで暮らせるはずないでしょう!お母さんはあなたの事愛してるから厳しく言うのよ」
娘は少し黙り込んだ。2人の間に沈黙が流れた。華絵は瞳に涙を溜め堪えた様子で言葉を発した。
「私将来ピアニストになりたいです。なので東京にある音楽高校に行って音楽を学びたいです。大学もその高校に入れば付属の大学にも入りやすいみたいなのでその学校に行きたいです。」
華絵は弱々しい声ながら強い眼差しを私に向けてきた。私は驚愕のあまり言葉をだせずただ娘に目線を逸らさない事だけを意識していた。再び沈黙が流れた話が熱くなり時間を見てはいなかったがそろそろ登校時間ではないだろうか。しかし華絵は引き下がる様子はない相当な覚悟で話をしにきたのだろう。いつもなら私が感情を乱せば娘はただただ謝る事しかしなかったのにその生意気な目が覚悟を物語っている。何より娘に自我が芽生えていたのが腹立たしかった。
「お父さんが良いって言っても私は反対だからね。大体私が教えたピアノなのになんで私から離れていくわけ?華ちゃんはお母さんが嫌いなのね分かったわもう勝手にして頂戴!」
娘は黙ったまま堪えていた涙が流しながら通学のバックを抱えて玄関を飛び出した。
娘の自立それは私にとって不都合なことなのだ。