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84.崖っぷちのギリギリバトル Round.2

 魔物達の姿が突然煙の様に消えて行く。

 幾ら倒しても倒しても終わりが見えなかった魔物達との戦いに、突然その終わりが訪れた騎士団員達は戸惑いの色を隠せない。

「はっ……はぁ……は、な、何だぁ……っ!?」

 ロルフは疲労困憊で息をぜえぜえと切らせながらも、唐突に魔物が消えた事に辺りをキョロキョロと見回して状況を少しずつ把握する。

「な、何があったの? 何でいきなり魔物が居なくなっちゃったの!?」

 息を整えたクラリッサも斧を地面に立てて杖代わりにしながら、ガクガク震える足で何とか踏ん張りつつロルフと同じ気持ちになる。

「何だ、この状況は……」

 ロルフとクラリッサ程に疲労してはいないが、それでもその顔に疲労の色を浮かべるレメディオスも額に浮かぶ玉の汗を左手で拭いながら呆然とした表情で呟く。


 他の騎士団員達も未だに状況が掴み切れていない中、レメディオスがハッとした顔つきになった。

「そうだ、貯蔵庫!!」

 この洞窟の地下にある貯蔵庫が燃えているとの情報が、何とかその貯蔵庫の方に進む事が出来た騎士団員達から伝わって来ていた。

 それに至る所で爆発が起こったのも魔物と戦いながら把握していたレメディオスだったが、魔物が無限に湧き出て来る為にその現場に向かいたくても向かえなかったのだ。

 だが、魔物が消えた今の状況であれば自分達を遮るものは何も無くなった。

 ならば次にやる事は勿論貯蔵庫の確認、それから爆発場所の特定と確認である。

「魔物はどうやら居なくなった様だ! これから地下の貯蔵庫に向かって状況確認をする! それから爆発が到る所で起こっていた様だからそちらの確認にも向かう!」


 息を吸い込んで広場に響き渡る大声でレメディオスがそう命じ、地下に向かう50名程のグループと残りの人員で爆発場所の確認に向かうグループで2つに分かれて捜索活動をスタートする。

 もしかしたらまだ魔物達が居るかも知れないので油断はするな、とも伝えておく。

 クラリッサとロルフは爆発場所の特定に向かい、レメディオスのグループは地下に向かったのだが、その途中でクラリッサがある事に気がついた。

「あれ……そう言えば、賢吾と美智子は?」

「え? クラリッサが見張ってたんじゃなかったのか?」

「そうなんだけど、あっちで待っててって安全な場所から動かない様に言いつけておいたのよ」

 その瞬間、ロルフの顔色が変わる。

「おいおい何だよそれぇ、無責任過ぎだろ!!」

「だってしょうがないでしょ! この状況じゃ私も加勢しなきゃ人手が足りなかったんだから!!」

 お互いに言い分はあるものの、ここでヒートアップしても仕方が無いと思ったのかロルフが急にクールダウンする。

「ああくそっ、とりあえず今は言い合いしてる場合じゃねえ! クラリッサはこいつ等の一部を連れてその2人を捜しに行け。爆発場所の特定の方は俺達に任せろ!!」

「分かったわ!!」



 そうして更に2つのグループに分かれて騎士団員達が行動を開始した頃、こちらでもはぁはぁと息を切らせながら美智子がたった今殴り倒したフードの男を見下ろして呟く。

「調子に……乗るんじゃないわよ!!」

 賢吾から聞いていた、あの島で見かけたと言う赤い光線の話。

 その赤い光線が夜の闇に紛れて、ゴウゴウと燃え盛る巨大な魔物の方に向かって動きながら伸びている。

 それを見つけたのは、あの天井が崩れた後に別のルートから進んでこの場所に出て来た美智子だった。

 もう1箇所、今の賢吾が戦っている場所と同じ位のスペースが造られている区画に出た美智子は、同じく滝があるのを崖っぷちから確認していた。

(うわあ……落ちたらこれは確実に死ぬわね)

 出て来た出口から見て左側には林が広がっており、後は全て崖になっている。


 崖から下を覗き、それでここには何も無さそうと判断した美智子はとりあえず林の方に向かおうとした。

 だがその瞬間、あの大きな魔物が出て来るのを彼女も見てしまったのだ。

「えっ……な、何あれっ!?」

 林の木々の隙間から見える、赤い光が1つの大きなシルエットになってそれが魔物の形になるその過程を。

 只事では無いと思った美智子はたいまつと鉄パイプを構えながら林に向かい、そこで木々の間に隠れつつあの魔物を杖を動かして操るフードの男の姿を見つけ、気がついたら右手に持っているたいまつを男の頭に振り下ろしていたのだ。

 これによってたいまつがポッキリと折れてしまい使い物にならなくなってしまったので、美智子は男を一旦放っておき、川に向かって折れたたいまつを火傷しない様に気をつけながら崖の下に流れる川に向かって投げ捨てる。

 万が一たいまつをそのまま放っておいて、林の木々に燃え移りでもしたらとんでもない事になるからだ。

 たいまつが月明かりに照らされる川に向かって落ちて行くのを見届けた美智子が振り向き、再度フードの男の元へと向かおうと足を踏み出した……その瞬間だった。

「ふん!」

「ぐぇっ!?」

 殴り倒されはしたものの、美智子がたいまつを捨てに行っている間に起き上がったフードの男が、美智子の死角から一気に彼女を羽交い絞めにして短剣をその首筋に突きつけた!

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