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83.崖っぷちのギリギリバトル Round.1

「行けっ、アディラード!!」

 男の掛け声と共にそのまま否応無しにバトルに突入する賢吾。

 この魔物の名前はアディラードと言うらしいが、それよりも大事な事はこの魔物をどうにかしてフードの男を逃がさない事である。

 しかしアディラードを相手にするのはかなり劣勢のバトルと言うしか無い。

 動きとしてはかなりスローモーション。

 攻撃方法も大振りのハンマーパンチを叩きつけて来たり、ローキックやサッカーボールキックの様に打点の低いキックをこれまたスローモーションで繰り出すだけなので避けるのは楽勝だ。

 2足歩行の、確かにロボットアニメに出て来そうなメカメカしいデザイン。

 そう言った作品のジャンルに疎い賢吾にはどんなロボットも同じ様に見えるので、そうした漠然としたイメージしか出来ないのだが脅威であるのは間違い無い。

 このファンタジーな世界観には何だか異質なデザインだが、地球とは違う世界なので何があったって不思議では無いのだ。

 何せ、魔術で人間が空中に浮かび上がれるのだから。


 自分の10倍程の身長差があるこの大きな相手には、リーチ云々の話よりもまずはスローモーションでも1発食らえば即座に命にかかわるその攻撃を確実に避けるのが大事だ。

(この大きなロボットもどきの魔物、しかも炎を纏っているとなれば真っ向勝負は無理だし、これだけ身長や体重に差があるのなら生身の人間で攻撃をしても効果は無い!!)

 炎を纏っているだけあって熱気も伝わって……来ない?

(あれ? この炎……何で熱くないんだ?)

 賢吾は炎に包まれているこの大型の魔物アディラードに違和感を覚える。

 そう言えばさっきのたいまつの炎に関しても熱さは感じられなかった。

 確かあれは魔術でつけて貰った炎だった。それを考えると、もしかしたらこの魔物も魔術で動いているのかも知れない。

 いや、登場の仕方からきっとそうに違いない。


 しかし、炎に対して違和感を覚えた所でそうそう簡単に形勢逆転出来るとは思えない。

 自分が相手にするのはこのアディラードと言う魔物では無く、先程それを生み出した張本人のフードの男。

 だからこのアディラードの陰に隠れているであろう彼の姿を見つけるべく、まずは何とかしてアディラードの背後に回らなければならない。

(くっ……でも、ここの広さはそんなに余裕が無いな……)

 攻撃自体はスローモーションなので精神的に余裕が出来、色々考える事は出来る。

 だが、問題はこのバトルフィールドだ。

 この広場は切り立った崖の上に作られており、近くには水がゴウゴウと流れる音がハッキリと聞こえる事から滝があるらしい。

 その滝の音が聞こえる広場にアディラードが普通に立ってみるだけで、残りのスペースは周囲の僅かしか無い。

 賢吾の身近なもので例えるならば、ピザの耳の部分程しか動き回れるスペースが無いので攻撃を避けるスペースには余裕が無い。

 本当に、アディラードの攻撃がスローモーションだと言うのが救いだった。


 それにアディラードはそれだけの体躯を持っているのだから攻撃力も人間のレベルを軽く超えている。

 足元にも及ばないレベルで、ハンマーパンチ1発で地面がかなり陥没してしまう。

 賢吾を目掛けたキックでは地面が削り取られる為、攻撃を避けた後の行動にはかなり神経を使う。

 バトルフィールドの形状が変わってしまうし、崖っぷちの場所でそんな威力のパンチやキックを繰り出されたらせっかく上手く避けたとしてもその勢いで落下してしまう可能性も高い。

 それに地割れが起きて地面がまるでクリスピーのチョコの如く欠片となって落ちてしまう事もありえる。

(くそっ、そんなのは御免だ!)

 そう考えて身震いをする賢吾はあのフードの男を何とか探し出そうとするも、アディラードの大きな身体が邪魔をしてなかなか見つける事が出来ない。

 月明かりに照らされている屋外のフィールドとは言え、時間帯が夜なので昼間と比べれば圧倒的に視界も悪い為に見つけ難さに拍車が掛かっている。

 それでもここで諦める事は「死」に繋がるからこそ、賢吾は自分の小柄な体格を逆に利用して動くしか無いのだ。


 そのアディラードを杖で操っているフードの男は、そろそろ良いかも知れないと撤退の準備を考えていた。

(良し、後はこの竜の笛でワイバーンを呼び戻さないと……)

 騎士団の貯蔵庫も爆破したし、後はさっさとここから撤退しなければ自分の身が危険だ。

 何時までもアディラードを動かす訳には行かない。

 このアディラードは杖にある大量の魔力を消費する為、同じ様に魔力で出現させていたあの洞窟内部の大量の魔物達を動かせなくなってしまう。

 このアディラードを呼び出すか、それとも大量の小型から中型の魔物を呼び出すかしか出来ない以上、今頃は魔物が突然消えてしまって騎士団員達は呆然としているだろう。

 でも、貯蔵庫は時間差で爆発する様にセットしている為に消火活動が必要になって来る筈なのでまだ少しだけ時間の余裕がある筈だ。

 そう思っていたフードの男は、その瞬間に後ろから全力で頭を殴り倒されるのだった。

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