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81.チェイス

「賢ちゃん、本当に見かけたの!?」

「ああ、間違い無い!!」

 勝手な行動だとは分かっていても、あの姿を見てしまったからには動かない訳には行かなかった。

 騎士団員達が魔物の大群と戦い始めたので、賢吾と美智子は戦いには加勢せずに安全な場所で戦いが終わるのを待っていた。

 自分達の後ろでフォローをする為に配置されていたクラリッサも、この魔物の多さに戦わざるを得ない状況になった。

 当然、賢吾と美智子には気が回らなくなってしまうので魔物の居ない安全な場所で動かない様にとクラリッサは指示を出しておいたのだが、そうも行かない光景を賢吾が目撃してしまったのだ。


 魔物の出て来ない分かれ道の曲がり角に隠れて、ひたすら騎士団員の戦いが終わるのを待つ賢吾と美智子。

 しかし、自分達の居る分かれ道の奥からも魔物が襲撃して来る可能性があるので、騎士団の戦いよりもその分かれ道の奥の方に注意を払っていた。

 2人居る事もあって、賢吾は分かれ道の奥を監視し美智子は騎士団の戦いを見て、お互いに敵が来たらすぐに動ける様に役割分担をしていたのもあって集中して見張りが出来ていたのだが、美智子が不安そうな声を上げたのは騎士団の戦いが始まっておよそ10分経ってからである。

「かなり長引いているみたいね」

「まだ終わらないのか?」

「うん、結構苦戦しているみたいよ。ここから見える限りだと、魔物が群れでやって来てるからなかなか対処が難しいみたい」

 かなりの大所帯でやって来たにも拘わらずまだ戦闘が終わらないと言うのは、それだけ敵の数が多いのかあるいは手強い敵なのか、はたまたそのどちらにも当てはまる敵を相手にしているのか。

 今の2人が居る場所からは詳しい状況が見えないので何とも言えないし、近づいて戦況を確認する訳にもいかない。


 一種のもどかしさを感じつつも賢吾が分かれ道の奥に視線を戻すと、その騎士団が苦戦している状況とは違う光景がチラリと見えた。

「……ん!?」

「え、何?」

「あいつだ!!」

 身体を弾かせて勢い良くスタートダッシュを決めた賢吾が、迷い無く通路の奥に駆け出して行く。

「ちょ、ちょっとどうしたのよ賢ちゃん!?」

 少し遅れる形で美智子も賢吾の後に続き、彼の進む方向に転ばない様に気をつけながら着いて行く。

 何故急に駆け出したのかを走りながら問い掛ける美智子に対し、賢吾も同じく走りながら答える。

「あいつだよ……あの時のフードの男が通路を横切るのを見かけたんだ!!」

 間違い無いと断言する賢吾。

 あの男がここに居ると言う事は、やはりあの島の時と同じく大きな魔物との関係があるのでは無いかと思えて仕方が無いのだ。


 通路を曲がってみれば、今度は突き当たりの通路を右に曲がる黄緑のコートの背中が見えた。

 だがそれと同時に、2人の鼻に異様な臭いが引っ掛かる。

「ね、ねえ、何か臭くない!?」

「ああ、何か焦げ臭いな!?」

 通路中に立ち込め始めた、何かが焼け焦げているこの臭いは何処かで何かが燃えていると言う証拠だ。

 それが何処なのかまでは分からないし、意図的に起こされたものなのか自然発生したのかも判断がつかない以上はとりあえずあのフードの男を追いかけて行くしか無い。

 ちなみにたいまつは自分達の手に持ったままだし、それで自分達の服を焼くと言う間抜けな事はしていないのでそれは有り得ない。

 もしかしたら通路を曲がった瞬間に炎に身体を焼かれる事になるかも知れないので、曲がり角を曲がる時はワンテンポ進むスピードを遅らせて進んで行く。


 その中で、後ろからついて行く美智子はある事に気がついた。

「ねぇ、もしかして……このまま行くとどんどん上の方に上ってないかしら?」

「ん!?」

「だってほら、勾配がついているんだもん!」

 言われてみれば確かに……と自分の足元に視線を落として気がつく賢吾。

 前だけしか見ていなかったので、足元の微妙な変化に気がつかずにこうして進んで来たらしい。

「上の方に何かがあるって事なのか?」

「それは分からないけど……まだ前の方に居るんだから、見失わない様にね!」

「ああ、分かってるよ。それじゃここから会話は無しだ!!」


 口を動かすより足を動かし、フードの男を見失わない様に洞窟内を上る賢吾と美智子。

 上の方に続く通路がこうしてあると言う事は、この上にも貯蔵庫があると言う事になるのか、はたまた別の理由で造られたと言う事なのか。

 いずれにせよ追いかけられる所まで追いかけてみれば分かる事だと思い、引き続き賢吾と美智子は追跡を続けて行く……のだが!

「うおっ!?」

「きゃあ!?」

 T字路の曲がり角を曲がろうとして、目の前を矢が2本掠めて岩壁の隙間に突き刺さる。

 映画とかで良くある古代遺跡の様な罠の類では無いらしい。

 と言う事はどうやら追跡に気が付かれたみたいで、更なる攻撃がそのT字路の曲がり角を曲がる2人を襲う。

「えっ!?」

「賢ちゃん、危ない!!」

 後ろから美智子に思いっ切り押された賢吾は前に突き倒され、その上から天井が崩れて来た!!

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