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80.洞窟迷路

 レメディオスの言葉通り、確かに洞窟の中はかなり入り組んだ構造になっている。

 至る所にドアが造られ、その奥には様々な材料が貯蔵されているのだ。

 材料ごとに保存場所の区分けはされているらしく、道に迷わない様に立て看板が設置されているのも相まって何処に何があるかと言うのは分かりやすくなっている。

 天井は南の坑道よりは低いものの、ロルフやレメディオスの様な身長が高い人間がまだ余裕がある程なので大体2m50cm位だろうと賢吾は推測した。

 道幅も材料を出し入れする関係で広めに造られている様で、人間が4人並んで歩いてもこちらもまだ余裕がある。

 しかしながら、ここにやって来た騎士団員達の数が多すぎて人口密度が高くなっている為に、スペースが思った以上に無い様に感じてしまうのは気のせいでは無いだろう。

 それは今、騎士団員達が魔物とバトルを繰り広げていると余計に感じてしまうのだ。


 最初にこの洞窟に踏み込んだ時、騎士団員達がガチャガチャと鎧を鳴らして歩く音以外はやけに静かなものだと賢吾は感じた。

 余りにも静か過ぎて逆に不安になってしまうが、先頭を歩くレメディオスとロルフも、それから自分達のバックアップとして後ろを歩いているクラリッサも緊張の色がその顔に明らかに滲み出ていたので、賢吾と美智子はその緊張感に負けて口を開く事が出来なかった。

 だが、何か嫌な予感がするのは間違い無かったのだろう。

 洞窟の中に造られている、多数の通路に向かって分かれ道が伸びている広場。

 持って来た材料を運び出す量や、逆にしまい込む場所の打ち合わせをここでたまにするらしい。

 一種の休憩所とも言えるかも知れないこの場所で、潜入していた騎士団員達は敵の待ち伏せに遭ってしまったのである。


 広場まで来た時に、ロルフが直感で嫌な気配に気がついた。

「……おい、レメディオス」

「ああ」

 レメディオスもそれは分かっていた様で、ロルフの傍らで抜き身のロングソードをゆっくりと構える。

 それと同時にロルフが先程の魔術師達を再び呼び寄せ、探査魔術をもう1度使って広場の全域を探って貰う。

 すると段々魔術師達の顔が強張って行く。

「……団長、物凄い数です」

「分かった。魔術防壁は破れるか?」

「やってみましょう」

 魔術師の中のリーダー格がそう言い、他の魔術師達と共に広場に向かって何やらブツブツと呪文を唱え始める。


 その結果、広場の至る所に敵の姿が浮かび上がって来た。

 天井に張り付いて、頭上から奇襲を掛けるタイプの魔物も存在している事から明らかに待ち伏せである。

「おい、御前等、敵のお出ましだ!!」

 ロルフが背後の騎士団員達に声を張り上げ、副騎士団長の自分が自ら広場に向かって突撃して行く。

 相変わらずの知略も何も無しの性格に溜め息を吐きつつも、この場所では小細工は通用し無いとレメディオスも駆け出す。

 魔術師達がロルフの進撃をサポートするべく、呪文を唱えて広範囲の攻撃魔術を繰り出す。

 しかし、この洞窟内では炎系統の魔術は使えない。

 材料が燃えてしまう危険性があるので、攻撃魔術は水か土か風系統の魔術に限られる。

 レメディオスから炎系統の魔術は使うなと言われているのもあって、魔術師達は今回は炎系統の魔術は封印だ。

 それが逆に功を奏したらしい。

 水系統の魔術が良く効く魔物が多い事に魔術師達が気がついたのだ。

 恐らくはこの洞窟内の材料を燃やし尽くす為に、炎系統の魔物を用意しているのだろうと察しがつく。

 魔術師達が水系統の魔術メインで魔物をけん制し、そこを騎士団員達が突いて一気に畳み掛ける戦法が洞窟内の到る所で繰り広げられて行く。

 この広場だけでは無く、他の通路からもどんどん魔物が湧いて来るので騎士団は人数の多さを活かして迎撃する。


 しかし、通路がそれなりに広いとは言ってもやはり洞窟と言う場所の構造上、大勢で魔物に対抗するのはスペース的に狭く感じる。

 それに魔物が引っ切り無しに出て来る為、幾ら鍛えている騎士団員でもその体力には限界がある。

 更に魔術だって体内の魔力量に応じて使える回数の限度が決まっているので、魔術師達も無限に魔術を使えない。

 魔力の回復をするのは急速が必要なのだ。

「もう、一体何匹倒せば良いのよ!?」

「1匹ずつは大した事は無えが……これだけ数が多いとキリが無え!!」

 クラリッサもロルフも、幾ら倒してもカタがつかない魔物の多さに段々と疲労の色が見えて来る。

(くっ……何処かにこの魔物を操っている大元の存在が居る筈だ。そいつを探して倒さなければ終わらない!!)

 レメディオスは漠然とした考えではあるものの、今までの魔物討伐の経験からそんな予想を立ててみる。

 迷路みたいに入り組んでいるこの貯蔵庫の洞窟だからこそ、身を隠せる様な場所は少し考えただけでも幾らでも思いつく。

 これだけの魔物が居て、洞窟の天井の高さ故に浮遊魔術で回避して進む事も出来ず、回避して先に進んだとしてもまた魔物に行く手を塞がれる状態になりつつある。

 騎士団員が無限に湧き出て来るその魔物の集団に悪戦苦闘し始めたので、賢吾と美智子のサポートに関しては全く気が回っていなかった。

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