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7.ファーストコンタクト(後編)

 ガサガサ、ガサガサと草を掻き分ける音が聞こえて来たので賢吾と女がそちらを見てみる。

 その視線の先では黒の長髪で長身の男、それから青い短髪のこれまた長身の男が着ている服を草や葉っぱまみれにしながら現れたのだ。

 しかし、その男達の服装にも賢吾は違和感を覚えた。

(何だ、この服装……仮装イベント?)

 男達の服装は上下ともに大部分が黒である。

 そして気になるのは、青髪の男がその右手に持っている長い……槍? みたいな棒と黒髪の男が腰に帯びている……。


(剣? ……だよな)

 刀に見えなくも無いが、それはきっと黒光りをしている柄と鞘だからだろうと解釈する賢吾は、この2人の服装から1つの可能性を見出した。

(あっ……そうか、これは何かのイベントでそこに俺は紛れ込んでしまった訳だな)

 だとしたらあのカラスに襲われたのも、あの場所にライオンが居た事も、それから洞窟の中で目覚めた事も何だか納得が行く。


 そんな賢吾をよそに、2人の男は女はその男達の姿を視界に捉えると、安心した様子で口を開いた。

「レメディー! ロルフ! 無事だったのね!」

「クラリッサ、心配したんだぞ!!」

 男の内の片方、青髪の男がクラリッサと女の事を呼ぶ。

「全く、世話を掛けさせる女だ……」

 黒髪の男は安堵の息を吐いてクラリッサの無事を確認している様だが、賢吾の姿に気がつくと素早く身構えてその腰に帯びている剣を抜き放った。

「貴様、何者だ?」

 落ち着いてはいるものの迫力と威厳のある声色で、黒髪の男は賢吾に対してそう問いかける。

 剣を向けられている方の賢吾は、男の態度の豹変に反射的に腰が引けてしまった。

 それでも、これもイベントの一種なのかと思い自分から歩み寄ってみる事にした。

「お、おいちょっと待ってくれ。これってどう言う主旨のイベントなんだ?」


 そう言いつつ剣を向ける男の方に向かう賢吾だが、その前に今度は青髪の男が動いた。

 寸分の狂い無く、その手に持っている長い武器ーやはり槍らしいーを賢吾の目の前に突き出して突きつける。

「質問に質問で返すのは感心しねえな。先に質問しているのはこっちなんだけどよ?」

「は、はぁ!?」

 男達の表情はふざけている様にも、それからバカにしている様にも賢吾には見えない。

 ただのドッキリやイベントでここまでされる必要があるのだろうか?

 この時点で賢吾は、この状況は何かがおかしいと薄々思い始めている。

 そんな賢吾が何も答えないのを見て、今度は黒髪の男が剣を構えたまま更に接近して来た。

「おい、質問に答えろ。王国騎士団相手にシラを切り通そうとしてもそうは行かんぞ」

「王国……騎士団……」


 この男達は一体何を言っているのだろうか?

 とにかく自分が口を開かない事にはどうにもならないので、まずは男達に対して今までの経緯を話し始める。

「お、俺はあの滝の上にある洞窟の中で倒れてたんだ。そこで目が覚めて滝のそばに出たら、この女の人が倒れてるのを見つけてここに来て……それでその人が持ってた水筒で水を飲ませてから話し始めた所で、そこの草を掻き分けてあんた達が現れたんだよ」

 そして賢吾は色々と疑問に思っている事がさっきからあるので、今の自分が思っている事をありったけ伝える。

「大体、さっきから訳の分からない事ばっかり言われてこっちも混乱してるんだよ。王国騎士団だとか何とか王国って聞いた事も無いんだ。それにドッキリにしちゃタチが悪過ぎるよ、こんな物騒な物向けられて……ドッキリなら作り物なんだろうけど……」


 そう言いながら賢吾は突き出されている槍の先端を手のひら全体で触ってみた……次の瞬間!!

 バチィィィッ!!

「うおっ!?」

「ぐああっ!?」

「なっ……」

「きゃっ!?」

 4人それぞれリアクションは違えども、「その」現象に驚いたのは同じだった。

 その現象で槍が賢吾の前から離れ、持ち主の青髪の男はたたらを踏んで数歩後ろに下がった。

「……き、貴様!一体何をした!?」

 4人の中でいち早く我に返った黒髪の男が、今まで槍を突きつけていた青髪の男の代わりに腰に下げている剣を賢吾の喉元に突きつけた。


 その威圧感に賢吾も我に返ったが、今の状況がまるでのみ込めずにパニック状態になってしまっていた。

「い、いや……俺はただその槍に触っただけだ! なのにいきなりフラッシュライトみたいな光が出て、それから物凄い音がして肩から先の腕全体が痺れて……ほ、ほんとだ! 俺は何もしてねーよ!!」

 ブンブンと顔の前で右手を振って否定に否定を重ねて弁解する賢吾だが、男達の疑いの目は晴れ様とはしない。

 そんな3人を見ていて我に返ったクラリッサが、ひとまずここは……とばかりにこんな提案を3人にする。

「ね、ねぇ。色々と何かその人には事情があるみたいだし、私を助けてくれた人にそんな武器を無闇に向けるものでも無いと思うわ。とりあえずここはみんなの所に行って、しっかりと事情を聞いてみましょうよ」

「……そうだな」

 黒髪の男は剣を下ろし、賢吾は一時的に緊張状態から解放される事になった。

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