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77.目撃情報

 肝心のその目撃情報だが、やはりあれだけの大きな生物であるせいかこの魔術都市ですぐに色々と集まった。

 図体としては身長およそ20メートル程、横はそこまで広く無いと言うので、例えるならば良くある変形メカのロボット位だろうかと賢吾と美智子はレメディオスから話を聞きながら考える。

 美智子は今までその生物を見た事が無く、賢吾もあの島で1度見た限りなのでおぼろげながらのイメージしか湧かないのだが、それだけ大きくてどんな攻撃も通さないとなると対抗手段が見えて来ない。

 素手で対抗しようなんて自殺行為としか考えられないのだから、賢吾も美智子も最初から諦めモードの状況だ。

「やっぱりあのフードの奴をどうにかするしか無いな」

 そう結論付けた賢吾は、次の目撃情報が入ったらすぐにそっちの方に出発するとレメディオスから連絡を受けているので、それまでは引き続き美智子と自分のトレーニングに励む。

 少しずつステップアップして来た賢吾と美智子は、攻めるばかりでは無く「避ける」「守る」「逃げる」と言った防御面でのトレーニングをこの遠征中は中心に行なう事にした。

 もし、その大きな魔物が自分達の目の前に立ち塞がったとすれば到底人間1人の力では立ち向かえないので、生き延びる可能性を少しでも生み出せる様に。


「俺達があの図体のでかい奴とやりあった時は、かなりスピードが遅かったのを覚えてる。だから単純に逃げるだけなら問題無えと思うけど、問題はそのワイバーンの野郎だな。もしそいつがそのでかい奴を操っているって言うんなら、俺達に見せていない操り方って言うのがあるかも知れないぜ」

 情報収集を一休みしているロルフが夕暮れ時の空を見上げて言う。

 だが、それを聞いていた美智子がふと別の事に気がついた。

「あれっ……でもちょっと待って。そんなに大きな怪物だったら、何時も一緒に居られる筈が無いわよ」

「え?」

 賢吾が自分の方を向いたのを見て、更に美智子は続ける。

「だって、その魔物って炎に包まれているのよね? それにそんなに大きな魔物だったとしたら目立ってしょうがないじゃない。事実、この街でも目撃情報が集まっているんでしょ? 騎士団の駐屯地を潰して回っているんだったらそれだけでかなり目立つ筈だし、指名手配だってされているわよね。後……確か最初に出会ったのは海を渡った場所の島だったんでしょ?」

「ああ」

「そんな大きな怪物、一体どうやって運んだのかしら? そもそも騎士団の人達も戦っていたんだったら、その魔物が何処に行ったかって覚えてる?」


 美智子の疑問に、この場……騎士団員達とは別に部屋を取っている宿屋の裏に居る唯一の騎士団員のロルフがその時の様子を思い返す。

「あの時は俺達、とても対処がし切れなくて結局逃げちまったんだ。森の近くで戦っていたんだけど、あいつの身体から吹き出る炎が森の木にどんどん燃え移っちまってよぉ。俺達じゃもう手の付け様が無いって事になって、騎士団に被害が出る前にさっさと撤退する事にしたんだ」

「それじゃ、その後の行き先は分からないって事?」

「ああ。炎がもう大きくなって、悔しいが島を見捨てるしか無かった。俺達が船を脱出する時は、もう既に俺達の野営地があった所は炎に包まれていた位だったからな」

「うーん、ますます訳が分からないな」


 話が色々とややこしくなって来たので、賢吾が状況を整理して更に質問する。

「あの大きな炎の魔物は今、騎士団の駐屯地を襲っている。だけどまだその足取りは掴めていない。その掴めない足取りを追って俺達はここに来た。じゃあ、まだ疑問があるんだが聞いても良いか?」

「何だ?」

「大きく分けて2つ。1つはその騎士団の駐屯地の騎士団員の目撃情報を集めているか? それともう1つは、俺達はそのでかい奴に島で出会った訳だけど……あの島には騎士団関係の施設とか無いのか? 騎士団に関係する場所を色々狙っているんだったらそう言うのがあの島にあっても変じゃないと思うけどな」

 だが、その質問を受けたロルフは言葉を濁らせる。

「ああ……いや……うーん、あるっちゃあるけど……」

「やっぱりあるのか?」


 更に詰め寄って来る賢吾を見て、ロルフは若干引き気味になりながらも口を開く。

「とっ……とりあえず1つ目の質問に答えるぜ。駐屯地の被害はかなりでかかった様でな、まだ大した情報が得られてないんだよ。色々と派手にやられちまったらしくて。結局生き残った駐屯地の奴等からもそのデカブツの目撃情報はハッキリしてねえ。だから俺達はここを拠点にして、近隣の村や町にも色々と聞き込み調査をしてるんだ。今の俺の口から言えるのはこれ位だ。それじゃ、俺はそろそろ情報収集の続きに戻るから。じゃな!!」

「あ、お、おい……」

 2番目の質問に答えていないロルフは、明らかに慌てた様子で賢吾と美智子を振り切ってそのまま立ち去ってしまった。

 その後ろ姿を見て、賢吾と美智子はお互いに問い掛ける。

「どう思う?」

「どう見てもあの様子は怪しいわね。賢ちゃんは?」

「同感だ。何か大事な事を隠している気がする」

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