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49.罠

 ロルフの部隊、それからクラリッサとイルダーの部隊はそれぞれ襲い掛かって来る敵を倒しながら少しずつ最新部に向かって進み続ける。

 最初こそ向かって来る敵の量が多くて苦戦していたが、段々とこの狭い坑道の中での戦い方が分かって来た。

 自分達が複数人、相手も人間や獣人や魔物の混成部隊で複数で入り乱れてのバトルになりやすい。

 その上こうした坑道内はスペースに限りがある為、敵と味方を間違えて攻撃してしまいそうになる。

 だからこそなるべくバラバラに分散して戦う事で、同士討ちの可能性を出来るだけ低くするのだ。

 魔物の討伐を主な任務とする第3騎士団員達は、実際に森林地帯や渓谷の中と言う限られた場所での訓練や任務の経験も無い訳では無い。

 しかしこうした洞窟の中での戦いは余り経験した事が無い上に、なかなか足元も悪いので最初は苦戦していた。

 それが場数をこなして行く内に、それぞれが自分で考えて分散して戦う事を覚えている。

 賢吾が武器を持っている相手との戦い方を分かって来ている様に、騎士団員達もまた少しずつ進化エボリューションしているのだ。


「ロルフ!」

「クラリッサ! 無事だったか!」

「ええ、何とかね」

「ちょっと、僕も居るんだけど」

 進化エボリューションしながら最深部へと向かった2つのグループは、最終的に武装集団と魔物が集結していたあの広場を2階部分から見下ろす形で出口に辿り着いた。

 2つの出入口が隣同士で開けられており、その出入り口の前の高台になっている通路で合流出来たまでは良かったのだが、お互いの無事を喜ぶ暇は無いらしい。

「なぁ、凄い足音みたいなのが聞こえないか?」

「うん……聞こえるわね」

「この広場全体から聞こえる、それも1つ2つじゃなくて沢山の足音……何か怪しい気がするね」


 そもそもこの広場はかなりのスペースがあるので、それこそ大きな魔物でも歩いていない限りはこの2階部分まで足音は聞こえない筈。

 それを不審に思ったイルダーが広場に向かって右手をかざし、目を閉じてブツブツと口を動かす。

 すると、広場の中を歩き回っている大小様々な魔物、それから人間と思われる影が続々と浮かび上がり、やがて実体化する。

「えっ、な、何だあの敵の数は!?」

「ちょっと……あれは流石にありえないでしょ! 多過ぎよ!!」

「魔術だね……騎士団員なら魔術の勉強もするから聞いた事あるでしょ? 姿を消す事の出来る補助魔術は」

 冷静にこの状況を解説するイルダーに、今も驚愕の表情を浮かべるロルフが頷く。

「ああ。だがこれだけの範囲を覆う事が出来る補助魔術なんてそうそう滅多に見られるもんじゃ無いぜ!!」


 迂闊に踏み込んで足音しか聞こえない状態でやられていたら……と思うと思わず身震いしてしまうロルフとクラリッサ。

 それを解除してくれたイルダーのおかげでここでじっくりと広場の様子を観察する事が出来ているが、観察途中でクラリッサが違和感を覚えたポイントがあった。

「ねぇ、あそこに妙な人影が無いかしら?」

「え?」

 広場の一角の壁際に椅子に座った人間のシルエットが見える。

 こんな魔物や武装集団が闊歩している中でその姿勢は明らかにおかしいので、ロルフが懐から望遠鏡を取り出してその人影をもう少し詳しくチェックする。


 だが、それは驚くべきものだった。

「お、おい、女だ!」

「女?」

「ああ。縄で椅子に縛り付けられてぐったりしてやがる!!」

「ええっ!?」

 半ば奪い取る様にしてロルフから望遠鏡を奪い取り、クラリッサもその人影を確認。

「ほ、本当だわ! 黒い髪の女の人が縛られているわ!」

「ちょ、ちょっと、僕にも見せてよ!」

 続いてイルダーが望遠鏡を覗き込むと、クラリッサと同じ様な反応が返って来る。

「な、何であの人こんな場所であんな風に縛られてんのさ!?」

「知るか、俺に聞くな!!」

「じゃああれって誰なの!?」

「分からないわよ! でも縛られているって事は普通の状態じゃないわよね?」


 もしかしたら一般人かも知れないので、もしそうなら騎士団員としては当然助けに行かなければ。

 その思いで2階部分から繋がる坂道の通路を下りる。

 しかしその騎士団員達の着ている鎧のガチャガチャと言う金属音や足音、それから気配等は当然広場の人間達や魔物達に伝わって行く。

 ロルフやクラリッサもそれはシミュレーションしていたので、倒しやすい小型の魔物や人間や獣人相手に武器を構えて迎え撃ち始める。

 その一方で一般人のイルダーが、なるべく壁際を進んでその存在を悟られない様にしながら椅子に縛られている人間の元へと近付く。

(生きてるのか?)

 ぐったりと力が抜けた状態で椅子にもたれ掛かっている黒髪の女。年齢は20歳前後と言った所だろうか。

 だが、その女に対してイルダーは明らかな違和感を覚える。

(あれ? この女……)

 この世界で生きて来たイルダーにとって初めて……いや、考えてみれば前にもこんな違和感を覚えた記憶はつい最近の事だ。

「おいあんた、大丈夫かい?」

 もしかしてこの女は……と思いながら声をかけ、ペチペチと頬を叩いてみると反応があった。

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