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46.違和感の正体

「何だこいつ等!」

「うわあああっ!」

 2番目の入り口から坑道内に侵入したロルフ達は、異形の魔物達と戦いを繰り広げていた。

「怯むな! こいつ等は森の中の奴等と同じ位の強さだし種類も似てる! 突き進めえっ!!」

 ロルフが先頭に立って勇猛果敢に槍を振り回し、坑道の奥から襲い掛かって来る小型の魔物を倒しながら道を切り開いて行く。

 最初は順調に探索を続けていたロルフのグループだったのだが、どうやら「ハズレ」の通路に割り振られてしまったらしい。

 この魔物達が坑道の奥から次々に現れていると言う事は、どうやら魔物の繫殖場所がある様だ。

 せめてイルダーが居てくれたら坑道のどの辺りから魔物が現れているのかが分かるかも知れないが、あいにく彼と自分は別のグループに振り分けられてしまったので、その不運を呪いつつもロルフは愛用の槍を振り回して進む。


 だがそのロルフの心の中で協力を求められているイルダーとクラリッサのグループは、魔物では無く突然現れた武装集団と戦いを繰り広げていた。

 数としては大した事は無いものの、1人1人が妙に強いのだ。

 その妙に強い武装集団が、あの1つ目の坑道で捕まえたリーダーの男が言っていた「本隊」のメンバーであるかどうかは分からない。

 何か目印になるアクセサリーだとか服を身につけている訳では無いので、もしかしたら別の盗賊の集団かも知れないのだ。

 それでも、自分達騎士団に対して襲い掛かって来ると言う事は味方で無いのは確かだ。

「くぅっ!!」

 躍り掛かって来た剣士の男のそのロングソードを斧で受け止め、足で蹴り飛ばして応戦するクラリッサ。

 その傍らではイルダーが愛用のロングソードを駆使して戦いながら、時には負傷した騎士団員に対して治癒魔術をかけて怪我の治療をしている。


 攻撃魔術の他に治癒魔術も使えるので、あれだけの大口を叩いて最終的に自分を倒すだけの実力を持っていると証明しているのは、一緒に行動しているクラリッサ自身が1番分かっていた。

(あれじゃあ私が負けるのも無理は無い……か)

 決して負けるのが悔しい訳では無いが、今の自分ではイルダーの実力には届かないらしい。

 なので今はこの謎の武装集団の襲撃から生き延び、何時かリベンジマッチを申し込みたいと思っている。

 だからここで力尽きる訳にはいかないのだ。

「ふっ!」

 背の高い男から突き出される槍を横にずれて回避し、その槍を一気に叩き切ってから男の身体を着ている鎧ごと斬り捨てる。

 彼女が愛用している斧はなかなか大きな物であり、例えばイルダーと手合わせをした時の様な屋外で振り回すにはどうと言う事は無い。

 しかしこうした屋内で振り回すには、自分の持っている武器の大きさと自分自身のリーチの長さを頭の中に入れて戦う必要があるのだ。


 それはクラリッサが騎士団の訓練を受けている時から教え込まれて来ている事であり、自分の斧と同じ……いや、それ以上に長い獲物を使うロルフはもっと大変だった。

「くおっ!」

 振り回した槍の先端が岩壁の出っ張りに引っ掛かってしまうロルフ。

 それを退治している魔物が見逃す筈も無く、大きな隙が出来た所に2匹纏めて飛び掛かって来る。

 ロルフは咄嗟にバックステップで槍を引っ張りながら身を引き、ギリギリでその飛び掛かりを回避。

 目の前に着地して逆に隙が出来た魔物をまずは右足で蹴り飛ばし、もう1匹の魔物を構え直した槍で一突きして絶命させる。

「ギャン!!」

 獣人と何処か似ている、しかし獣人では無い狼の魔物をまずは倒したロルフはその前に蹴り飛ばしたもう1匹の魔物も素早く槍を突き刺して倒す。


 だが安堵の息を吐いている暇は無く、また更に魔物が坑道の奥からやって来るので、ここでロルフは自分の性格からは考えられない様な行動に出る。

「よっしゃ御前ら、一旦退くぞ!!」

 退いて体勢を立て直す、と言う行動に出るロルフをクラリッサやレメディオスが見たら、その顔に驚きが出るのは間違い無いだろう。

 駐屯地からやって来た騎士団員達は、ロルフが副騎士団長と言うのは自己紹介もあったので勿論知っている。

 しかし一緒に戦場を共にした経験がある者は片手で数える程しか居ないので、その団員達の大多数は「退く」と言う行動が当たり前だと思っている。


 が、ロルフがこうして退く行動に出るのは戦場への出兵10回の内で1回あるか無いかと言うレベル。

 自他共に認める熱血漢で勇猛果敢な性格で部隊を率い、目の前に立ちふさがるものは片っ端から殲滅するのが彼の戦い方。

 そんな彼が自分から退くと言う選択を採るのは余程状況が不利になった時か、自分が敵わないと思った相手の場合位のものだ。

 賢吾と初めて会ったあの島の魔物相手の場合は後者で、今の坑道内の戦いでは前者の理由。

 倒しても倒してもキリが無いこの魔物達相手にこれ以上突き進むのは危険だと本能で判断し、こうして退く選択肢が生まれたのだった。

 そしてその選択肢と同時に生まれたのは、他の出入り口から坑道内に入った2つのグループの安否。

(まさか、クラリッサとレメディオスの方でも……!?)

 言い様の無い不安が、足早に撤退するロルフの頭を過ぎるのだった。

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