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45.坑道にて

「この坑道なんだけど、出入り口が沢山造られているってのは知っているかな?」

「そうなのか?」

「話はこちらの地域からの報告で色々と聞いているが、実際に見るのは今が初めてだ」

 ここに居る騎士団の人間達はレメディオスやロルフ、それから彼等と親しいクラリッサもここが開通して色々と出入り口が造られているのは知っていたが、最初の坑道からついて来た北の駐屯地の騎士団員達も含めて全員管轄が違う。

 なので、出入り口の話は情報としては共有出来ているものの実際に見るのは今が初めて。

 実際、レメディオスがこの坑道にやって来たのは最初の坑道開通における視察の時だけ。

 それ以降の話に関しては王都の騎士団の管轄では無いので、定期的に入って来る情報だけが頼りだったのだ。

 なのでその正確な数までは把握出来ていない。


 そして部外者である賢吾は当然何も知らないし、この坑道への道のりを辿って来たのも今が初めてである。

 しかし、ある程度この先のイルダーのセリフを予想する事は出来る。

「そうなんだ。じゃあもっと説明するけど、ここが森から1番近い出入り口。で、残りは今確認出来ているだけで他に2つの出入り口が存在している。それから今もまだ掘り進めている出入り口があるから、これからもまだまだ増えるだろうね。それだけここの鉱山は広いから色々な鉱物が取れるし、開通してからまだ日が浅いから悪い奴等が身を潜めるのにもうってつけって場所になるのさ」

 説明出来て何処か誇らしげなイルダーだが、そんなイルダーを見てもレメディオスは冷静だった。

「そうか。それでは部隊を分けよう。ここを含めて3つの出入り口があるから、私とロルフとクラリッサで部隊を3箇所から送り込み、盗賊団らしき連中を見つけ次第殲滅して行くんだ。……ああ、それと今日は作業の予定はあるのか?」

「いいや、今日は丁度休みだよ」

「そうか、なら今聞いた通りだから気兼ね無く隅から隅まで調べろ。このイルダーからそれぞれの部隊のリーダーのロルフとクラリッサに地図を配っておくが、我々がここに入るのは初めてだ。用心して掛かれ、分かったな?」

 レメディオスの確認に男女問わず騎士団員達の威勢の良い声が響き渡ったのを、賢吾は黙って見つめていた。


 そしてグループ分けがされた結果、イルダーはクラリッサと一緒に進む事になり、賢吾はレメディオスと一緒に森から1番近いこの出入り口から坑道に進む事になった。

 こうしてダンジョンの中に入るのは2回目になるが、ここも以前の坑道のやり方を引き継いでいる様で壁掛けランプが至る所に設置されている。

 しかし進む前に地図を見せられた限りではかなり広い。

 恐らく単純に比較しても、最初のあの坑道よりも2倍以上の広さがあるだろう。

 それを暗に伝えるかの様に、掘られて造られている坑道の横の広さも天井の高さもかなりのものであり、到る所に工事の跡が見受けられる。

 それだけこっちの坑道の作業に力を入れているのだろう、と賢吾は漠然と考えているその先で、レメディオスが地面を見て黙り込んでいた。

「……どうした?」

「工事の人間が入ったにしては……やけに足跡が多い気がする」

「工事をしているんだったら色々出入りするからじゃないのか? 別に怪しい奴等がこの坑道の中に踏み込んでいるってのはこれだけじゃ決められないと思うけどなあ」


 あくまで素人の意見だけど、と最後に賢吾が付け足すとレメディオスの一応納得した様で「ふむ」と小さく頷いた。

「杞憂で終われば良いのだがな」

 そう言い残して再び歩き始めたレメディオスの背中には、賢吾もヒシヒシと感じる程の緊張感が漂う。

 その緊張感を纏う背中を持つレメディオスを先頭にして、騎士団の1つ目のグループは広い坑道内をゆっくりと、しかし確実に探索して行く。

 それは別の場所から探索しているロルフのグループも、クラリッサとイルダーのグループも同じだった。

 かなり広く造られているが故に、隠そうと思えば幾らでも身を潜められる場所のあるこの坑道。

 もしここにあの盗賊団の本隊が潜んでいるのであれば、何時何処から襲いかかられても全く不思議では無いのだ。

「地図で見るよりも結構広いのね、ここは」

「そうなんだよね。でも慣れちゃえばスイスイと進める様になるから今は別に気にしなくても良いよ」


 何回かここに入った事のあるイルダーが先頭と言う事で、何処かクラリッサの表情には安心感が漂う。

 だがイルダーの表情は何だか浮かない。

「ねぇ、さっきから難しい顔してるけどどうしたのよ?」

「ちょっと気になる事があってね」

「……気になる事?」

 地図に目をやりつつアゴに片手を当てたイルダーの意味深なセリフに、クラリッサだけで無く他の騎士団員達も注目する。

 そんな騎士団員達に注目されているイルダーは、3つ目の入り口から歩いて来た時から覚えていた違和感を口に出した。

「坑道の通路の数がちょっと増えている様な気がしてね。例えばあそこはこの地図には無い通路だ。地図は通路を開通する度に書き足して更新するから、あの通路も工事で掘ったなら良いんだけど……何か、引っ掛かるんだよね」

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