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42.驚愕の事実(後編)

「最後、君に蹴られる前に僕は君の足に水系統の改良魔術で氷の魔術をかけたんだよ。そして瞬間的に君の足を氷で固定して、そのまま動けない所で止めを刺す予定だったんだけど……その時、僕の魔術が何故か君には何の効果も無かったんだ」

「そうなのか?」

 思い返してみればそうだったかも知れないと思いながらも、あの時は確か自分の方が先にこのイルダーの顔を蹴り上げた記憶しか無い賢吾。

「それはそうかも知れないが、魔術が効くとか効かないって言うのは俺はさっぱり分からん。今の話からすると、そっちが俺の足にその氷の魔術とやらをかけて地面とくっつけてしまう予定だったのか?」

「そうだよ。君の足には氷の魔術がかかってたんだ。僕の魔術は詠唱が殆ど無しで使えるのが特徴だからね」

「詠唱無しだと?」

 話の途中でロルフが割り込んで来た。どうやら彼にも気になる事があるらしい。

 だがそれを手で制して、イルダーは賢吾との話を優先させる。

「うん。それについてはまた後で個別に話すから待っててね。で、僕のその魔術が効かないって分かったのは、僕の目には君の足が凍り始めてたんだよ。その時は既に地面とくっつき始めてる筈だったのに、君は何事も無かったかの様に僕の顔を蹴り上げた」


 そこで一旦言葉を切り、イルダーは賢吾を見据えて質問する。

「その時、君は足に冷たさを感じたかい?」

「えっ?」

 賢吾がイルダーを蹴り上げた時は、未体験の魔術が自分に影響しない様に必死だったので実を言うと覚えていない。

「すまん、あの時は俺……あんたを倒す事で精一杯で覚えてない」

 正直にそう答えた賢吾に対し、イルダーは2回頷いてこんな提案をする。

「そうか……だったらちょっと実験をしてみないか?」

「実験?」

 何だか嫌な予感しかしないが、賢吾はとりあえず最後までその提案の内容を聞いてみる事にする。

「そうだよ。早い話が僕が君に魔術をかけるんだよ。そして実際に効果があるかを確かめるんだ」

「ああ、言葉よりも実際にやった方が良いって事か」

 論より証拠とは良く言ったものだが、実際にこうして自分がやるとなると何と無く緊張するのは気のせいだろうかと賢吾は思ってしまう。


 それでも、賢吾自身もその実験には興味があるので家の外でやってみる事にする。

 村長の家の前のスペースは魔術を使うにも十分な広さがあるので、気兼ね無くイルダーはやってくれるらしい。

「弱いのにしてくれよ」

「分かってるって。それじゃその時と同じく足と地面をくっつけてみようか」

 直立している賢吾の足元にひざまずき、レメディオスとロルフとクラリッサが見守る前で再びあの時の魔術を出す。

「固めろ、アイスフリーズ!」

 賢吾の履いているスニーカーの上に右手をかざし、そのまま待つ事約10秒。

 見た目には確かに足が氷付けになっている様に賢吾の目にも見えるが……。

「……どう、足が固まった?」

「いいや全然」


 そう言いながら賢吾が足を何時も通りに動かすと、イルダーは元より騎士団の3人からもどよめきの声が上がった。

「えっ、そんな……」

「おい……あいつの足は確かに固まってたよな、団長?」

「ああ、間違い無い。だとしたらこれは一体どう言う事だ?」

「こんなの見た事も無いとよ、僕も……」

 まるで気持ち悪いものを見る目つきの4人だが、1番戸惑っているのは他ならぬ賢吾である。

「いや、そっちだけで色々戸惑われたって困るんだが……つまりどう言う事なんだよ。俺の足が動かない方が良いって事か?」

「まぁ、そうなるよね……」

 自分としてはそうなって欲しくない気持ちで一杯なのだが、どうやら実験の結果はこの世界の人間達である4人にとっては驚きの結果になった様だ、と賢吾は察した。


 そんな光景を見ていたクラリッサが手を上げる。

「ちょ、ちょっと待って。だったら私達の魔術も効かないって事かしら?」

「やってみないと分からないけど、この結果だと高い可能性でそう言う事になるだろうね」

 じゃあ……とクラリッサが賢吾の元に歩み寄り、今度は彼の左腕を取って自分の手をかざす。

「ちょっとじっとしててね。今から治癒魔術を腕にかけるから」

「あ、ああ」

 魔術だったらまた同じ結果になるだろうと思っている賢吾だが、彼の身に次の瞬間恐ろしい事が降りかかった。

「癒しを授けたまえ、ヒール……」

 穏やかな口調で呪文を唱えつつ、クラリッサが手をかざした賢吾の腕に白い光が宿る。


「うっ……ぐおああああああっ!?」

「えっ!?」

 しかし賢吾がその瞬間、物凄い絶叫を上げて地面に倒れ込み腕を押さえてのた打ち回った。

 その声に思わず手を離してしまったクラリッサ、それからレメディオスにロルフにイルダーも唖然とした表情になる。

「お、おい大丈夫かよ!?」

「おい、しっかりしろ! とにかく家の中に運べ!」

「あ、僕のベッドがあるからそこに運んで!!」

 腕を押さえながら苦しんでいる賢吾を、レメディオスとロルフが頭と肩を持って村長の家の中に運ぶ。

 それにしても治癒魔術をかけた筈なのにここまでのた打ち回って苦しむとは、一体何が起こったのだろうか?

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