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41.驚愕の事実(前編)

 地球には存在しないもの。それがこの世界における「魔術」。

 それが今、しりもちをついた賢吾の頭上を通って行ったのである。

 今の時点でこの世界にあるかどうかは分からないが、仮に無いと仮定した時にこの世界から見た地球の「非現実的」と言える物はスマートフォンだったりパソコンだったり、自動車だったり飛行機だったりと言った「科学テクノロジー」だろう。

 だがそれは賢吾にとっては身の周りに当たり前にあるもの。

 それと同じでこっちの世界で暮らしている全ての生物に取っては、魔力があって魔術が使える存在が当たり前なのだ。

 その「魔術テクノロジー」を活かした生活アイディアの1つがこの村に張り巡らされている結界と言う事だろうが、それよりも賢吾はその身体で今まさに魔術と言うものを体験している。


「はっ!」

 立ち上がったは良いが、そのせいで賢吾の反応がワンテンポ遅れたのをイルダーは見逃さずにロングソードを振るう。

 バックステップでその薙ぎ払いを回避するものの、左手を振るって賢吾に再び「炎の剣」の名前通りのファイアーブレードの魔術で追撃を掛けるイルダー。

 今度は前に転がって再びギリギリで回避した賢吾は、上手くイルダーの懐に飛び込む形になったのが幸いして、立ち上がりながらのアッパーカットで彼のアゴに狙いを定める。

「むっ!?」

「ふおっ!」

 息を吐きながらアゴを狙う賢吾のアッパーに、イルダーはロングソードの柄で咄嗟にブロック。

 拳と柄がぶつかり合って、ガンッと鈍い音が響く。

「ぐっ!」

 右の拳に痛みを覚えるが、今はそんな事に構っていられない。

 そのまま賢吾は左手も使ってイルダーの右腕を掴み、柔道の背負い投げで彼を投げ飛ばした。

「うわあ!?」


 素早い投げが決まったイルダーは背中から地面に叩きつけられるが、土の地面なのでそこまでのダメージは無い。

 なので素早くうつ伏せになり、賢吾の足を掴んで口を動かす。

「固めろ、アイスフリーズ!」

(なっ!?)

 その言葉の意味からすると足を凍らされると思った賢吾は、その前に蹴りをつけるべく全力でイルダーの顔面をサッカーボールの様につま先から蹴り上げた。

「げはっ!?」

 イルダーは鼻から血を噴き出し、一瞬立ち膝状態になった後にドサリと仰向けに地面から倒れ込んだ。

「な、何……で……」

 その言葉を最後にイルダーは気絶してしまい、ここでレメディオスからストップが掛かった。

「そこまで! 勝者、久井賢吾!」

 レメディオスの声が響き渡った直後、騎士団員達からわあっと声援が巻き起こって試合終了となった。

「おおー、すげえぞ!」

「素手なのに良くやったぜ!!」

「最高だぜあんた!」

 その声援を受け、賢吾もこれで宿の心配は無くなったと胸を撫で下ろすと同時に、自分がこの世界で行き抜く為の戦い方を少しだけ見つけられた気がした。


 しかし、話はこれで終わらなかった。

 むしろここからが、賢吾にとっての話の本題になるだろうと言う展開がその夜に待っていたからだ。

 村の中に張っている騎士団のキャンプの設営の準備を手伝っていた賢吾の元に、クラリッサが神妙な顔つきでやって来た事からそれは始まった。

「あの息子が俺を呼んでるって?」

「うん。レメディオスとロルフも待ってるから、とにかく村長の家まで私と一緒に来て欲しいのよ」

「ああ、分かった」

 承諾してクラリッサについて行くものの、俺に一体に何の用があるのだろうか? と賢吾は首を傾げるばかりだ。

 まさか恨み言が待ってるのか? と不安になりつつも、気がつけば小高い丘の上に建造されている村長の家までやって来ていた。


 少し剥がれかけている塗装が特徴的な木のドアを開けると、そこには呼びに来たクラリッサの言う通りレメディオスとロルフ、そして村長の息子であるイルダーが待っていた。

「来たか。この息子がお前に話があるそうだからそこに座れ」

「あ、ああ」

 一体何の話だろうかと戸惑いながら、賢吾は用意された木の椅子に座る。

 その様子を見たイルダーが、待ってましたとばかりに口を開いた。

「来たね。それじゃ早速話を聞かせて貰いたいんだけど、君は特異体質なの?」

「へ?」

 いきなり何を聞くんだよ、と心の中で呆れる賢吾。

 しかしその呆れる賢吾に質問したイルダーは真面目な表情である。

「特異体質……って聞かれても俺にはその質問の意図がまるで分からない。質問に質問で返すのは自分でも悪いと思うが先に聞かせてくれ。一体何で俺にそんな事を聞くんだ?」

「ああごめん、説明が足りなかったね。僕の放った魔術がどうも君には何も効いていなかったみたいだからさ。そう言う体験は全く初めてなんだよ。だから何か特異体質だとかって言われた事無い?」

「……いや、俺は生まれた時からこの身体だし別にそう言う事を言われた記憶も無いぞ」

 良く良く考えてみれば、こいつは自分に対してかなり失礼な聞き方だな……とまたも呆れる賢吾。

 だけど「自分の魔術が効かない」と言うイルダーの発言は賢吾も興味があるので、その先をもっと詳しく聞いてみる事にした。

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