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40.第2ラウンド

 余り強くないとは言え、騎士団員として鍛錬を積んで来たクラリッサが負けてしまうと言うまさかの展開に、騎士団員達の間にざわめきが走る。

 そしてそのざわめきが証明するのは、このイルダーと言う男が騎士団員を大勢の面前で負かしたと言う事実だ。

 イルダーは次に、自分と目が合った賢吾に対してバトルフィールドに来る様に指示をする。

(戦って()()()()……って、結構な上から目線だがそれだけの実力はどうやら持っているみたいだな)

 クラリッサが負けてしまった事で殺気立っている周りの騎士団員からの視線もあるが、それ以上に気に掛かるのはこの誘われた事態をレメディオスとロルフがどう見るかだった。

「……俺、やらなきゃならないのか?」

 別に戦う為にここまで来た訳じゃ無いんだが……と思いつつも、この状況だとどうすれば良いのか賢吾は自分の中で冷静な分析が出来ていない。


 すがる様な目つきでレメディオスをチラリと見るが、彼は腕を組んだままじっと賢吾の方を見据えている。

 それは「止めろ」と言うものか、それとも「やっちまえ」と言う意思表示なのか。

 ロルフは戻って来たクラリッサに皮袋に入れて持って来た水を渡して、レメディオスと同じ様に賢吾を見つめている。

 それを見た賢吾は、最初に提示された条件を思い出して逃げられない事に気がついた。

(そうだ……そう言えば、この男に現実を教えない限り俺達はこの村に泊まれない。村の外で寝ても良いが、魔物に襲われる危険が飛躍的にアップする。となれば……)

「ねー、どーすんの? やるの、やらないの?」

 急かす様な口調のイルダーを鋭い目つきで見据え、賢吾は一言だけ発した。

「やってやる」

「そう来なくちゃね。でも、武器を持っていないみたいだけど本当にそれで良いの?」


 この世界ではやはり魔物と言う存在があるせいか、武器や魔法で戦うのが一般的らしい。

 だが自分はそのどちらも使えない「異世界人」なので、これしか戦う術を持っていないのだ。

「ああ、問題無い」

「ふーん、随分と自信があるんだね。それじゃさっさと始めようよ」

 こうして成り行きでタイマンバトルに挑む事になった賢吾だが、もし負けてしまったら今度はどうなるか分かったものでは無い。

 周囲の騎士団員達からのプレッシャーも半端無いので、全国大会に出場した時よりもある意味で緊張している。

「それでは第2試合、久井賢吾対イルダー・シバエフの試合を始める!」

 シーンと静まり返った村のバトルフィールドでレメディオスの声が上がり、第2ラウンドの2人が向かい合う。

 危なくなったらストップを掛けてくれると言うが、万が一と言う事も十分に考えられる。

 しかしこうなってしまった以上はもう後戻り出来ないので、ロングソードを構えるイルダーを賢吾は日本拳法の構えを取って自分の真正面に見据える。


「では……始めっ!!」

 レメディオスの合図で第2ラウンドがスタート。

 実質騎士団のリベンジマッチと言っても良いこのバトルは、素手()()()()()()()異世界人と剣術と魔術を駆使する村の若者のバトルとなった。

 とは言っても、賢吾だってこの世界に来てから武器を持った相手に対して戦うのはこれで4回目。

 1回目のあの謎の男とのバトルに始まり、自分も現実を見せつけられたロルフとの手合わせで2回目で、あの坑道で沢山の盗賊を相手にして最終的にリーダーに固め技をかけたのが3回目。

 そして今回のこの模擬戦で4回目なので、徐々に賢吾は武器を持っている相手との戦い方が分かって来ていた。

(相手の間合いじゃなくて、こっちの間合いで戦える様に試合を運ぶんだ!!)


 日本拳法では体格関係無しに組み手練習も試合も行われるので、小柄な賢吾はそれで苦労して来た。

 相手が大きければそれだけ手足のリーチも違うし、ウエイトだって変わって来る。

 そうした相手には、自分が飛び込む事の出来ない間合いから攻撃されたら一方的にやられてしまうので、賢吾は常に自分の間合いで戦える様に超接近戦のバトルを挑むのが当たり前だった。

 今回の相手であるイルダーはロングソードと言う武器を持っているので、素手の間合いで戦う事の出来る「超」接近戦を展開しなければならない。

 それをロルフとの手合わせの時にとても強く感じたからだ。


 自分から動こうとしない賢吾に痺れを切らしたのか、イルダーの方からロングソードを構えて向かって来る。

 それをゴロンと斜め前方に転がって回避し、下段回し蹴りを繰り出すがこれはジャンプでかわされる。

 その着地と同時に、イルダーはロングソードを持っていない左手を横に薙ぎ払った。

「ファイアーブレード!」

 声と同時に手の先から何かが出て来たので、賢吾は本能のままにしりもちをつく格好でギリギリかわす。

 そこから素早く立ち上がった賢吾は、ロングソード以上に自分にとって恐ろしいものがある事をこの瞬間身を持って思い知った。

(魔術……だよな!?)

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