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35.決着

 奥深くへと坑道を進んで行くに連れて、敵の攻撃も少しずつ激しくなって来た。

 それに襲い掛かって来るのは人間だけでは無く、身体は人間なのだが頭や手足が動物の生物……そう、獣人もこの盗掘作業に参加しているらしい。

 最初にレメディオスに襲い掛かった男を始めとして、いきなり……それも集団でこうして襲い掛かって来る様な連中はどう考えても敵である。

 やましい事が無ければ、騎士団の制服を着込んでいる連中に襲い掛かりはしないからだ。

 そんな突然の襲撃者達に対処しながら進んで行ったその坑道の最深部には、賢吾の身の回りの物で例えると学校の体育館並みの天井の高さと広さを持っている空間があった。

 ここが採掘の大元であるのは一目瞭然であり、それに比例するかの様に敵の攻撃もここがピークだ。

 この大元の空間に飛び込んでざっと見渡した限りでも、30人は超える大所帯なのが見て取れる。

 その中で若い赤髪の人間の男が色々と指示を出している事から、その男がリーダーなのだと言う事までは4人全員が分かった。

 しかし、そこまで辿り着くのは人数差があってなかなか大変である。

(くそ、これじゃ数が多すぎる!!)

 何とかリーダー格の男に近づこうとするものの、彼の手下が邪魔をして一進一退の攻防が続く賢吾。

 このままでは辿り着く前に力尽きて殺されてしまう可能性が高い。


 だが、その時だった。

 ドォン、と大地を揺るがす強い衝撃が賢吾の身体に届いたかと思うと、クラリッサが戦っている場所の方で何人かの敵がブワッと空中に舞い上がったのが見えた。

(何だ!?)

 賢吾も、そして賢吾と戦っていた敵達もそれぞれ同じ事を思ったらしくその衝撃音の方に意識が向く。

 その方向からまた地面が揺れる感覚が襲って来たすぐ後、賢吾の目の前の敵が地面の地割れでバランスを崩す。

「うおっ!?」

「ふっ!」

 賢吾はそれを見て、襲い掛かって来ていた男の1人の顔面にとっさにハイキックを入れてノックアウトさせる。

 一体何が起こったのだろうか?


 賢吾がそう思っていると、今度はロルフが戦っている方から火柱が上がってこれまた何人かの人間が炎に包まれる。

「ぎゃあああああっ!!」

「ああ、あぢいいいい!!」

 炎の塊となって全身を燃え上がらせた人間達を尻目に、ロルフが炎を纏った槍を振り回して戦い続けているのが見える。

 その光景に逃げ出す者も居るが、そうした連中には賢吾の一番近く……この広い場所の入り口近くで戦っているレメディオスのロングソードが容赦無く襲い掛かる。

「良いか、必ず殲滅するんだ! 逃がしてしまえばまた別の場所で民を苦しめる連中になる。1人も逃がすな!」

 レメディオスの大声がホールに響き渡り、ますます殲滅に力を入れる騎士団の2人。

 その一方では素手の賢吾を見つけた、この盗賊団のリーダーと思わしき赤髪の若い男が愛用のロングバトルアックスを片手に乱戦をすり抜けて一気に肉薄して来た。

「ぶっ殺してやらあああっ!!」


 バトルアックスを振り上げて、そのまま賢吾に向かって振り下ろす男だが、これを賢吾はすっと横に身体をずらして回避。

 そこから前蹴りを繰り出して、男の頭部に容赦無しの全力の一撃を叩き込む。

「ぐぅ!」

 体重が軽い賢吾の一撃は、普通に見ればそこまでダメージが大きいものでは無い。

 しかし頭は急所の密集地帯なので、そこに全力で一撃を入れられれば場所が場所だけにかなりのダメージを与える事になる。

 頭を蹴られて悶絶する男に対し、賢吾は更に追撃をかけるべく一気に近寄って男の胸ぐらを掴んで柔道の背負い投げをかます。

 これが畳の上で投げられたならまだしも、今の賢吾達が居るのはゴツゴツした地面を強引に地ならししている上なのだ。


 自分が身に着けている胸鎧や足鎧のおかげでそこまでのダメージは無いものの、背中から思いっ切り地面に叩きつけられた男は自分の息が一瞬止まった様な気がした程の衝撃を受けた。

「ぐはっ!?」

 仰向けに倒れ込んだ男の手に握られているバトルアックスを蹴り飛ばし、柔道の固め技でオーソドックスな腕ひしぎ十字固めに素早く持ち込む賢吾。

 男の首を足で押さえ、右腕を肘の関節から折れる位のパワーで逆方向に曲げに掛かる。

「あ、あがああ……う、腕が……折れる……っ!!」

 ミシミシと男の腕が震える感触を自分の手の先から感じ取りながら、このまま折ってしまおうと決意して賢吾は更に力を込める……が。

「もう良い、そこまでだ」

「……え?」

 突然のストップ。勿論、リングの上でレフェリーからストップが掛かった訳では無い。

 ここはリングの上では無いのだから。

 だとすれば一体誰が……と思いながら上を見上げてみると、そこにはレメディオスの顔があった。

「後は私達に任せろ。この男だけは私達と一緒に騎士団の駐屯地まで来て貰わなければならないからな」

「な、何でだよ?」

「事情聴取の為にこの男だけは生かしておかなければならない。お前はよくやった。だからさっさと離れろ」

 何処か不完全燃焼の気持ちを頭に残しつつも、騎士団長に言われた通り賢吾は男のロックを解除して彼がレメディオスに拘束されるのを見下ろすのだった。


 ステージ2 完

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