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33.潜入

 まざまざと現実を見せつけられる結果となった手合わせから一夜明けて、王都からやって来た3人と地球からやって来た1人の異世界人は、問題の洞窟へと向かって山道を歩いていた。

 やはり鉱物を運ぶせいか、それなりに整備の行き届いている山道だけあってなかなか歩きやすいのは助かる。

 それでも時折荒れた路面があったり急勾配のセクションがあったりで、全てが全て上手く歩ける訳では無い。

 はあ、はあ、はあと歩き続けて賢吾とクラリッサの息が切れて来た頃、その洞窟はようやく姿を現した。

「見えたぞ、あれだ」

「あれがそうか……」

 洞窟は洞窟だが、鉱物の採掘の為に入り口からしてしっかりと落盤が起きない様に補強がされている、ぽっかりと口を開けた黒い入り口がレメディオスの指の先にあった。

 近付くに連れて穴の奥から風が反響する音が聞こえる。

 それはさながら、自分達を地獄へと案内する声の様にも賢吾は思えてしまった。


「全員、準備は良いか?」

「大丈夫だ」

「私も良いわよ」

「俺も問題無いぜ」

「そうか。では……行くぞ」

 先頭のレメディオスの確認に全員がOKの返事をして、4人は暗い洞窟の中へと足を踏み入れた。

「こう言う場所はドンドン掘って行くから日に日に内部が広くなっているイメージがあるんだけど……ここはみんな、来た事あるのか?」

「ああ。と言っても視察で数回位だが」

「ちなみにどれ位前になるんだ、最後に来たのは?」

「半年位前かしら。でも、貴方が言う様に拡張工事とかは行われていないわよ」

「そうなのか?」


 工事の計画としてはそろそろ打ち止めなのか? と賢吾は思ったが、どうやら理由は別にあるらしい。

「ええ。ここはこれ以上掘ると落盤の可能性があるから、数か月前から作業員を止めて別の場所でまた洞窟を掘って坑道にしているのよ。ここからまたずっと南の方に向かって進んで行った場所なんだけどね」

「ふぅん……」

 ふと賢吾の頭に、もしかしたらそっちの方に美智子が誘拐されてしまった可能性が過ぎる。

 しかし目撃情報からしてこっち方面に逃げ込んだのは間違い無さそうなので、まずはここからチェックしに行くのだ。

 だが、そこでもう1つ疑問が出来た。

「あれ、ちょっと待ってくれ。ここって作業員は居ないのか?」

「だからそれは今クラリッサが言ってたじゃねえかよ。これ以上掘るとやばいから作業止めてるって」

「えっ、それじゃ今ここは無人だって事か?」

「基本的にはそうだ。1週間に1回位は作業員がこっちにも作業をしに来たり、駐屯地の奴等がここを見回ったりしてんだけど、ここに人が居る事は少ねえよ」


 何時も通りの荒っぽい口調で賢吾とやり取りをするロルフだが、その時先頭を歩いていたレメディオスがピタリと足を止める。

「……全員止まれ」

「どうしたのよ?」

「まだ真新しい足跡が幾つもある。だが、今日は騎士団の見回りも無ければ工事の予定も入っていない筈だ」

「と言う事は……」

 クラリッサのセリフの先を待たずにレメディオスは頷き、その目を鋭くした。

「ここにやって来た人間達がこの先に居ると言う事だ。臨時の工事や見回りがあるのかも知れんが、それならそれで良い。だが、それ以外の目的があって侵入した者が居るならば私達としても見逃す訳にはいかないからな」


 入り口こそ暗かったものの、中に入って少し進んでみればわざわざランプを持って来なくても済む様に、坑道の中には壁にランプが掛かっているのだ。

 そのランプがレメディオスの足元に残っていた足跡を映し出してくれた。

 そしてその足跡を発見したレメディオスは、何かを決意したかの様に腰にぶら下げているロングソードを抜いた。

 そのモーションを見ていたロルフとクラリッサも槍と斧をそれぞれ構え、武器を持っていない賢吾も何時でも何処でも対応出来る様に身体に少し力を入れて進んで行く。

 この坑道は道こそほぼ一本のルートになっており、たまに分かれ道があってもすぐに行き止まりになっている。

 その一本道をなかなか奥まで広く深く掘り下げているのか、道は地下に向かって続いている様だ。

(まさにRPGのダンジョンと言う雰囲気だ……)

 RPGには疎い賢吾でも流石にダンジョンは知っているので、その僅かな知識を頼りにして騎士団の3人の後に続く形で足を動かす。


 そのまましばし進んで行くと、突然それは訪れた。

「うおりゃあああっ!!」

 薄暗い分かれ道の先から、突然1人の武装した男が両手斧を頭上に振り被る形で飛び掛かって来た。

「ぬん!!」

 しかし、先頭を歩いていたレメディオスはこの事態を予想していたかの様に冷静にロングソードを薙ぎ払い、男を一刀両断で斬り捨てて対処。

 その男の襲撃を皮切りにして、坑道の奥から次々と武装した男女が姿を現して襲い掛かって来る。

 見るからに友好的とは思えないその集団に対し、レメディオスが落ち着いたセリフを口走る。

「盗賊の奴等だな。総員、応戦しろ!!」

 男を斬り捨てたレメディオスが後ろの3人にそう命じ、狭い坑道が一気にバトルステージに早変わりした。

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