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28.魔道具

「クラリッサのあれは「魔道具」と言う物だ。自分達の中にある能力を最大限に引き出したり、元々ある能力を身体の中の魔力と融合させて、本来の自分が持っている以上のパフォーマンスを引き出す事が出来たりする」

 一先ずクラリッサとロルフにそれぞれ自分の武器の手入れやチョイスをさせている横で、若干誇らしげにレメディオスがこの世界独自のシステムである「魔道具」、そして「魔術」についての説明を始める。

「例えば私であれば、この服の下に鎧の形で大きな魔道具を着けている。魔道具の形や大きさと言うのは決まっていないから、クラリッサの様に腕輪として着けたりロルフの様に耳にピアスの形で着用も出来る」

 そう話を振られたロルフは武器をいじる手を止め、自分の両耳に小さくぶら下がっている赤いピアスを賢吾に見える様に引っ張った。


「アクセサリーとしては良さそうだけど、効果はどう言うものだ?」

「魔術王国カシュラーゼが作り出した物で、着用者の身体能力を上げる事が出来る画期的な発明品だ。この世界の生物達は必ず魔力がある。これはさっき話した通りなのだが、魔術が必ず使えるかと言うのはまた別の話だ」

「……何で?」

「個人の問題だ。魔術の勉強が嫌いな者も居るし、元々の魔力の量が低すぎて魔術を使えない生物も居る。

 だがそんな生物達が、自分自身の魔術や魔力に頼らずに身体能力を上げられるのがこの魔道具だ」


 魔力が体内に向かって魔道具から流れ込む構造をしており、流れ込んで増えた魔力が身体の魔力と融合して結果的に身体能力アップに繋がる。

「それじゃ頭が良くなったりもするのか?」

「それは無理だ。流石に頭脳まではカバー出来ない。あくまで身体能力の向上だけだ」

「ああ、そう……。ちなみに騎士団の人間は全員持っていたりするのか?」

 レメディオスは首を縦に振る。

「そうだ。他の国の騎士団でも同じ様に取り組みが成されているが……着けて行くのを忘れるのは言語道断と言えるだろうな」

 そう言いながらレメディオスがクラリッサの方にチラリと視線を向ければ、クラリッサはバツが悪そうに俯きながらも自分の武器の手入れに専念し続ける。


「身体能力の向上って言うけど、具体的にどう言う所がアップするんだ?」

 そう尋ねると、まずレメディオスは自分の腹を指差す。

「根本的なものとしては、まず反射神経が良くなる。それから基礎体力も向上させられるから激しい運動をしたり、身体に負担が掛かる作業の後でも疲れ難くなる。細かく言えば魔道具を着ける場所によって効果が変わって来る。鎧として全身に纏っている私であれば身体全体の効果をまんべん無く向上させられるし、クラリッサであれば腕周りの能力が向上する。斧を振るうスピードが速くなるとかだ。ロルフのピアスだったら聴力が向上する」

「便利なもんだな。手間も時間も金も掛かりそうだぜ」

「そう言う事だ」

 率直な賢吾の感想に、レメディオスは自分の身体を見下ろして呟く。

 彼の魔道具には恐らくかなりの金が掛かっているのだろうが、それも騎士団長と言う大役を任されているからこそだろう。


 走るスピードをアップさせたいなら足首に着ける。

 全身をバランス良く強化したいのであればレメディオスの様に身体の大部分に取り付けるタイプもあるが、それを嫌ってネックレスにする者も居る。

 ただしレメディオス曰く、魔道具の大きさによっても効果の大小があるのでネックレスタイプになると自分が今身に着けている鎧タイプよりも効果は大幅に減少するのだとか。

「自分にとって足りないものを補う事が出来るのが、この魔道具なんだな」

「その解釈で合っているぞ」

 なかなかこの魔道具と言う物はしっかり考えて作られているらしいが、効果があるのは装着者本人だけでは無いらしい。

「それから、魔道具の効果は武器や防具にも影響がある」

「そうなのか?」

「ああ。例えば武器を持って戦うとする。その時に武器に流れる魔力に反応して、使い手が本来以上の実力を引き出す事も出来る」


 じゃあ……と一旦賢吾は武器庫をグルリと見渡してから口を開く。

「それって、例えばクラリッサが斧で戦う時に今までよりも素早い取り回しが出来るみたいなものなのか?」

「まさにその通りだ。ちなみにこの世界の武器や防具は、生成過程で魔力をその武器と防具の中に流し込む」

「魔力を?」

「そうだ。そうすると、これも魔道具と同じく生物の体内の魔力と反応して攻撃力や防御力を高める事が出来る。魔力が高い生物であればその効果はより高くなる。御前の世界では魔術も魔力も無い様だが、そう言う事は出来るのか?」

 賢吾は首を横に振った。

「いいや、そんなのは聞いた事も見た事も無い。この世界はそう言った部分では、もしかしたら地球よりも技術の発展や発明が進んでいるのかも知れない……」

 地球とは違う世界に来てしまった以上、当然常識も違う。

 それをこの魔道具、それからこの武器と防具の説明だけでヒシヒシと地球人の賢吾は感じ取る事が出来た。

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