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256.王国の行方

 最後の魔導砲も破壊されたものの、その代償は余りにも大きかった。

 漏れ出したガソリンに火がついて大元のポリタンクのガソリンに引火して大爆発が起こるのと同じで、地下に巡らせていた魔力のパイプラインの役割を果たしていた魔術の文様に一気に誘爆し、それが王都中の至る所で大爆発を引き起こした。

 これは賢吾も美智子も知らなかった話であり、イズラルザよりも威力のある魔導砲の計画と建造には欠かせなかった要素であると後にレメディオスと一緒に建造に関わっていた騎士団員が証言した。

 レメディオスを倒す事には成功したものの、結局大爆発した王都は既に住民が住める様な場所では無くなってしまったのだった。

「……俺のせいか……」

 自分がレメディオスを倒した事によって、王都シロッコはその城を含めて全てが火の海になってしまった。

 何とか脱出出来た住民も極僅かと言った所であり、王族も全てレメディオスの手によって根絶やしにされてしまった。

 その事態を引き起こした責任は全て自分にあるのだ……と賢吾は燃え盛る王都を見つめて、がっくりと地面に両手と両膝を着いて四つん這いになって涙を流す。


 しかし、そんな賢吾の両肩に優しく誰かの手が置かれる。

 左肩には今までのライバルだったエリアスの手が、そして右肩には自分の幼馴染みの美智子の手が。

「何言ってるんだよ。君がレメディオスを倒して魔導砲を破壊してくれたのは変わりないんだよ」

「そうよ。あのままレメディオスを放っておいたら、どの道この王都は壊滅していたわよ。容赦無くビームを撃っちゃうおかしい人だったんだから、あそこで倒して無かったらこの王国がどうなっていたか……」

「……あ、ああ……」

 そう言われると少しは救われる気がした……のだが、結局は目の前で王都シロッコが焼け野原になっている現実も変わらない。

「これから……王国はどうなっちゃうのかしら?」

 イルダーの故郷であるガルレリッヒ村、それから魔術都市イズラルザも騎士団に襲撃されたり魔導砲で砲撃されたりしているが、王都程の被害は無い。


 その時、女従業員のそのセリフを聞いていたエスヴァリーク帝国の騎士団長であるセバクターがイルダーにこんな質問をした。

「イルダーは……ガルレリッヒ村が他の国の管轄になっても平気か?」

「えっ? い、いや……僕は今まで通り暮らして行ければそれで良いとは思うけど……」

 その答えを聞き、今度はエリアスに質問をぶつける。

「この国の生まれのエリアスはどう思う?」

「どう思う……か。俺にはもう戻る場所が無くなってしまったからな。家はあるけど貴族の地位は無くなったよ」


 エリアスからの答えも聞いて、セバクターがこんな提案をする。

「ここは元々、隣のアイクアル王国の領土内なんだろう?」

「ああ、そうだな」

「見ての通りここは国では無くなった。だったらもういっその事、村や町がアイクアル王国の管轄に入った方が平穏な暮らしが出来るんじゃないかと思う。別にシルヴェン王国とアイクアル王国の仲が悪い訳じゃあるまい?」

「……! それは……そうだが……」

 第三者の立場としての考えを口にするセバクターに、エリアスを始めとして他の一同はハッとした表情になった。


 アイクアル王国は農耕に秀でた南国。

 現在は能天気な性格の王が治めているだけあって、楽観的な性格の人間が多い。

 それ故にシルヴェン王国ともランディード王国ともトラブルは起こしていないし、ただ単に領地の中に更に別の王国がある関係に過ぎない。

 シルヴェン王国の領土は王城や王族が無くなったが、他の町や村までが全て壊滅した訳では無い。

 となれば、このセバクターの提案が確かに1番自然かも知れない。

 イズラルザとかであれば何処の王国にも属していない独立都市……と出来るかも知れないが、ガルレリッヒ村等はそうも行かないだろう。

 それに元々はアイクアル王国の領土内なのだから、村や町としてはやっぱりアイクアル王国の管轄となるのが自然な流れだった。


 エリアスは立ち上がった。

「分かった、そうしよう。俺は元々はこの国の貴族だったからね」

「俺もアイクアル王国の王都に行くぜ」

「僕も行くよ。……後は、この世界の住人である僕達の仕事だろう」

「ああ。俺も行こう」

「私も着いて行くわ。行く所が無くなっちゃったし……」

 エリアスに着いて行くと宣言をしたエルマン、そして同じく宣言したイルダー、更には食堂の従業員であった狼獣人のコックとその同僚の女が一斉に賢吾と美智子を見る。

「……お、俺達も協力……」


 したい、と賢吾が言い終わる前にアンフェレイアが口を開く。

『いいえ、もう大丈夫よ。後は私達が何とかするわ』

「え?」

『そうだな。俺達が御前達を呼んだんだ。だが御前達の役目はもう終わった。十分に活躍してくれた礼をこの世界の神として言わせて貰う。そして……俺達は後1つ御前達にやる事が残っている』

 エンヴィルークがそう言った瞬間、賢吾と美智子の身体が光り始めた。

「えっ……え?」

「え、あ、ちょ……っ!?」

『俺達は、元の世界に御前達を帰す義務があるからな』

『最後にお別れの言葉を言うなら今の内よ』

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