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254.絶望の王都

 王都シロッコの惨状は、エンヴィルークからの報告で聞いていたイメージを上回るものだった。

 複数回あのエネルギー弾が撃ち込まれた王都は、その着弾した場所が一目で分かる様に大きな黒い焦げ跡となって何もかもが無くなってしまっていた。

 家も……施設も……それから人も。

 エネルギー弾が一瞬にして、その全てを灰にしてしまったと言うのが見て取れる。

 そしてそれは、あの大きくて荘厳そうごんな王城も同じだった。

「げぇ……もう城が半分以上陥没してるじゃないか!!」

「しかもその残っている部分も燃えている……あれじゃもう倒壊するのも時間の問題ね」

 そんな城の近くの地下にある魔導砲目指して、アンフェレイアに進行方向を指示する賢吾。


 しかし、敵もそう簡単には近づけさせてくれないらしい。

『きゃっ!!』

「うあ!?」

「うわあ!?」

 城の方からいきなり、あの1つ目の魔導砲に向かっている時と同じ白いビームがアンフェレイアの横を掠める。

「くそっ、こっちに気付かれてる!!」

「ちょ、ちょっと、完全にこっちを狙って来ているわよ!!」

『分かってる! 掴まって……一気に魔導砲の場所に向かうわよ!!』


 グンッと方向転換し、自分の身体の周りに魔術防壁を展開して身を守りながら騎士団の総本部の近くに着陸したアンフェレイア。

 その魔導砲の場所に向かう為のあの地下通路のフタは開いており、人間の姿に変化したアンフェレイアが先頭で通路の中を進んで行く。

「何か感じる?」

『……ええ。何人もの人間、獣人、それから魔術師に魔物……沢山居るわ』

「やっぱりこの先からあれを撃って来たんだな」

 通路の先を魔術で明るく照らしながら、アンフェレイアが突き当たりにある出入り口からあの建造場所へと1番最初に姿を見せる。

 そこには既に、3人がやって来る事を予想していた騎士団員達と魔物が待ち構えていた。


 だがそれも、神であるアンフェレイアの魔術の前には無力であった。

 自分が得意とする風の魔術で出入り口の待ち伏せをまずは文字通り吹き飛ばし、そこから戦いの幕が開ける。

「とにかく魔導砲に近づくのよ!!」

「分かった!!」

 3人の元に向かって来る待ち伏せの部隊を蹴散らしながら、賢吾が真っ先にその魔導砲の前に辿り着いた。

 しかし、そんな彼の前に何処か優雅な足取りで立ち塞がるのは……。

「残念だ。まさか御前が敵に回るとはな」

「それはこっちのセリフだ、レメディオス第3騎士団長」

 魔導砲を破壊させまいと立ち塞がったレメディオスに対して、賢吾はまず今までずっと疑問に思っていた事を確認も含めて問い掛ける。


「あんた……近衛騎士団時代に魔物や賊を逃がしたのはわざとだったんだってな?」

 賢吾の問い掛けに、レメディオスは黙って腰からロングソードを抜いた。

「そこまで調べ上げるとは……余計な詮索はしない方が身の為だと言う事を、私は以前貴様に忠告しておいた筈だが?」

「別にしたくてした訳じゃ無い。俺の仲間が色々と調べ上げてくれたおかげで、ここまで辿り着く事が出来たんだよ」

 一拍置き、賢吾は更にレメディオスに調べた内容を突きつける。

「魔物や賊を逃がして、あんたはその責任を負わされて近衛騎士団を除隊になった。そして魔物討伐が主な任務の王国騎士団の騎士団長として動けば、怪しまれずに今回の一連の事件……騎士団ぐるみで魔物を裏で生成し、他国に改造生物として高く売りつけて私腹を肥やす事が出来るってのも出来る訳だ。そして王国への復讐も出来る。あんたの家族を殺し、国を滅ぼしたこの王国に……今みたいにな!!」


 レメディオスはロングソードを構えたまま感心した様な表情になった。

「あのイルダーと言う男が逃げて行く時に、咄嗟に盗聴器を投げて仕掛けたのは正解だった様だ」

「……ああ、あれもあんたの仕業だったのか」

 捕らわれたイルダーが、レメディオスの元からアンフェレイアの力を借りて逃げ出す際にくっつけたのが、あの腰の部分から見つかった物だった様だ。

「色々と私の計画を止める為に頑張った様だったが、一足遅くて残念だったな」

「くっ……これ以上王都を破壊させてたまるか!!」

「王族ももう既に死んだ。私の計画は殆ど成功したと言えるのだが……それでも貴様が邪魔な事には変わらないからな。神の力だか何だか知らないが、私の邪魔をする者達は全員死んで貰うだけだ!!」


 そう言いながらロングソードを振って来る……かと思いきやそれはフェイント。

 思わず身構えた賢吾に対し、先制攻撃で前蹴りを繰り出すレメディオス。

「ぐほっ!!」

「ふん……私が剣術しか出来ないと思ったら大間違いだぞ。第3騎士団では魔物との戦いもかなりあるからな。武器の扱いだけでは無く、馬術や体術も優れていなければならない。それに貴様とはくぐって来た修羅場の数が違うのだよ」

 御前なんざ私の敵じゃない、と遠回しに言っているレメディオス。

 だが、それでもここまで賢吾は仲間に支えられてやって来たのだし、今だって美智子とアンフェレイアが同じ空間で戦っている。

 だから自分もやるしか無いのだ、と立ち上がって再びレメディオスに拳を構えた。

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