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251.2つ目の魔導砲

「何だそれ?」

 アンフェレイアの横に立っていて事の成り行きを見ていた賢吾が、そのアンフェレイアの掴み取った謎の物体に視線を向ける。

 それは他のメンバー全員も同じだった。

 そしてその謎の物体の正体に真っ先に気が付いたのは、自らも「それ」の使用経験を持っている使い魔のシェロフだった。

『おい、それ……発信機じゃないか?』

「発信機?」

『ああ。それも盗聴器付きの……だ』


 そのシェロフの言葉にエンヴィルークとアンフェレイアを含めた他の全員が驚きのリアクションをするが、シェロフはアンフェレイアの手からそれを受け取ると、地面に落として躊躇無く踏みつけて壊した。

『これでもう、外部に何もこちらの情報が流れる事は無くなったと思うぞ』

「え、ちょっと待ってよ……じゃあこれを僕に誰かがくっ付けたって事か!?」

『そうとしか考えられないな。そしてこれを使って何処かで情報をキャッチして、シェロフの言う通り情報が流れていたんだろう』

 ユグレスも腕を組んでその破壊された発信機を見下ろす。

「えっ、誰がこんな物を……」

『その前に、貴方達は誰かに言うべき事があるんじゃないのかしら?』

 疑問の声を上げたエルマンだが、それを遮る様にアンフェレイアが今までに聞いた事が無い様な冷たい声で賢吾のチームに問い掛けた。


「す……すまなかった」

「俺も……悪かったよ」

「疑ってごめんなさい、セバクターさん」

「悪かった」

「すまん……」

 エルマン、エリアス、美智子、賢吾、イルダーの若者男女5人からそれぞれ謝罪を受けたものの、23歳の同じく若者であるセバクターの表情は鋭い目つきのままである。

「まぁ……疑いが晴れたなら俺はそれで良い。……俺達はこんな物をここで発見した」

 目つきはそのままでも「許した」と言うスタンスのセバクターは、自分のチームが見つけた資料を賢吾に差し出した。

「これは……」

「恐らく、あの騎士団長は上に虚偽の報告書を提出していたかも知れない。自分の進退に関わる事だから隠蔽しようとしたのかも知れないな」


 だが、そんな彼等の元に思わぬ来訪者が現れたのはその時だった。

「おっ、おい……ここに居るのか!?」

「えっ?」

「ちょ、ちょっと……イズラルザが大変な事になっているのよ!!」

 はぁはぁと息を切らしつつ、一同の居る執務室に飛び込んで来た2つの影。

 それはシェロフと賢吾と美智子の3人にとっては見覚えのある懐かしい顔の人物達であった。

「え、あ、あんた等……久し振り……じゃなかった、何でここに?」

 離れて長い時間が経つ様な気がするその2人の人物は、飛び込んで来るなりかなりの危機的状況に自分達が置かれている事を説明し始める。

「今はそれ所じゃない!! イズラルザの近くにある砦から、何かでっかくて白い光線が発射されたんだよ!! それでイズラルザの町の主要施設とかは殆ど壊滅状態なんだ!!」

「何だって……!?」


 飛び込んで来た2人の人物は、あの地下の魔導砲を製造している場所に繋がる地下通路を発見した女の従業員と、フリフリエプロンを身に着けていた狼獣人の従業員だった。

 その2人の報告にセバクターが驚く横で、美智子は隣に立っている賢吾にここに来る前の事を思い出していた。

「ね、ねえ賢ちゃん、それって……」

「ああ、間違い無く魔導砲だろうな。イズラルザの近くの砦って言うとあそこだから、エンヴィルーク、そこまですぐに向かってくれ!!」

 だが、そこで女の従業員の方から更なる危険な情報がもたらされた。

「ま、待って!! 直接向かうのは危険過ぎるわ!」

「え、どうしてだ?」

 そもそもこんな状況なんだから直接向かうべきだと思いつつ理由を尋ねるエリアスに、女の従業員は騎士団の内情を話した。

「第3騎士団の団長のレメディオスが、近衛騎士団以外の団長を2人共焚き付けて第1騎士団と第2騎士団の連中も仲間にしちゃったの!!」

「なっ……」


 真面目に笑い事でも何でも無い。

 どうやって、どんな理由でレメディオスが第1騎士団と第2騎士団の団長を仲間に引き込んだのかは分からないが、理由はどうであれそれだと近衛騎士団以外のシルヴェン王国騎士団全てが敵に回ってしまう事になってしまうじゃないか、と一同は戦慄する。

「だから俺達、あんたの甥っ子からここに繋がる魔法陣があるって聞いてここに駆け付けたんだ。早く来てくれないとイズラルザどころか、これじゃ王都まで危ねえんだよ!!」

「そう言えば、イズラルザの地下、それから王城の地下、最後にこのランディードの王城だった場所の地下にそれぞれ魔法陣を描き、転送装置を作って移動出来る様にしてある……ってレメディオス団長が僕に言ってたな」

 だったらそれを使わない手は無い、と全員急いで地下に向かう。


「これか……」

「うん。だけどイズラルザの町がほぼ壊滅しているから何人送れるか分からないわ。私達2人は大丈夫だったから、とりあえず魔法陣に乗れるギリギリ一杯の人数でやってみましょう!!」

 女従業員の提案で転送を始める一同だが、なかなか現実は厳しいのだと言う事をこの後に思い知らされる者達が居た。

 魔法陣の中に入ったのは使い魔と神のドラゴン以外のメンバー達。

『それじゃやるわよ……』

 アンフェレイアが自分の魔力を注入し、転送の為の魔法陣を動かし始める。

 地下室に眩い光が満ち溢れ、一層激しく光り輝いた後にその場から魔法陣に乗った人物達が消えていた。

「あ、あれっ?」

「え……?」

 賢吾と美智子、地球人の2人を残して。

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