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250.分かるのか?

 エンヴィルークとワイバーンを使って飛んで来た賢吾のチームが、引き続き何か騎士団の事情を示す様な資料が無いかを城中を手分けして探していたセバクター達と合流した。

「あれ? 前に僕が捕まっていた時よりも明らかに敵の人数が少ない気がするんだけど」

 城の最上階にある騎士団長の執務室に来る様に、とアンフェレイアからの念話で命じられたエンヴィルークがそれを人間達に伝え、その途中で既に死体となったシルヴェン王国騎士団員達の姿を幾つも発見していた。

 だが、その前の状況を知っているイルダーは捕らえられていた時の記憶よりも死体の数が少ない事に気が付いた。

 その疑問に対してはユグレスが答える。

『ここに居るのはどうやら最低限の見張りだけらしいな』

「と言う事は、今の時点で重要なのはやっぱり王都の方なのね」

「そうみたいだな……」


 そう言いつつ、エルマンはセバクターに対して明らかな疑いの視線を向ける。

「……何だ?」

「いや、別に。俺は使い魔の2人に聞きたいんだが、ここに来るまでに何か変わった事って無かったか?」

『変わった事?』

 いきなり何を聞こうとしているんだ、と質問をされた2人は訝しげな表情になるがそれに構わずエルマンは続ける。

「ああ。例えば何か空を飛んで行く奴等を見たとか、何か密会をしていた奴等を見たとか、何かコソコソ怪しい動きをしている奴が居たとか……そう言うのだよ」

 質問は使い魔の2人に投げかけているが、目線だけは明らかにセバクターに向けられているのがそのセバクター自身もそれから使い魔の2人も分かっていた。


「……何か、俺を疑っているのか?」

 明らかな疑いの視線を向けられているのに、それを問わない訳にはいかない他国の寡黙な騎士団長は真っすぐな視線でエルマンを見据える。

 だが、エルマンは彼の質問には耳を貸そうとしない。

「俺はこの使い魔さん達に聞いてんだよ」

「そうか。それならそっちに聞いてくれ」

 突き放す様なセバクターのセリフだが、それで良いとばかりにエルマンは使い魔の2人に視線を戻した。

 だが、その2人のやり取りを見ていた使い魔達には何の心当たりも無い。

『変わった事……いいや、私達がここに来るまでの間も、それからここで敵と戦っていた時も、後は捜索活動をしている時も何も無かった気がするぞ』

『私も同じだ。そもそも私達は最初は2人ずつに分かれて戦ったり捜索をしていたからな。アンフェレイアと私、セバクターとシェロフでな。その後はアンフェレイアが城の中を確認している間に3人ではぐれない様に城の中を探し回っていて、先程アンフェレイアと合流してそっちと合流したんだ』

「……ふーん、ま、信じてやるよ」


 それでも尚、訝しげな視線を止めようとはしないエルマンに対して背後からイルダーとエリアスがストップを掛けた。

「ちょちょちょ……落ち着いてよ。確かにあの件で疑う気持ちも分かるけど、こう言っているからこれ以上は失礼だよ」

「そうそう……落ち着いて」

 しかし、疑いを掛けられたままセバクターも黙っていられる程お人好しな性格でも無い。

「ハッキリさせて貰おうか。俺に疑いを持つのは何故だ?」

 獲物を狙う鷹の様に鋭い目つきでエルマンを睨み付けるセバクターに、これは正直に話した方が良いだろうと言う事で美智子がズイッとエルマン達とセバクターの前に歩み出る。

「イルダーの故郷のガルレリッヒ村が騎士団に襲われたの。それも大型魔獣を従えて襲って来たわ。だけど……その騎士団の襲撃が余りにもタイミングが良過ぎてね。まるで誰かに見張られているかの様に絶妙のタイミングだったわ。魔導砲を壊す為に動いているって言う情報は向こうもキャッチ出来るかも知れないけど、私達がガルレリッヒ村に向かうって言うのは騎士団は知らない筈なのよ。私達しか知らないんだもん。なのに、完全に見計らったタイミングでやって来た上に明らかに村を襲いに来ていた。シルヴェン王国騎士団が今まで襲わなかった筈のイルダーの村を突然襲う……それも私達が村の中に居るタイミングで襲うなんて、余りにも不自然じゃないかしら?」


 美智子の長い考察のセリフを聞き、セバクターも納得した表情になった。

「それで御前達は俺を疑っているのか?」

「少なくとも俺はそう思ってるぜ!」

 エルマンが力強く言うが、それでもセバクターは冷静だ。

「さっきこの使い魔の人達が言っていたが、俺には単独行動をするチャンスが無い。それにシルヴェン王国への連絡手段なんて俺は持っていない。最初はそうと知らずにあの騎士団長に協力していたが、今は御前達に協力している身だぞ。しかも、俺のエスヴァリーク帝国まで攻撃しようとしている騎士団の連中に俺が協力するとでも思うか?」

「……それは……」

 言葉に詰まってしまったエルマンだったが、その時イルダーの後ろから新たな疑問の声が上がった。

『あら? ねえちょっと……貴方のマントの下から変な魔力の流れを感じるわよ?』

「えっ?」

 イルダーの後ろに立っていたアンフェレイアが、そのイルダーの身体に違和感を覚えてマントを捲り上げる。

 そしてその下に着込んでいる服の背中の部分から腰に手を滑らせ、腰骨の辺りで手が止まった。

『ここ……何かあるわね』

 グイっとその部分に爪を抉り込ませたアンフェレイアの人差し指に、固く当たる感触があった。

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