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248.早まる計画

 そんな危険な物体を手に入れた一行だが、この場に放っておく訳にもいかないし何かの役にこの先で役に立つかも知れないのでここは賢吾が持つ事にした。

「さて、それじゃあ次の魔導砲に向かおう」

 早くしないとさっきみたいな魔力のレーザー砲がまた発射される破目になってしまうから、と急ぎたがる賢吾をイルダーが止める。

「ちょ、ちょっと待って。まだ僕達にはやる事があるでしょうが!」

「ん?」

「まずは僕の村に行って状況の確認とエンヴィルーク様と合流する事、それから使い魔の2人とあの騎士団長とも合流しないと!!」

「……ああ、そうだったな」

 今までの戦いの興奮や、さっきのレーザー砲の威力を文字通り間近で目撃してしまった事もあって急ぎたい気持ちが抑えられない賢吾だったが、確かに言われてみればそうだと一旦心を落ち着かせる。

 なのでまずはイルダーのガルレリッヒ村へと戻り、エンヴィルークに任せて来た村の状態確認とこれから先の準備を整える事にした。


 その様子を別の場所で把握している2人の人物が居る。

「そうか、クラリッサがやられたか……」

 ギシリと椅子を軋ませ、顎に手を当てたその男は傍らに控えている別の男に声を掛けた。

「おい、この中で知っている奴は居るか?」

「ああ。俺と一緒に行動していたあの男も一緒だ」

 男の回答を聞いて、その椅子に座った男はふーっと溜め息を吐いた。

「しかし……1つ目の魔導砲が破壊されたとなるとかなりまずい事態だな」

「分かった。それじゃこっちは計画を前倒しにしようと思うんだが」

「やれるか?」

 椅子に座った男が確認すれば、そばで控えて立っている男が口を笑みの形に浮かべた。

「ああ、任せておけ。もっと後にやる筈だった計画が少し早まっただけだ。この先の計画も進んでいるんだろう?」

「勿論だ。それじゃそっちは任せる。こっちも計画を早めよう」


 まさかその状況をリアルタイムでキャッチされているとは夢にも思っていない一行は、ワイバーンでガルレリッヒ村に戻って来ていた。

「良し、あれだけの襲撃の割には余り被害が無くて良かったな」

「そうだな……」

 イルダーの安堵した表情に、隣に居る賢吾も頷く。

 騎士団の襲撃によって死亡した村人は4~5人で、大怪我をした村人も7~9人位だったのであの突然の襲撃にしては被害が少ない方だと言える。

 村人達に余り被害が出なかったのは、この村の立地条件もあるだろうとイルダーが説明する。

「僕と同じで、この村の人達は魔物の討伐をしている事が多いから割と戦うのには慣れているんだよ。あの鉱山で働いている人でそこに向かう道のりで魔物が出るから嫌でも討伐しなきゃならないし、鉱山で働いている人以外だったらその森から木材の伐採で生計を立てている人も居るからその人達はもっと魔物と戦っている。後は傭兵をやっている人も居るから、武器を持って戦うのは抵抗が無い人が多いんだよね」


 だから騎士団にも対抗出来たのか……と賢吾は納得した。

 それでも少ないとは言え犠牲者が出てしまったのは痛々しいので、騎士団にこれ以上好き勝手させてはいけない。

 そう決意する賢吾とイルダーの前に、人間の姿のエンヴィルークが色々と処理を終えて戻って来た。

『こちらは被害者達の傷の手当てが終わった。それから犠牲者の墓も作った。ただし心の傷までは俺はどうにも出来ないから、それはこれからのここの住人次第だ』

「分かった、どうもありがとう」

「僕の父さんと母さんは……?」


 あの襲撃の時には全員がバタバタしていてイルダーも例外では無かった。

 なので途中で自分の両親の姿を見失ってしまったのだが、エンヴィルーク曰く『2人共無事だ』との報告を受けてホッと胸を撫で下ろす。

 問題はこれからの行動だが、賢吾を始めとして今回の騎士団のガルレリッヒ村の襲撃には何かと違和感を覚える事が多かった。

 何故、5人が集まっているタイミングで都合良くあの大きなギローヴァスと言う魔物を連れて襲撃が出来たのか?

 何故この村を襲いに来たのか?

 何故、あの山で色々と話をしている時には騎士団が襲撃して来なかったのか?

 考えれば考える程に疑問は尽きない。


「これから王国を一旦壊滅させる自分達の力を誇示したいから、イルダーの故郷であるこの村を襲ったって事なのかな?」

「うーん、でも誇示するんだったら他にも大きな村とか町があるんだし、魔術都市イズラルザに自分の息が掛かっている連中が居るってレメディオスが言っていたから、そっちを占拠してやればもっと自分達の力が誇示出来ると思うんだけどね」

 賢吾もイルダーも、それから作業を終えて集まった他の3人も騎士団の行動理由に疑問を覚えるばかりだ。

「うーん、やっぱり考えても分からないな。とりあえず次はランディードの王城に向かって、セバクターとあの使い魔の2人と合流しよう。向こうも何か収穫があるかも知れないからな」

「その方が良いわね」

 他の2つの魔導砲の動きも気になるが、もう1つのチームの動きもかなり気になる。

 村人達に別れを告げた一行は、まずエンヴィルークにガルレリッヒ村から離れた森の中の広場で変身して貰い、そのランディード王国の王城へと急いで向かう事にした。

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