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247.グレネード

 波止場での戦いは賢吾も奮戦していたものの、その80パーセントはワイバーン3匹とこの世界の人間3人の活躍で終わった。

 オールでは攻撃力に欠けてしまうのもあり、最終的には自分以外の3人がそれぞれの武器とワイバーンを使って騎士団員達を蹴散らしてくれた事で決着がついたものの、まだこの場所から退散する訳には行かないのだ。

「さて、後はあれだけだな……」

 死体となって転がっている周りの騎士団員の様子をぐるりと見渡した賢吾は、他の3人と一緒に大きな建造物を見上げる。

 空を飛んでいた自分達に対して、あの魔力の塊である砲撃をかまして来た元凶がこれである。

 今は操作する者も居なくなってしまったので、この波止場の状況と同じく静まり返っている。

 こんな物を放置していたら間違い無く危ないので、何とかして破壊したい所だがどうやって破壊するかが問題である。


「どうやって壊す?」

「ワイバーンでどうにかなるもんじゃないよな」

 賢吾とエルマンが思い悩んでいる横で、エリアスが自分の腰に吊っている杖を手に取った。

「なら、こう言う時の為にこれを使わせて貰うとしよう」

「あ……」

 そうか、それがあったかと賢吾とエルマンは顔を見合わせて頷いた。

 エリアスがそんな2人の前で杖を掲げると、赤い光線が漏れ出して大きなシルエットを形作って行く。

「今の戦いの中でも最初からこれを使えば良かったんじゃないのか?」

 そのシルエットがアディラードの姿に変化した所でポツリと賢吾が呟いたが、エリアスは彼を呆れた目で見つめる。

「無理だね。最初は囲まれていたからこれを出そうとする前にやられるのがオチだし、さっきの戦いは乱戦だったからこれを出す余裕も無かったんだよ」


 さっきの戦いを振り返ったエリアスは、アディラードを出す暇は無かったと賢吾に告げてからそのアディラードに魔導砲の破壊を命じる。

 主の命を受けた召喚獣の紅蓮の炎が炸裂し、瞬く間にその大きくて黒いボディの魔導砲が炎に包まれて燃え盛る。

「これでまず1つ目は終わりか……」

「ああ。それじゃ次は2つ目の魔導砲に向かってそこも破壊しなきゃ……って、あれ?」

 そう言えば1人足りないじゃないか、と賢吾が気が付いた。

「どうした?」

「美智子は?」


 問い掛けて来たエリアスに対して問い返す形になってしまったが、賢吾の質問で他の3人もハッとした顔つきになる。

「あれっ、そう言えばあの女の姿が見えねえな? イルダーは知ってるか?」

「いや……僕は戦うのに必死だったから見失っちゃったよ。エリアスは?」

「俺も同じだ。その様子じゃエルマンも賢吾も知らないみたいだな」

「と、とにかくこの波止場の何処かに居るかも知れないから探すのを手伝ってくれないか?」

「了解」

 賢吾の捜索要請にエリアスを始めとしたこの世界の住人達が頷き、そのエリアスがワイバーンで上空からの捜索、残りの3人は地上で捜索をする事に決定した。


 しかし、噂をすれば影が差すとは良く言ったもので……。

「あっ、あれ!!」

 何かに気が付いたイルダーが指差す方向に他の3人が一斉に目を向ければ、そこには大きく右手を振りながら走って来る黒髪に緑のTシャツと赤いスカートの格好の女の姿があった。

「おーい!! 賢ちゃーん、みんなー!! 無事ぃー!?」

「み、美智子!!」

「あっ、無事だった……」

 探す手間が省けたのと、無事で良かったと言う気持ちが交じり合って男達の顔に安堵の表情が浮かぶ。


「あの女は私が仕留めたからもう大丈夫よ」

「えっ、クラリッサを?」

「そうよ。あっちにある倉庫の中で息絶えたわ。私だってやる時はやるんだから!!」

 クラリッサを倒して決着が着いた、と報告するその美智子の左手には何かが握られていた。

「あれ、その左手の奴は何だ?」

「ああこれ? そのクラリッサのそばに落ちていたのよ」

 握っていた手を開いて男達4人に見せる美智子。見た目としてはキュウリみたいに細長く、それでいて力強く少し反り返っている奇妙なシルエットの長さ20cm位の固形物。

 すると、それを見て真っ先に反応したのがエルマンだった。

「おいおい、それって手榴弾しゅりゅうだんじゃねえか?」

「手榴弾っ!?」

「えっ、わわわ……ちょっ!!」


 とんでもない物を手に入れたと知った美智子は慌てて、手榴弾を手から落としてしまった。

 それを寸での所でスライディングキャッチした賢吾が、ふーっと冷や汗を拭いつつ立ち上がる。

「危ない危ない……おい、取り扱いには気をつけろ!!」

「ご、ごめん……でも手榴弾ってこの世界にもあるのね」

 まさか異世界に来てまで地球と同じ様な兵器に出会えるとは思いもしていなかった賢吾と美智子だが、一体何故こんな物をクラリッサが持っていたのだろうか?

 その疑問を賢吾が口に出せば、所属していたシンベリ盗賊団で手榴弾の取り扱いの経験があると言うエルマンが解説する。

「ああ、手榴弾は騎士団でも持っている奴が少ないんだ。その昔、俺達に襲い掛かって来た騎士団員の部隊長が持っていたのを奪った位で、一般兵は持たせて貰えねーんじゃなかったかな。かなり威力があるから取り扱いにも注意が必要らしくて、てっぺんに着いているボタンを押せば約10秒で爆発するってんだ。俺達は奪ったそれで岩の洞窟を爆破して逃げた事があったが、簡単に岩に大穴が空きやがったんだよ」

「じゃあ、人間なんて簡単に粉々になりそうだな」

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