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246.キャットファイト

 走り出した女2人は魔導砲の方にある波止場の倉庫に辿り着いた。

 クラリッサも美智子が追って来ているのに気が付いたので、まずは実力差が明らかにある彼女から殺そうとさっきは断ったタイマン勝負に持ち込む作戦に出たのだ。

 そこはなかなか広い倉庫で、中には至る所にブロックの欠片や賢吾が振り回していた様なオール等の物が散乱している。

 ガラスも割れているし、確かに長い事使われていないままで放置されているのだろう。

 その倉庫の中で向き合った2人の内、まずは美智子が口を開いた。

「最初から私達を騙してたの? レメディオスの計画に加担していたのを私達に隠していたの?」

 自分と向き合ったクラリッサに、美智子は当然の疑問を投げ掛ける。

「……ええ、そうよ」

 ある程度予想はしていたが、そのクラリッサの返答に美智子は言葉を失う。

 元の世界に帰れる様に自分達に協力する、とまで言ってくれたこの世界の人間が敵として目の前に居るのだから。

「全部嘘だったの? 私達を元の世界に帰してくれる手伝いをしてくれるとか、全部!!」


 だが、その問いに関してはクラリッサは首を横に振った。

「それは違うわ」

「じゃあ何処から何処までが嘘で、何処から何処までが本当なの?」

「まず手伝いをするって言ったのは本当。でもシルヴェン王国の王城や周辺諸国を魔導砲で砲撃したり、魔物を培養するって言うレメディオスの計画に加担していたのを隠していたのは本当。あのウルリーカとか言う女とも私達は裏で繋がっていたから、貴方達の味方って言うのは嘘ね」

 そう言うクラリッサだが、美智子にはまだ気になる事が。

「でも変ね」

「何が?」

「ただ単に騎士団員だからって言う理由で、レメディオスの計画に加担なんかするかなーって思って。もっと何か別の理由があったりするんじゃないの?」


 女の勘で何か怪しいと感じた美智子が聞いたその瞬間、クラリッサの顔が曇った。

「……私とロルフは元々あのレメディオスとは幼馴染なのよ。だから……だからこのシルヴェン王国に故郷のランディード王国を滅ぼされたの。だからそれの復讐よ」

「幼馴染か……」

「そうよ。貴方とあの賢吾って人の関係と一緒。だけどここまで来たらもう計画の進行に邪魔になる存在でしか無いわ。あの時……城下町で何としても貴方達を殺しておくべきだったわね」

 目つきが一気に鋭くなったクラリッサは、自分の後ろに背負っている大斧を取り出して構える。

「さよなら、異世界の人。貴方はここで死ぬのよ」

 だがクラリッサに宣言されても、美智子は怯む所か拳を構えて口を開く。

「死ぬ? それはごめんだわね。死ぬのは私じゃなくて貴方かもしれないわよ?」


 そう美智子に挑発されてクラリッサは一気に向かって来る。

 美智子は美智子で、今まで習って来た事を思い出しつつ攻撃を受け流そうと思ったのだが、クラリッサは何とダッシュからいきなり飛び蹴りをかまして来た。

「うあっ!?」

 大斧の重さもプラスされて重いキックを食らい後ろに転がる美智子だが、そんな美智子の右手にブロックの大き目な欠片が当たった。

 それをクラリッサにばれない様に掴んで立ち上がりつつ、続けて斧を振って来たクラリッサの側頭部を先制攻撃で欠片で思いっ切り殴打。

「がへっ!!」

 その衝撃でクラリッサは倒れ込むも、素早く受け身を取って起き上がる。

 美智子は彼女が起き上がって来た所で欠片を投げつけたが、それは間一髪で避けられてしまった。


 続けて得意な自分の大斧を軽快に振り回して来るクラリッサに美智子は対処し切れず、下段回し蹴りで足を払われる。

「きゃっ!!」

 倒れ込んだ美智子にクラリッサが斧を振り上げ、死の大斧が美智子の身体に影として映った。

「ぐ……っ!」

 死にたくない一心で美智子も力を振り絞って、クラリッサの腹を振り上げた両足で蹴り飛ばして美智子は立ち上がる。

「ぐえっ!」

「くっ……」

 背中から転がったクラリッサと美智子の2人はほぼ同時に立ち上がり、美智子は気を引き締めてクラリッサを見据える。


 突き出されるクラリッサの斧を横に避けつつ、右のミドルキックを上手く合わせて弾き飛ばす。

「うっ!?」

 まさかの展開に動きが一瞬止まって隙を作ったクラリッサの右腕を取って、彼女の腹に美智子は右の膝蹴り。

 そして彼女が怯んで前屈みになった所で、再び繰り出された美智子の右ミドルキックがクラリッサの顔面に炸裂した。

「ぐうえっ!?」

 またクラリッサは背中から倒れ込むが、美智子は立ったままなので何か武器になりそうな物は無いかと辺りを見渡す。


 すると割れたまま放置されている窓ガラスの下にそのガラスの破片を発見した美智子は、一瞬で勝負を決める事に。

(行くわよ!)

 素早くガラスを床から拾い上げ、クラリッサが起き上がって来る前に防具で覆われていない彼女の股間を踏みつけた。

「ぐっ!?」

 男女関係無く急所の股間に衝撃を食らい、悶絶するクラリッサに覆い被さる形でその首筋にガラスの破片を突き立てる。

「うぐっ……!?」

 更にガラスの破片を握ったまま横に手を動かして喉を切り裂き、クラリッサは息絶えてバトルは続行不可能。

 この時点で美智子の勝利となった。

「それじゃ、私はこれで……アディオス!!」

 息絶えたクラリッサにそう言い残し、生きるか死ぬかのキャットファイトを制した美智子は他のメンバーと合流するべく倉庫を出て行こうとする。

 だが、その時クラリッサの死体のそばに妙な物が転がっているのに気が付いた。

「あら、何かしらこれ……?」

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