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244.狙撃

 しかし、村長の息子のイルダーだけは違った。

「ここの対応はエンヴィルーク様に任せます」

「イルダー!?」

「ど、どうしてよ?」

「確かに僕達の中には回復魔術を使える人間は何人か居るけど、あの王都の地下で魔導砲が大きいんだったら破壊するのにもそれなりに人員が必要だ。それに何より神のエンヴィルーク様に復興を手伝って頂けるなら、こちらとしては感謝してもしきれませんよ」

 イルダーのそのセリフが決め手となって、エンヴィルークを除いた5人で1つ目の魔導砲に向かう事になった。

「本当に良かったのかよ?」

「エンヴィルークに手伝って貰って破壊して貰って、さっさと戻って来れば良かったんじゃないの?」

 賢吾と美智子がワイバーンに向かう途中でまだブーブー言うものの、イルダーが「ここまで来ちゃったんだから仕方無いよ」と言った事により結局5人はそのまま3匹のワイバーンで魔導砲の場所へと向かう。


 その途中で、美智子がエンヴィルークと共に遭遇したあの大型の魔物についてこの世界の住人の3人に話を聞いてみる。

「ねえ、あの大きな首が2つある魔物ってそんなにやばい奴なの?」

 彼が神と言う事もあるのだろうが、それにしても余りにも呆気無くエンヴィルークによって倒されてしまった魔物を目の前で見ているので、イマイチその強さがピンと来ない美智子。

 しかし、彼等3人は異口同音で「あいつは強い」と言う。

「あれはBランクの魔物だからかなり強いよ」

「Bランク?」

「そう。この世界の魔物のクラス分けってのを説明するけど、下からEクラス、Dクラス、Cクラス、Bクラス、そして1番上のクラスがAクラス。クラス分けの目安になるのは、魔物を殺さずに捕まえた時にギルドで研究されたデータが世界各国のギルドで共有されるんだ。体力値や魔力値、それから素早さだったり、生態として単独行動するのかそれとも群れて行動するかだったりって言うのも全てひっくるめて決められるんだ。その他の要素だと凶暴性とかも考えられるんだよ」


 ランクの説明をするイルダーに続いて、実際にあの魔物を相手にした事もあると言うエルマンから説明がされた。

「あれはギローヴァスって言う名前の魔物だ。クラスはBクラス。元々は単独で行動する魔物なんだけど、あんたが言う限りでは攻撃的な性格だったらしいね?」

「ええ。明らかに私とエンヴィルークを殺しに来てた」

「だったらますます妙だぜ。基本的にギローヴァスって言うのは大人しい性格の魔物なんだよ。けど、それが本当だったら騎士団の手先として動かされたんだろーな」


 それを聞いていた賢吾が騎士団関係で1つの事を思い出した。

「もしかして、魔物の培養がどうのこうのって言ってたのと関係があるのか……?」

 今まで自分達が行動して来ていた中で見つけた、騎士団の計画の内容からその魔物の培養が今回のギローヴァスの行動の違いに何か関係があるのでは無いか、と勘ではあるものの賢吾は思ってしまった。

 エリアスはその賢吾の話に同調する。

「培養ね……確かに騎士団と魔術都市イズラルザが繋がっているんだったらそう言った大きな魔物の培養も出来なくも無いだろうね。けどその魔物の培養はさておいて、何で騎士団があの村を襲ったんだろうね?」

 そう、さっきも考えていたのだが事前にあの村に来る事を知っていなければ、騎士団があの大きなギローヴァスを伴って連れて来る事は出来ないとしか思えない。


 その理由が結局分からずじまいのまま、エリアスのワイバーンに賢吾が乗ってイルダーが村で調達したワイバーンにイルダーと美智子が乗り込み、エルマンのワイバーンと一緒に10分掛からずに魔導砲がある場所に辿り着いた。

 しかし、砲台の置いてある使われていない波止場には何故か既に既に先客が居た。

「……ん?」

 賢吾を乗せたワイバーンで着陸しようとしていたエリアスが、波止場に見える大量の人影に最初に気が付いてイルダーのワイバーンに並んで叫ぶ。

「おい、何か大量の人影が見えるぞ!」

「え……あ、本当だ!!」


 魔導砲に向かっているのだし、もしかしたら騎士団がここに……と考えた矢先、後ろを飛んでいたエルマンの顔の横を風が掠めた。

「うおっ!?」

 謎の風に驚いてバランスを崩すエルマンだが、頬からツー……と生暖かいものが流れるのを感じて自分の頬が切れた事を知った。

「な、何だぁ!?」

「おい、どうしたんだ?」

「え、いや……今何か俺の横を……」

 エリアスに問われたエルマンが状況を説明しようとするが、それよりも更に大きな出来事がこの後の彼等に襲い掛かる。


 最初に「それ」に気が付いたのは波止場に視線を向けていたイルダーだった。

「えっ、な、何だあれは!?」

「や、やばい掴まれ!!」

 いきなりクイックに空中で方向転換するワイバーン3匹に、その内の2匹の背中に同乗していた賢吾と美智子もそれぞれパイロットの身体に両手を回してしがみついた。

「ぐぅ……っ!?」

「きゃあああああっ!?」

 急激な横G(外側へと発生する慣性力)に身体が引っ張られながらも、落ちずに持ち堪える2人。

 次の瞬間、そんな2人が乗っているワイバーンの横を白い巨大な光の線が走り抜けて空を明るく照らした。

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