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243.1つ目の魔導砲

「それじゃまずは……ここから近い魔導砲って何処にあるんだ?」

「ええと、魔導砲は2か所ね。近い方は……イズラルザの方かしらね」

 が、エルマンに問われた美智子の回答に対して疑問の声を上げたのが賢吾だった。

「あれ、魔導砲って2か所じゃなかったっけ?」

「え、そうだったっけ?」

「拠点が3か所だって言うのとゴチャゴチャになっていない? 前に読んだ魔導砲の場所を記している資料からすると、判明している魔導砲の場所は今の所イズラルザのそばにあるあの砦の中と、それから王都の地下のあそこだけよ?」

 その資料を読んだ時の話を自分のセリフを思い出して、今の賢吾が言っていた事と間違いは無いかを自分の記憶を頼りに確認する美智子。


『えーと……魔術都市イズラルザの地下にある魔力の供給プラントから魔力を極秘裏にこの砦に引っ張り、砦に装着されている魔導砲を起動させてまずは魔術都市イズラルザを破壊する。それからこの砦を破壊して証拠を全て消し去り、王都の地下で製造中のもう1つの魔導砲を起動させて王城の中庭から砲撃し、一気に王城を内部から近衛騎士団、そして王族もろとも破壊し尽くす……やっている事がムチャクチャね』


 資料を声に出して読んだ記憶が残っている美智子は、記憶があやふやになっている賢吾に訂正した情報を伝える。

「ま、まぁ……2か所ならそれで良い。どっちも壊してしまえばそれで終わりだからな」

 だったら早速その魔導砲を破壊しに向かおうと言う賢吾だったが、衝撃のセリフが次の瞬間エンヴィルークの口から聞こえて来た。

『いや、全部で3つで合っているぞ』

「へ?」

『その3つ目はこの村のすぐ近くにある。調べていなかったのか?』

「はぁ?」


 何で今までその事を黙っていたんだ、と思わず詰め寄る賢吾。

 エンヴィルークはそれに対して『知っていると思ってたんだが……』と呆れた声になった。

「いやいや知らないわよ。そんなのあの報告書に書いて無かったし」

『そうなのか? じゃあ今伝えておくが、3つ目の魔導砲はこの近くの鉱山に続く道から逸れた場所にある森の中に造られている』

「えっ、あの森の中に?」

 この村の周辺が自分の地元であるイルダーは、そんな魔導砲を造る様な人間がこの辺りで出入りしてたっけ……? と自分の記憶を辿ってみるが心当たりがまるでゼロだ。


 その思い悩むイルダーを横目で見ていたエルマンが、そう言えば……と思い出した事があった。

「あれ、そう言えばさ……ここって魔物の討伐に騎士団が来ていたとかは無いか?」

「ん……何回かあるにはあるね。それもかなり大勢だったけど、基本的には僕達が討伐しているしこの近くの鉱山で鉱物を採掘する作業員位しか後は見なかったよ」

「多分それね」

「ああ。この森には騎士団の連中がたまに出入りしてるってのが盗賊団のウルリーカから全団員に通達があったな。でも俺はこっちの担当じゃなかったから、話でしか聞いた事は無えんだけど」

 鉱山にはレメディオス達と一緒に入った事はあるものの、森の中の活動については聞いた事はあった様な無かった様な曖昧な記憶しか無い。


「もしその騎士団が来たって言う時に、表向きは魔物退治って言う名目で魔物を退治した後に魔導砲の組み立てをしていたんだったら辻褄は合うわね」

「ああ、俺もそう思う。その森の脇道の先の話は初めて聞くけどそっちには何があるんだ、イルダー?」

 美智子の予想に同意したエリアスがイルダーに問うが、そのイルダーは難しい顔つきをしている。

「その脇道の先には長い洞窟がある。洞窟は上り坂になっていて、その先は波止場になっているんだ。ただし、洞窟も波止場ももう使われていないんだけど」

「波止場か……何で使われなくなったんだ?」

「昔はそっちの方で釣りをする人とか、船が良くやって来てて人気の場所だったんだけど、波止場が老朽化してそっちに回す予算が無くなって危険だからってのと、波止場に続く森の脇道で魔物に襲われたキャラバンが壊滅して全員死亡って言う事件があってから逸れも危険だって事で使われなくなったんだ。その代わり別の場所に新しく波止場を造るって話になったんだよ」


「じゃあそこに魔導砲を造るって言うのも、騎士団が魔物討伐のついでにこっそり材料を運び込めば全然出来そうだよな」

 エルマンの言葉に他の全員も同意し、村の被害状況の確認を簡単にしてからその波止場に向かう事にする。

 ただし時間が無いので洞窟を通る事はせず、ワイバーンで西側から回り込む作戦に出る。

 しかし、もう1つの問題がまだこの村にはあった。

「でも……この村が被害を受けちゃった訳だし、被害状況の確認をしないと」

 イルダーが所々でまだ煙が上がっている自分の村の惨状を見て、出来ればそっちに行きたいと言う口調になる。


 そこにこんな提案をしたのが、人間の姿のエンヴィルークだった。

『じゃあ、俺がここの状況を確認しよう』

「良いのか?」

『ああ。俺はアンフェレイア程じゃないけど回復魔術も使えるし、魔力切れの心配もしなくて良い位にたっぷり蓄えている。それに俺はこれ以上大っぴらに行動は出来ないし、復興の手伝いをしていた方が良いだろうと思ってな』

「えー……手伝ってくれよ」

 神なので大っぴらに行動出来ないのは百歩譲って分かるにしても、出来ればその魔術で魔導砲を破壊するのを手伝って欲しいのが1名を除いた一行の本音だった。

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