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242.神の力

 しかし、そんな美智子とエンヴィルークの前にズシン……ズシン……と明らかに異質な音をさせながら近づいて来る1匹の生物が居た。

 近づくこの世界の生物に気が付いた美智子は足を止めてポカンとした表情で斜め上を見上げ、

「えっ……な、何よこの化け物!?」

『下がれ。これは俺が相手をする!!』

 見た目的には狼の顔を持っているものの、その四足歩行の身体は狼では無く虎の様なヒョウの様な何とも言えないシルエットと模様をしている。

 体格はかなり屈強であり、高さからすると自分が大体3人分位縦に重なってやっと背が届くか届かないかと言うレベルであるので明らかな大型生物である。

 そして何よりも異常なシルエットは、その魔獣の首から先が2つ存在している事だった。

 ファンタジー作品等ではこうした生物が居る事を美智子も知っているが、あくまでも創作物の中だけなので現実にこうして直面するとどうコメントして良いか分からない。


 その横で、エプロン姿の中年の男に化けているエンヴィルークは右手に炎を宿している。

『距離を取っていろ。一撃で片づける』

「え……」

 何をするつもりなのか分からないが、素手では到底敵わないと思ったのか繰り出すのは恐らく魔術の類であるのは何となく美智子も分かったので、言われた通り距離を取る。

 それに気が付いた大きな魔物は、美智子を追い掛けようと獰猛な顔つきの2つの首を伸ばしながら駆け出した。

『行かせる訳が無いだろうが』

 エンヴィルークがそう言いながら魔物に向かって右手を大きく横に薙ぎ払う形で振ると、一瞬で魔物の身体全体がまるで火炙りの刑に処された魔女の如く燃え上がった。


「グギャアアアアアアアアアッ!!」

 炎に焼かれる苦しみに美智子が想像を絶する程の雄叫びを上げられ、彼女は思わず耳を塞ぐ。

 だが、恐ろしいとは分かっていても目を閉じる事は出来なかった。

「や、焼けてる……」

 何故かそんな一言が出てしまったが、これが精一杯のコメントだったのかも知れない。

 呆然としながらもエンヴィルークの魔術によって身体を焼き尽くされ、一瞬の内に巨大生物は地面へと横倒しになって息絶えた。

 神の力を身を持って思い知ると同時に、魔物は死んだのだ……。

『ケガは無いか?』

「う、うん。私は大丈夫」

『なら良い。それじゃ出入り口の安全は確保したから、今度は村人の避難を手伝いに向かおう』

「そうね」

 まだやるべき事は沢山残っているし、戦いだって終わっていないので自分に出来る事をするべく美智子はエンヴィルークと一緒に村人達を助けに向かった。


「はぁ、はぁ、はぁ……何とか、勝ったな……」

「ああ。でもこうやって騎士団がやって来たってなると俺達の情報が何処かでリークされてるんじゃないかって思ってしまうぞ」

 その後、残っていた騎士団員を全滅させたエリアスも賢吾も息を切らせながらも、何とか騎士団の団員達に勝利したので一安心。

 しかし、賢吾が口走った「リーク」の一言にイルダーとエルマンが反応した。

「リークって……?」

「おい、それは俺達の中に裏切り者が居るって事かよ!?」

 疲れている筈なのに一気にヒートアップしたエルマンは、まだ息を整え切れていない賢吾に詰め寄って胸倉を掴み上げる。

「ちょ、ちょっと待て!! 落ち着いて話そう!!」

「うるせぇ、このまま喋れよ!!」

「お……俺達がこうしてこの村に来たのに余りにも騎士団の出て来るタイミングが丁度良過ぎじゃないのかと思ってな。偶然なら良いけどもし誰かが情報をリークしていたらこうして村を襲わせる事も可能だろう?」

「ざっけんな!!」


 エルマンは力任せに賢吾を両手で突き飛ばす。

 戦って疲労していた賢吾は踏ん張り切れずに、そのままたたらを踏んで尻もちをついてしまった。

「け、賢ちゃん……まぁ確かに貴方も疑い過ぎだけど、そこまでしなくても。あくまで可能性の1つでしょ?」

「ざけんな!! 俺達はずっと一緒に居ただろーが。騎士団に連絡するタイミングなんか無えよ!!」

 しかし賢吾にも言い分はあるらしい。

「違う違う!! 何も俺達の中に裏切り者が居るのが確定したとは言ってないだろ? 俺が1番怪しいと思っているのはあのセバクターって男だ」

「セバクター……ああ、エスヴァリーク帝国の」


 ランディード王国の王城から逃げ出す時に知り合い、そして流れで自分達のパーティに加わったあの男。

 だが、その前からレメディオス達と繋がっていたら仲間になったと見せ掛けて色々と情報や動向を流す事も可能だ。

「そうだよ。だから俺はあの男が怪しいって思ってる。トレーニングの時なんて待ち伏せしていた時に幾らでも情報を流す事も出来るだろうしな」

「それは……そうだけど」

 その場のメンバー全員がシーンと静まり返るが、その静まり返った空気を破ったのは美智子だった。

「まぁまぁ落ち着いてよ。今ここで幾ら言い合っても答えが出そうに無いから、まずはとにかく魔導砲を壊しに行くのが先決でしょ?」

「確かに彼女の言う通りだと僕も思う。それに、他の所に向かったアンフェレイア様と3人の様子も気になるしね」

 イルダーも彼女に同意し、改めて魔導砲の破壊を一行は決意する。

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