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237.最終関門

 洞窟の出口付近でそのラブロマンスシーンを繰り広げた2人は、審判役のアンフェレイアを引き連れて再び広場に向かう。

「なぁ、山頂ってまだ上なのか?」

『いいえ、この広場の先がもう山頂よ』

「あらそうなの? それじゃさっさと行きましょう。それでこのトレーニングも終わりでしょ」

 アンフェレイアの言葉を信じて思わず早足になる2人だが、このトレーニングの中で未だに登場していない人物がそうはさせないとばかりに襲撃を仕掛けて来たのはこのすぐ後だった。

「……おわっ!?」

「きゃっ!?」

 広場の土の地面に、突然何処からか飛んで来た矢が突き刺さって2人を足止めする。

 ギリギリでこの2人の足元に弓を使って矢を射る事が出来る……と言うよりも弓使いの人物は今まで見て来た中では数えられる程しか居ないのを知っている賢吾と美智子は、その人物を探して辺りをキョロキョロと見渡す。


 と、その時だった。

「ここまで来られるとは正直意外だったよ」

「お?」

 広場の左の方には小さな林があるのだが、その中からパチパチと拍手と声が聞こえる。

 声が聞こえて来た方を2人が見ると、そこには予想通りの人物が顔の横でキザっぽく薄い笑みを浮かべながら歩いて来ていた。

「そうか、そう言えばあんたが残っていたな……エリアス」

「じゃあ、もう残っているのは彼1人って訳ね」

 賢吾のセリフを聞いた美智子も、今の自分達の勢力と敵チームの勢力を頭の中で比較して頷いた。


「君達の実力は大体分かった。君達がここに居るって事は、エルマンもセバクターもユグレスもシェロフもイルダーもやられてしまったって事なんだな。それも、素手しか対抗手段を持っていない筈の君達に」

「私達地球人を見くびって貰っちゃ困るわね。戦いは私達には無縁だったけど、この世界に来てから色々と経験しているんだから今となっては貴方達敵チームにも引けを取らない位になっているって今では言えるわね」

 そう胸を張って言う美智子だが、その中の約70パーセントは虚勢でもある。

 賢ちゃんはまだしも自分はまだまだ実力も何も無いんだから……と、このトレーニングの最初に魔物の集団を相手に生き残って来られただけでも奇跡みたいなものだと思っている美智子。


 そして、その虚勢を分かっているのはエリアスもそうだった。

「強がっているけど、俺だってそれなりの時間君達と一緒に居るんだから大体実力がどれ位あるのかは分かるよ。賢吾の方はそれなりにやるみたいだけど、美智子の方はハッキリ言ってまだまだだね。それでもまだ俺達にここで挑むつもりかい?」

「あ、当たり前じゃない!」

 虚勢を張っている事がすぐにバレた美智子が、若干強い口調でそう言い返す。

 しかし、賢吾は今のセリフの中で違和感を覚えた部分があった。

「おいおいちょっと待て。今、俺「達」って言わなかったか?」

 ここに居るのはエリアス1人だけの筈なのに、複数形で自分を呼ぶのはおかしくないかと疑問を持つ賢吾にエリアスは何処か満足そうに頷く。

「へぇ……そこに気が付いたか。それじゃもう隠す必要も無いね」


 そう言い、彼は腰に吊った金属製の細長いステッキに手を伸ばした。

(あれ、前はあんなの持ってたっけ?)

 英国の紳士が持っている様なイメージのそのステッキにはびっしりと装飾が施されており、一見すると武器には見えない。

 しかし、「エリアスがステッキを持っている」と言う事に賢吾は既視感を覚えた。

 それは美智子も同様らしい。

「ねえ賢ちゃん、何かこんな光景を前に見た事がある気がするんだけど……」

「ああ、俺も同意見だよ」

 彼が何か良からぬ事を企んでいるのは間違い無いと身構える賢吾と美智子の目の前で、天高くそのステッキを掲げるエリアス。


 すると次の瞬間、ステッキの先端に赤い光が宿り始める。

「な、何だ?」

「ま、まさか……!!」

 先にその光景を思い出したのは美智子らしく、賢吾は未だに思い出せない。

 その賢吾にも分かる様に、ステッキの先から溢れ出して地面に着地してから段々と大きなシルエットへと形作られて行く赤い光。

「あ!!」

「いでよ、アディラード!!」

 そして光のシルエットが完成した時には、かなり久し振りに見る生物(?)の姿がそこに出現していた。

 それは紛れも無く賢吾が最初にこの世界で目にしたものであり、あの屋外で美智子と一緒に戦った経験もある巨大な召喚獣のアディラードそのものだった。


 しかし、召喚獣のアディラードを収納しておく為の杖は既にあの場所で破壊した筈だと賢吾は思い出す。

「何でだよ……あいつは確かに倒した筈だ。生きている筈が無いのに!?」

 まるで因縁のキャラが死なずに復活して来た時の様なセリフをそのまま口に出す賢吾に、律儀にエリアスが答えてみせる。

「またエンヴィルーク様からこれを授かったのさ。騎士団に対抗する為にもう1度生み出したから、大事に使えってね」

 そう言って一息置いたエリアスは、今度は賢吾への悔しさを吐き出し始める。

「それに俺も、このまま君に負けっ放しじゃ終われない。最初のあの島、2度目のアディラードを消滅させられた時、3回目は君が逃げ出した後にそれぞれ負けた。そして今……ここで君と勝負して今度こそ俺が勝ち、決着を着けさせて貰う!!」

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