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232.第3の関門

 美智子を追いかけて暗い山道を走り抜ける賢吾だったが、ここでこの内情を知っているであろう存在を思い出して声をかけた。

「……そうだ、あんたなら何か知っているんじゃないのか!? これは一体どう言う事なんだよ!?」

 ピタッと足を止めて方向転換した賢吾は、後ろから着いて来ている審判役のアンフェレイアに詰め寄る。

 しかし、アンフェレイアは驚くほど冷静な表情と口調で賢吾を見据える。

『まだまだね、貴方も』

「何ぃ!?」

 何処か軽蔑した様な口調でそう言うアンフェレイアに思わず掴み掛ってしまう賢吾だが、今の彼女は人間の姿をしているとは言え元々はドラゴン、それもこの世界の神である以上賢吾はあっさりとその手をもぎ離されてしまう。


『これはこの山の中で行うトレーニングなのよ。だから基本的にこの山から出る事は無いから安心しなさい』

「だ、だけどよぉ……!?」

『これもトレーニングの一環なのよ。こうした状況でいかに冷静に、そして的確に行動を出来るかって事。まだ貴方は若いからすぐにカッとなる事もあるかも知れないけど、ここは落ち着かなきゃ』

 恐ろしく穏やかな口調でそう言うアンフェレイアに、賢吾も段々怒りが収まって来た。

「そっ……それはそうだけどさ!! 美智子は無事って話で良いんだな!?」

『そうよ。審判役の私がちゃんと保証するわ』

「本当だな!? 本当に信じて良いんだな!?」

『だからそう言ってるじゃない。それよりも今はここでグズグズしている場合じゃないでしょ? これがトレーニングじゃなかったらどんどんあの美智子ちゃんとの距離が遠ざかるだけよ?』


 そう疑問形で言われて、賢吾は少し荒々しく踵を返した。

「くっ……分かったよ。だがもし美智子に何かあったらあんたも、それからエンヴィルークを始めとしたこのトレーニングに参加しているメンバーで美智子を除いた全員、ただじゃおかないからそれだけは覚えておけよ……!!」

 ギリギリと拳を握って震わせ、絶対に美智子に追いついてやると意気込んで賢吾は険しい山道を先に進む。

 既に2つのバトルを終えているだけで無く、アップダウンの激しい山道を進むだけでもかなり体力を消耗する上に暗闇で何処から敵が襲い掛かって来るか分からないので気力も精神力も消耗する。

 だが、美智子が攫われてしまった展開でそんな事を気にする余裕が一気に吹き飛んだ賢吾は足を動かしてとにかく前に前に進んで行く。


 その険しい岩場を超えた先には、登山客に対してのご褒美的なものとして星空が良く見える展望台が存在していた。

 星空を見る為に立ち止まりたい気持ちも賢吾の中に少しだけ生まれたが、今のこの状況で立ち止まっている余裕なんてある訳が無いのであっさりとその展望台をスルー。

 展望台前のヘアピンカーブ状になっている道をぐるりと回って、少しだけ下り坂になっているので一気に加速する賢吾の目の前に広がった光景は、闇に覆われた山の中とは思えない程に明るい光を発している鉱物が沢山生えている洞窟であった。

「何だ、ここは……」

 急いでいた筈の賢吾も思わず足を止め、その光景に見とれてしまう程に幻想的な光景。

 ピンク、紫、エメラルドグリーン、淡いブルー、ライトグリーン等の鉱物が岩壁に埋め込まれていて発光しているその光景は、まるで何時か写真で見た日本国内の何処かの鍾乳洞の様なものだった。


 この洞窟に興味が湧いた賢吾は、トレーニング中ではあるもののアンフェレイアに思わず質問をしてみる。

「ここって何でこんなに明るいんだ?」

『ここは鉱物が良く採れる場所なんだけど、今まで進んで来た通りなかなか道が険しいから余り採集がされていないのよ。だからこうやって光を発する沢山の鉱物が無事なまま残っていて、それが明かり代わりになるのよ』

「そうなのか。でも洞窟自体は所々朽ち果てているな」

『私達がこの世界を創って長いから、仕方の無い部分もあるわよ』

 この洞窟も結構広そうなので、とにかく先に進むルートを見つけなければならないのが問題だ。

「何処かに出口がある筈だ。頑張って探してみよう」

 賢吾がそう言って、何時でも戦闘態勢に移れる様にしながら足を進めて行く。

 しかしその途中で気が付いた事があった。

(やけに静かだ……。人の気配はしないが、それでも待ち伏せとかは十分考えられる)

 とにかく先に進めば何か分かるかも知れないので、洞窟の中を迷わない様に願いながら進む賢吾。


 だが、賢吾はこの後に自分を待ち受ける驚愕の事実をその目に見る事になるのであった。

 やはりこの洞窟の中にも待ち伏せをしている敵が居たのだ。

「……ふうん、ここまで来るなんてやるじゃないか」

 そう言いながら目の前の脇道から姿を現したのは、ロングソードを引き抜いて既に戦闘態勢に入っているイルダー・シバエフだった。

「そこを退け!!」

「退けって言われて退く馬鹿は居ないでしょ? 僕も敵として君をここから先に通す訳には行かないんだからさ」

 そう言うイルダーに対して当然賢吾も強行突破をするべく身構えるものの、その後ろからアンフェレイア以外の足音が耳に入ったのでそちらに目を向けてみる。

『……ふっ!!』

「っ!?」

 驚愕の跳躍力で手に持ったバトルアックスを空中から賢吾に叩き付けようとしたシェロフだったが、寸での所で地面を転がってかわされてしまった。

『なかなかの反射神経だな』

「……そうか、あんた等2人がここの関門か」

 しかし自分だってここで引き下がる訳に行かない賢吾は、素早く立ち上がって拳を握って再度身構えた。

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