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222.国家代表

 「成る程な」

 その謎の声が聞こえた方向に一斉にその場の全員が視線を向けると、そこにはここに居る筈の無い人物の姿があった。

 謎の声の人物に良く見覚えがあるのは賢吾、美智子、エリアスの3人。

「えっ……」

「な、何であんたがここに居るのよ!?」

「き、君は何でここまで追い掛けて来られたんだ?」

 身構えながらも動揺する3人に対し、その人物はゆっくりと歩み寄りつつ口を開いた。

「そっちのあんたにやられた後、あそこにあったワイバーンで追い掛けて来た。そして今まで様子を見ていた」

 話は全て聞かせて貰ったぞ、とあのランディード王国の王城から脱出する時に賢吾を引きずり降ろして足止めをして来た、赤髪のエスヴァリーク帝国騎士団員のセバクター・ソディー・ジレイディールが引き締まった表情で呟いた。


 しかし、今までの会話を全て聞かれていたとなればその会話をしていた側にとっては気が気で無いのも事実。

「で? まさか僕達の会話を全て聞いていたからあのレメディオスに伝えるって言うの?」

「もしそうだとしたら俺達もここから黙って返す訳にはいかないな」

 イルダーとエリアスはそれぞれロングソードと弓を構えて身構えるが、セバクターは腰に帯びているロングソードを抜こうとはしない。

 それどころか、一行に対して彼は思わぬ申し出をして来た。

「あんた達と戦う気はない。むしろ俺にも協力させて欲しい」

「は?」

「えっ……そ、それって俺達の仲間になるって事か?」


 何と一行に協力を申し出るセバクターに対して、「こいつは何を言っているんだ」とばかりの唖然とした表情を見せる美智子と確認の意味を込めてそう問う賢吾に、セバクターは相変わらずの引き締まった表情のままで頷いた。

「そうだ」

『協力をする振りをして、あの騎士団長のスパイだったらこちらも容赦はしないぞ』

『ああ。その場合は御前がレメディオスの仲間になるからな』

 ユグレスとシェロフも警告の意味を込めて、この先の答え方次第では容赦はしないと長さの違うバトルアックスをそれぞれ構える。

 それを見てもセバクターは自分の武器であるロングソードを抜こうとはせず、真剣な表情で一行から目を逸らそうとはしない。

(騎士団員ってだけあって度胸も据わっているのかしら)

 こうして出会うのは2度目だが、他国から遠征して来て完全アウェイのこの状況でもこれだけの平静さを保っていられるのは並の度胸の持ち主では無いな、と美智子は心の中でセバクターを評価した。


 そんな評価をされたとは知る由も無いセバクターは、何故自分がいきなり協力する等と言い出したのかその理由を答え始める。

「今の俺はもうあの騎士団長に協力していない。そして、これは俺個人の頼みでは無くエスヴァリーク帝国騎士団員として……エスヴァリーク帝国を代表してこうして協力させて欲しいと頼みに来たんだ」

「エスヴァリーク帝国の代表……?」

 そこまで大袈裟に言う必要があるのだろうかと首を傾げる賢吾の目の前で、その理由を更に述べるセバクター。

「ああ。俺はあの騎士団長に対して違和感を覚えたんだ。俺があんたに負けて逃げられたすぐ後、と言うよりも本当にタッチの差で第3騎士団の団長がやって来た。そして俺にワイバーンの使用許可を出して追い掛ける様に指示を出したんだが、その時に団長が口走った言葉が引っ掛かってな」

「何? その言葉って」

 一体レメディオスがセバクターに何を言って、こうしてセバクターが協力すると申し出る展開になったのかは美智子を始めとして勿論気になる一行。


 それは一言で言えばレメディオスの「うっかりミス」だった。

「あの時……レメディオスと言う騎士団長は確かにこう言った。私の計画をこれ以上邪魔される訳には行かない、とな」

「あっ……」

 反逆者を追い掛けているだけなら口から出て来るのは「計画」では無くて「任務」なのでは無いか? とセバクターが疑問を持ったのがまず最初の引っ掛かりだった。

 その時はその単語に違和感を覚えつつも、自分が打ち負かされてしまったショックもあり何としてでもその悔しさを払拭したい気持ちもあって、セバクターはあの王城に駐留していた移動用のワイバーンを借りて飛び去ったドラゴンを追い掛ける事にした。


 そしてそのドラゴンの姿を視界に捉えるのは、ドラゴン自体が余りスピードを出していなかった事もあって意外と簡単だった。

 とは言えあの自分を打ち負かした男以外にもまだ仲間が居る様だし、ドラゴンが何処に飛んで行くのかが気になったからこそすぐに追いつく事はせずに一定の距離を保って尾行する展開に切り替えるセバクター。

(この方向だと、確か山に向かう筈だが……)

 こんな夜更けに山の中に着陸でもして身を潜めるつもりか? と思っていたセバクターの予想はどうやら当たっていたらしく、ドラゴンを追い掛けて自分もワイバーンで山の中に着地。

 そのまま今度は徒歩で尾行を続け、夜風に乗って聞こえて来る会話と足音で一行を見失わない様にしつつ追い掛けていたセバクターだったが、エンヴィルークとアンフェレイアがドラゴンの姿から人間の姿になったり使い魔が現れたり衝撃的な話が幾つも聞こえて来たりして、なかなか出て行くに出て行けなかったのだと彼は語った。

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