221.協力するの?
この瞬間、長い間の疑問の1つがようやく解決した。
「その生成過程での魔力が原因で、俺達は武器を振るう事が出来なければ防具を使って身を守る事も出来ないって話だったのか?」
『そうなるな。この世界の生物の中に必ず存在している魔力が無いと言う事は、武器と防具から体内に魔力が流れる仕組みになっていてもそれと融合するものが無い。となればさっきの音と光とそして痛みが出る現象の説明として、御前達の身体がその魔力に対して拒否反応を起こしていたって事になるんだろうな』
「拒否反応……」
それを聞いて、美智子は自分達の世界での事例に何が当てはまるかを色々と考えてみる。
「そう言えば私達の世界でも蕎麦とか魚介類のアレルギーで蕁麻疹が出来たり、ハウスダストのせいで体調不良になったり……つまりそう言うアレルギー反応的なものが私達にもこうして起きてしまったのね」
「それだと今までの事も全て納得出来るな。魔力を注入していない物干し竿とか鉄パイプとか、それからこの手作りのノコギリとか美智子のブラックジャックとかが使えた訳だ」
そこまで考えた賢吾はある事を思い出す。
「それじゃあ、それに関連して回復魔術で俺がダメージを受けたのももしかして……」
前に回復魔術を掛けて貰った時も確か自分の身体に物凄い衝撃が来た筈だ、と思い出した賢吾にアンフェレイアが反応した。
『そうね。その推理が正しいとすれば回復魔術も体内に癒しの効果を持っている魔力を流し込む回復魔術も、同じ様に貴方に拒絶反応が出たからダメージを受けた……うん、凄く納得出来るわね』
この常識は地球の非常識であり、地球の常識もこの世界の非常識。
ずっと謎だった武器と防具に魔術関係の現象の事がようやく分かってほっと一安心だが、問題はこれから自分達がどう言う行動を取るかである。
「俺達がやるべき事は騎士団の策略を阻止する事。こうしてここで話している間にもレメディオス率いる第3騎士団が動いているのは間違いないからな」
エリアスがそう言えばイルダーも頷く。
「うん。僕達はこれからエルマンと合流して、それからそっちの使い魔のシェロフさんと一緒に食堂の従業員達と合流して城への襲撃態勢を整える。恐らくあのランディード王国の王城だった場所が奴等の本拠地だから、あそこにもう1度乗り込んで計画の全容を掴まなきゃね」
しかし、それに対して賢吾がストップを掛ける。
「ちょっと待った。それは良いけどあいつ等が待ち伏せしているのにこんな少ない人数で乗り込むのか?」
「でも早めに乗り込んでみないとあいつ等が逃げてしまって動向が分からなくなってしまうだろう? だったらさっさと行動するべきだと僕は思うんだけどね」
言い合いを始めてしまった賢吾とイルダーにエリアスが加勢する。
「いやー、俺は君の言う事に賛成だな。このまま少ない人数で乗り込んでも返り討ちに遭う可能性は高い」
「おいおい、エリアスまでそう言うのかい?」
「でもこのまま乗り込んでもやられるのは目に見えてるけどなあ」
それに対して美智子が口を挟んで来た。
「うーん、でもさ……この使い魔さん達も協力してくれるって言ってるし騎士団員達をいっぺんに相手にしないで少しずつ潰して行けば良いんじゃないかしらね?」
美智子は早く乗り込む事に賛成らしいのだが、話を振られたライオンのシェロフとカラスのユグレスからも意見が出て来る。
『私達も協力はするから、ここは確かにさっさと乗り込まないと色々と間に合わなくなる可能性があるぞ』
『私はシェロフの意見には反対だ。使い魔の私達だって人間や獣人の集団を相手にするのは限度がある。後はエンヴィルーク様とアンフェレイア様にどうして頂くかだ』
ユグレスにそう話を振られた2匹のドラゴンだが、その2匹にも事情があるらしい。
『俺達は表立っての手出しは出来ない』
「え? 何で?」
『私達の存在が余り表に知られると、私達を狙って人間や獣人が狙いに来るのよ。悲しい事だけど、バックアップはするから使い魔の貴方達と人間の貴方達で何とかしてね』
神と呼ばれし存在にもその存在の大きさ故に悩みがあるらしいが、最低限のバックアップはしてくれるとの事なのでその点だけは安心出来る一同。
だが、それでもあの第3騎士団との人数差は如何ともし難い。
そこを考えた時、賢吾がもっともらしい事を言い出した。
「……と言うか、良く考えてみたらこれは第3騎士団が引き起こしている問題なんだろう? だったら俺達だけじゃ無理があるんだし、第1騎士団とか第2騎士団とか、近衛騎士団の団員達にも頼んで素直に協力して貰えば良いんじゃないのか?」
「そ……そうよね。私達だけじゃどうしようも無いわよね?」
「そうだよな。俺達と第3騎士団の団員達が敵対しているって分かったら協力してくれる筈だよ」
「うん、僕もそう思うね」
第3騎士団の悪行の証拠の数々は既にこっちの手にあるんだし、それを持って他の管轄の団員達に直談判しに行けば何とかなるだろうと考える一同だったが、そのムードに水を差す聞き慣れない声のセリフが突然その場に響いた。