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220.調査結果

 その視線を向けられたドラゴン2匹の内、魔術に長けていると言うアンフェレイアが自分の予想を述べる。

『そう言われても……魔力が無いから魔術を使えないって言うのは分かるわ。でも私達も、まさかこの世界に来た人間が武器を全く使えなかったり防具を身に着けられなかったり……って言うのは良く分からないの』

「はぁ? それじゃもう八方塞がりじゃない」

 神でさえも分からない事があるのなら、ただの人間である自分達には到底分かる様な問題では無いだろうと美智子は呆れてしまう。

 だけど、とアンフェレイアはその後にまだセリフを続ける。

『思い当たるフシならあるわ。まずは武器と防具が使えないって言う話だけど、こんな話を聞いた事は無いかしら。この世界の武器と防具には生成する過程で魔力を注入するって』

「ん、聞いた事がある様な……」

 ずーっと前に何処かで誰かから聞いた覚えがある賢吾だが、誰から聞いたのかも何処で聞いたのかもサッパリ忘れてしまっていた。

『まぁ良いわ。その生成過程での魔力を注入すると言うものが、もしかしたら貴方達のその音と光と痛みの現象に関係があるんじゃないかと思ってね』


 すると、それを聞いていたカラス鳥人のユグレスが2人に向けて歩み寄る。

『そう言えば、私と戦った時も御前達は武器を使おうとはしなかったな』

「あの時は使わなかったと言うか……水の入った花瓶を武器代わりに私が使ったと思うわよ、確か」

 1回目のユグレスとのバトルを思い出してそう伝える美智子に反応したのが、今までそれを黙って聞いていたエリアスだった。

「俺と最初に戦った時も武器を使おうとはしなかったのを今になって思い出した。あれは使わないんじゃなくて「使えない」から素手で戦わざるを得なかったんだな」

『そうかも知れないな。ただ、花瓶を私の頭に叩きつけたのはあれを武器代わりにしたって事になるんだろう? ならば武器屋で売られている武器だとか防具屋の防具以外であれば使えるって事か?』

「だと思う。現に俺達が持っているノコギリはもう使った事があるしな」

 そう言いながら懐からあの美智子の手作りのノコギリを取り出した賢吾は、実際にそれを使って騎士団員を殺した感触を今でも覚えている。


 とは言え、まだ確定情報では無いので色々と調査をしてみる事にする。

『それじゃ、ユグレスが使っているそのロングバトルアックスとシェロフが使っているバトルアックスを実際に持って貰ってまずは確かめてみよう』

「長さが違うけど、2人の武器は同じ様な物を使ってるのね……」

 使い魔の2名の武器はどちらもバトルアックスだが長さが違う。

 だが今はそんな事は関係無いので、ひとまず賢吾と美智子にそれぞれバトルアックスを手渡すシェロフとユグレス。

 大体この後の展開は予想がついているものの、心の中で「これは調査の為に仕方無く……これは調査の為に仕方無く……」と念仏の様に繰り返し呟いて、嫌がる本能と戦いながら受け取る賢吾と美智子。


 バチィィィッ!!

「いってえええええっ!?」

「ぐっ……ああ、い、痛ぁああ!?」

 思わず絶叫してしまう地球人達の反応を見て、シェロフが『なるほどこうなるのか』と妙に冷静な口調で呟いた事をその当人である賢吾と美智子は気にする余裕も無い。

「うわっ、びっくりした……!?」

「ははあ、だから武器と防具が使えないって事か」

 イルダーとエリアスもびっくりしたり納得したりとそれぞれ違うリアクションを見せるが、まだ調査は終わっていない。


『それじゃ今度はこっちの短剣を持ってみてくれるかしら?』

 そう言いながら、コートの下から1本の大き目の短剣を取り出すアンフェレイア。

 イルダー曰く、アンフェレイアの取り出した短剣は見た所武器屋に売っている普通の物と何ら変わらないらしいのだが、当のアンフェレイアからは違いを伝えられる。

『これはね、魔力を入れずに作り出した短剣よ』

「そうなの?」

『ええ。武器に関してはエンヴィルークの方が詳しいから彼に説明を任せるわ』

『え、俺……?』

 別にそのまま説明すれば良いじゃんと疑問の視線を黄緑色の瞳で向けるが、アンフェレイアは特に反応を見せない。

『そうよ。私ばっかり話してる気がするから疲れちゃった』


 そんな人間の姿のドラゴン2匹の目の前では、実際に短剣を手に取ってみてビックリしている賢吾と美智子の姿があった。

「あれ? これは触っても大丈夫だな?」

「ほ、本当ね……何で? どうして?」

 今まで自分達が触って来た武器とか防具はまるでダメだったのに、魔力を入れずに作り出しただけで何故触れる様になったのか?

 この良く分からない結果について、武器と防具に詳しいエンヴィルークは理解した様である。

『あー、そう言う事か』

「どう言う事よ?」

『この世界の武器と防具は魔力を流し込んだ上で生成するんだが、その魔力を使用者の体内に流し込んで融合させる事によって、使用者の元々の身体能力を上げたり反射神経を鋭くさせたりするんだよ。そこに魔道具って言う補助用のアクセサリーを着けたりするんだが、それも同じく魔力を帯びていて体内の魔力と融合する仕組みだ。だが、御前達の体内には魔力が無いから逆にそれが原因になっていたんだな』

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