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219.肝心な事

 それに対して答えるのはアンフェレイアだ。

『私から話すわ。いきなりこっちの世界に、それも私達の勝手な事情で呼び出してしまった事をまずはお詫びするわ』

「ってか、それも本当は最初に言って欲しいわね。それで肝心の私達を呼んだ理由は何なのよ?」

 理由次第によってはキレても良い位だと思っている美智子は、ギラギラした目つきでアンフェレイアの言い分を待つ。

 5分か10分か、それとも僅か5秒か。

 内容が内容なだけに時間の感覚が無くなっている賢吾と美智子に対し、この世界の神の片割れはこう告げた。

『全ての条件に見合う貴方達が丁度、あの場所を通り掛かったからよ』

「「条件?」」


 声が重なった地球人の2人に、 人間の姿のアンフェレイアは頷いて肯定する。

『そう。この世界に呼ぶ人間の条件として3つのものがあったの。1つは何らかの武器術や体術に精通している戦える人間。2つ目は手先が器用で気配りが出来る人間。そして3つ目は複数人で、なおかつ長い付き合いがある人間。この3つ全ての条件を満たしていたのが貴方達なのよ』

「えー……でも、そう言うのって私達以外にも沢山居そうな気がするけどねぇ~?」

 それがただ単にそこを偶然通り掛かったと言うだけで呼ばれたのであれば、凄く言葉は悪いが通り魔とか無差別テロ等と変わらないじゃないかと美智子は思ってしまう。

 それは賢吾も同じ気持ちの様だ。

「それって、俺達以外じゃなくても条件に当てはまる人だったら誰でも良かったって話だったのか?」

『そう言う事になるな』


 エンヴィルークの答えを聞き、賢吾と美智子は顔を見合わせてそれぞれ人間の姿のドラゴン2匹の前に歩み寄った。

 一体何をするつもりなんだ? とドラゴン2匹だけでは無くその使い魔2体、更にはエリアスとイルダーまで地球人2人の動向を何もせずにじっと見守る。

「美智子、どう思う?」

「うん、私達が選ばれたのは素晴らしいと思うわ」

「そうだな、選ばれるって素晴らしいよな」

 お互いに顔を見合わせてそう言い、それぞれ更にエンヴィルークとアンフェレイアに近づく賢吾と美智子。

「御前はそっち」

「じゃ、私はこっちね」


 2人がそう言い合い、次の瞬間エンヴィルークの顔面に賢吾の右ストレートパンチがめり込む。

 その横では賢吾から習った美智子の右ストレートパンチがアンフェレイアの顔面を捉えた。

『ぶへっ!?』

『ぐえっ!?』

 まさかの展開に反応が遅れてしまった2匹の人間の姿をしたドラゴンは、そのまま後ろに尻もちをつく形で倒れてしまった。

「あー、スッキリしたぜ」

「本当ね。それじゃさっさと騎士団の陰謀を食い止めに行かないとね」

 勝手な理由、しかも「誰でも良かった」等と身勝手な言い分で自分達を呼び出したこの世界の神にそれぞれ1発ずつパンチを食らわせた地球人達は、エリアスやイルダー達は勿論の事ドラゴンとその使い魔達にも協力して貰ってさっさと地球に帰る事を改めて誓い合った。


「で、色々と疑問は解決したけど……それでもまだ俺達には疑問に思う事があるんだ」

『まだあるのか?』

 カラス鳥人のユグレスに聞かれた賢吾は頷く。

「ああ。ストレートに言えば地球とは全く違った世界が存在する事自体が凄い疑問なんだが、それに関しては今更ああだこうだ考えてもどうしようも無いからな」

 パラレルワールドだの異世界トリップだのと言うのは今までずっと創作物の中のだけ話だとばかり思っていた賢吾と美智子は、かなり長い時間こうして過ごしている様な気がするこの世界でも未だに実感が湧かない部分があるのが現状だった。

 しかし、それ以上に疑問があるのは賢吾と美智子の両方が同時に思っている事だった。

「けどな、俺達が謎だと思っているのはそこじゃない。もっと言えばこの世界に来た当初から感じていた事なんだ」

『この世界に来た時から?』


 ライオンの使い魔であるシェロフが身を乗り出せば、その時から感じていた疑問をここでハッキリとぶつけてみる賢吾。

「そうだ。それは俺と美智子が何故武器や防具を使えないのか……それから何で魔術が効かない上に回復魔術でダメージを受けてしまうのか、と言う事だ」

「あー、そう言えばそうだったわね」

 その現象が長い事出てきていないので、経験したのもずっと前な気がするわね……と美智子も若干苦笑いを浮かべた。

 そんな疑問に対してエリアスが横から口を挟む。

「それに関しては俺も別の方向から思う事はあるよ。俺の姿を消す魔術が最初に効いてなかったからな。でもそれは既に、君達の体内の中に魔力が存在しないから魔術も効かないって話で完結しなかったっけ?」


 そう、確かにそうなのだ。

 このエンヴィルーク・アンフェレイアと言う世界に必ず存在する魔力を持たない地球人である以上、その理由が1番有力だと言う事で話は終わった筈だ。

 だけど、それでも賢吾は「矛盾がある」と言って話を蒸し返しにかかる。

「じゃあ、何で俺に回復魔術を掛けられてそれであんなに痛い思いをしなければならないんだ? 普通だったら名前の通り「回復する」魔術なんだから、傷を癒したり疲れを取ったりする魔術なんだろう?」

「そうか、確かに言われてみれば変な話だね」

 イルダーも神妙な顔つきで頷き、だったらそれを知っているであろうこの世界の2つの神に話をして貰うべく視線を向けた。

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