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217.疑問と回答

 美智子が心配しているのはレメディオスの計画が成功してこの国の領土が広がる、と言う事では無い。

 むしろその逆で、計画が成功した事によってその先で進められるであろう計画によって逆にこの国が滅んでしまうのでは無いのかと言う話だ。

「まぁ、私達もそれ以上にこの国が滅んで自分達の世界へ帰る為の手掛かりが無くなっちゃったら困るんだけどね。その元の世界への帰り方すら未だに掴めていないのに、エリアスに「元の世界への帰り方を知っている」って話までされてここまでこうして来たんだからね」

 まさか甘い言葉に乗せられて、良い様にこき使われているのでは無いか……と疑問の表情になる美智子に賢吾も同意する。

「それも確かにそうか。今までバタバタしていて忘れていたのもあったが、良く考えてみれば俺達の目的はこの国を守る事じゃなくて元の世界に帰る事だしな」

 もっと言ってしまえばこの国がどうなろうと自分達には何の関係も無い筈だったのに、まずは美智子の誘拐があったから騎士団関係でエリアス達と敵対関係だったのが、そこから少しずつ騎士団への違和感が出て来る展開を経験して、しまいにはレメディオスの恐ろしい……と言うよりも「それじゃ無理だろう」と言う無茶苦茶な計画を阻止する為にここまでやって来た。


 だが、良く良く考えてみれば自分達がこんな騒動に巻き込まれるいわれが無いのである。

 ぶっちゃけた話この国がどうなってしまおうが自分達に関係無いのだが、このエリアス達と共に行動していたおかげでこうしてこの世界の神と出会う事が出来たのだから複雑な気持ちになる賢吾と美智子。

 神と言う存在に出会うのはファンタジー作品でも良くある話だが、こうして呆気無く出会ってしまうと何だか物足りない様な気もする。

『でも、貴方達の帰り道を知っているのもこの私達だからね』

「だから協力しろって言うのね……ほとんど脅迫じゃないかしらね、それって」

 何にせよここまで関わってしまったとなると色々とまだやらねばならないし、国内に居ても国外に逃げてもどっちにしてもまずい。


 何故なら国内に居たら騎士団に追い掛け回される羽目になるのが目に見えている上に、レメディオスの計画を知ってしまった以上は命を狙われるのが決まってしまっている。

 反対に国外に逃げた場合にはレメディオスの計画が成功する結末になるのだが、もしそうなった場合今度は国外に逃げた自分達を何としてでも始末するべきだと躍起になって騎士団を率いて追いかけて来るレメディオスの姿が賢吾にも美智子にも見える。

「要するに、俺達には逃げ場が無いって事になるよな」

「そうね。だったら敵対関係の芽をさっさと摘み取ってから元の世界に帰る方法を探したいわね。勿論貴方達にも協力して貰わないといけない訳だし」


 そう言いながらエリアスとイルダーの方を見る美智子に、視線を向けられた2人はぎょっとした顔をする。

「お、俺達も?」

「当たり前じゃない。そもそも最初に元の世界への帰り方を知っているって私達に言ったのは貴方なのよ、エリアス。だったらその言葉にはちゃんと責任を持って欲しいわね」

「元の世界への帰り方はこのドラゴン達が知っているみたいだから、結局あんたの言ってた事は俺達を誘う為についた嘘だったんだろ?」

 賢吾にもそう言われて目が泳ぐエリアスを見て、地球人の2人は確信した。

「ならやっぱり協力する義務があるよな? だってその話を信じて俺と美智子はあんた等に協力したんだし、それが原因で騎士団から命を狙われる結果にもなってるんだからさ」

「そうそう。そうじゃなかったら話が違うって事になるからね。当然の結果よね~っ?」

 もうやけくそでイヤミったらしく詰め寄る美智子に対し、流石のエリアスも「わ、分かった……」と相変わらず目が泳いだまま了承するしか無かった。


 しかし、その横ではイルダーからまだ疑問があった。

「それはそうとして、僕はアンフェレイア様にお聞きしたい事があります」

『何かしら?』

「僕を助け出してくれたのはありがたいんですけど、何で僕の居場所が分かったんですか?」

 レメディオスとのバトルに負けてピンチになっていた時に助け出してくれたアンフェレイアだったが、そのタイミングが余りにも良過ぎるのでイルダーは疑問に思っていたのだ。

 その疑問に対してアンフェレイアはその時の事を思い出しながら、自分の相棒であるエンヴィルークに顔を向ける。

 視線だけでその意味をくみ取ったエンヴィルークが、アンフェレイアの代わりに説明を始める。

『ああ……それは俺が最初に御前達に出会って地図を渡した時に、御前達に居場所が分かる魔術を掛けておいたんだ』

「え!?」

「あ、あれ……そんな魔術って掛けて頂きましたっけ?」

 まさかの発言にイルダーだけでは無く、目が泳いでいたエリアスまでびっくりするのは当たり前かも知れない。

 だが、それが当たり前だとでも言わんばかりの態度でエンヴィルークは続ける。

『俺達が目を掛けた人間だからな。途中で居なくなってしまったらまた代わりを探さなければならないだろう。まぁ、俺が解除すれば消えるから安心しろ』

「は、はあ……」

 何だか腑に落ちないなーと思いつつも、そのおかげで助かったイルダーは複雑な表情をするしか無かった。

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