表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
215/258

214.使い魔

 金髪をオールバックにして、相手から見て右の頬に大きな傷が縦に走っている中年の男は間違い無く、シルヴェン王国の騎士団の食堂で働いていたあのコック長である。

 賢吾と美智子に睡眠薬を飲ませ、大きな騒ぎになる事件の発端を作ったのも彼だ。

 そんな彼の正体が、まさかこの世界に自分達がやって来る切っ掛けの1つとなったあのライオンだったなんて……と賢吾と美智子はどう反応して良いか分からない。

 しかしそれ以上に驚くべき事は、そのライオンやカラス鳥人と一緒に居るレメクと同じ位の大きさの赤いドラゴンだった。

「また……ドラゴンか……」

 まさかレメクの他にもう1匹、こんな大きなドラゴンに出会うなんて思っていなかったので賢吾は何の気無しにそう呟いた。


 だが、それに反応した赤いドラゴンが口を開く。

『また……と言われても困るな。俺は御前達と出会うのは初めてなんだ』

「おっおう!?」

 レメクの件である程度は予想していたものの、いきなりドラゴンの口から人間の言葉が出て来た事によって賢吾は素っ頓狂な声を上げてしまった。

『別にそこまで驚く必要も無いと思うけどな。まぁ良い、俺達に色々と聞きたい事があるんじゃないのか?』

「あっ……はい、そうですね」

 思わず敬語になってしまう位にビックリしている賢吾を横目で見つつ、質問するべき事はきちんとしておこうとまずは美智子が口を開いた。

「えーと、色々とこっちから質問があるんだけどね。その……まず皆さんの自己紹介からお願い出来ますか?」

 最後は賢吾と同じく思わず敬語になってしまった美智子だったが、それについては特に何も触れずに『分かった』と赤いドラゴンが了承する。


『じゃあまず私からするわね。最初に言っておくけど、レメクって言うのは私が人間の姿で活動する時の偽名なの。私の本当の名前はアンフェレイアって言うのよ』

 クリクリとした大きな目をしているその顔をグイっと人間達に近づけ、声が聞き取りやすい様にするレメク……いや、アンフェレイアは自分の本名を名乗るものの、余りにも近過ぎるので思わず美智子はグイっと両手でそのアンフェレイアの顔を押し戻そうとする。

「ちょ……近いって!」

 その押し戻そうとした手が両手とも思わずアンフェレイアの鼻の穴をそれぞれ塞いでしまい、一瞬ではあるものの呼吸が出来なくなった事によって『ふべっ』と間抜けな声を上げるアンフェレイア。

『もー、痛いわね。私にこうやった人間は生まれて初めてだわ』

「私だってドラゴンの鼻を塞いだのは生まれて初めてよ。で……もう大体イメージ出来てるんだけど、そっちの赤いドラゴンさんのお名前は?」


 手をブンブンと振ってアンフェレイアの鼻の感触を消そうとしつつ、美智子はもう1匹の赤いドラゴンの方を向いて質問を振った。

『俺はエンヴィルークだ。俺の祖先がこのアンフェレイアの祖先と一緒にこの世界を創ったんだよ』

「あー、だからエンヴィルーク・アンフェレイアか。確かに世界の成り立ちの本にも2つの神の名前が組み合わさって名前が付けられた世界だって書いてあったしな」

 改めて名前を聞き、賢吾がやっぱりな……と納得した表情を見せる。

 だが、まだ自己紹介は終わっていないので美智子が残る2体の人外の存在に目を向ける。

「後はそっちのカラスの人とコック長さんの名前も出来たら教えて欲しいな」

 今は人間の姿ではあるものの、実際はライオンが本来の姿であるあの騎士団総本部のコック長と自分達を何回も襲撃して来たカラス鳥人の名前も、この際ハッキリと聞いておかなければ気が済まないのが賢吾と美智子。


 エンヴィルークと同じく美智子に質問を振られた彼等2人(?)は、お互いに顔を見合わせながらも呟く。

『まぁ、別に隠す様な事では無いしな。私はシェロフと申す』

『そもそも今更だし、名前で呼ばれないのも違和感がある。私はユグレスだ』

 ライオンの方がシェロフと名乗り、カラス鳥人の方がユグレスと言う名前だと判明したのだが、問題はそれよりもこのドラゴン2匹とどう言う関係なのかと言う話だった。

「シェロフにユグレスだな。それで、このエンヴィルークとアンフェレイアとはどう言う関係なんだ?」

 わざわざここまで連れて来て会わせたい、と言っていた以上はただの友達みたいな関係では無い事は薄々分かるのだが、ライオンのシェロフがこの世界にやって来る原因の1つであるし、カラス鳥人のユグレスは何回も自分達を襲撃して来ただけあって関係は何が何でも聞いておかなければならない。


 その聞き出そうとする賢吾の意気込みが伝わったのか、当の2匹のドラゴンは意外とあっさり彼等の正体を答えてくれた。

『こいつ等は俺達のそれぞれの使い魔だな』

「つ……使い魔?」

『ええ。シェロフが私の使い魔で、ユグレスがエンヴィルークの使い魔よ』

 使い魔と言うとそれこそファンタジー作品の代表的な存在の1つと言っても良いのだが、それが本当だとするとこのエンヴィルークとアンフェレイアは使い魔で自分達をこの世界に誘い込んだと言う事になるだろうな、と賢吾と美智子は確信した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ