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20.王都に向けて3

「分かりやすい様に塗り潰したこの部分が王都ね。で、この左上の海の部分にあるギリギリで囲った小さい島が私達が出会った場所よ」

 インクがついたままの羽ペンの先端でトントンと地図をつつき、改めて位置関係を確認するクラリッサ。

「となると、団長だっけ、副団長だっけ? どっちか忘れたけどあの島から半日位ってそう言ってたしそんなに時間は掛からないみたいだな」

 塗り潰された王都の位置は、賢吾とクラリッサが出会ったあの島から見て南南西の位置に見える場所にあった。

「でも馬で半日って事は、歩くともっと掛かりそうだな」

「そりゃそうよ。馬で半日って言うのはかなりのスピードで走らせての話だから、普通に進ませれば大体2日位かしらね」

「なるほどな。それ位ならそこそこの時間で済みそうだけど、実際はそれ以上に掛かるだろうよ」

「何で?」

「ほら、美智子の情報集めなきゃならないだろ?」

「……ああ、そう言えばそうだったわね」


 もしかして忘れられてたのか……と賢吾は眉をひそめつつも、気を取り直して何処で情報収集するかを考える。

 そう言えば、今の自分達が居るのは酒場だ。

 酒場は情報収集には持って来いだとか何とか言う話をしていたのを、以前賢吾は美智子から聞いた事がある。

 その美智子のセリフを信じて、賢吾はクラリッサに申し出をする。

「まずはここで情報収集をしても良いか?」

「別に構わないわよ。でも陛下への報告もあるし、時間は余り無いわよ」

「分かってるよ」

 意外な程あっさりと許可を貰えた賢吾は席を立ち上がり、さっさと情報収集をスタートする。


 ……だが、物事はなかなか上手く行かないのはこの世界でも地球でもどうやら同じらしい。

 スマートフォンには美智子の写真が残っていたので、それを見せて美智子の手掛かりを突き止めようとする賢吾だが酒場の店員や客は口を揃えて「知らない」「見た事無い」のオンパレードであったからだ。

 結局美智子に関しての情報は何1つ得られないまま、賢吾はクラリッサの待っているテーブルへと戻って来る結果になったのである。

「どうだった?」

「手掛かりはゼロだ。これじゃあ先が思いやられる」

「そうねえ……それじゃあ店の外でも少し情報収集しましょ。もしかしたら手がかりが見つかるかも知れないじゃない」

「時間は掛けられないけど、か?」

 賢吾の再確認に、当たり前とばかりにクラリッサは無言で頷いた。


 食事を終えて店の外に出た賢吾は、この小さな港町で再度情報収集を開始。

 酒場で情報が集まらなかったから町の中でも駄目かも知れない、と少し躊躇してしまうが、そんな事を言ってたら何も出来なくなってしまうのでとにかくやってみる事にする。

「……知らねぇな、こんな奴」

「うーん、見た事無いねえ」

「失せろ」

 首を傾げられ、つっけんどんにされ、それでもめげずに色々と聞きまわってみる賢吾。

 そんな彼の粘りがついに天に届いたのか、ある1つの情報を得る事が出来た。

「あー、そう言えば王都でこの人を見た気がするよ」

「えっ、本当か?」

「ああ、この人は確か王都の下町でフラフラ歩いていた様な気がする」

「そ、それって何時の話だ?」

「半日前かな。知り合いだったらすぐに行ってやればどうだい?」

「分かった、どうもありがとう!」


 中年の女からもたらされたその情報だけが、今の賢吾が美智子に辿り着ける唯一の手掛かりだ。

 その為にもこの情報は大切にしておかなければ、とクラリッサから羽ペンと紙を借りて探偵の如くメモをして行く。

「半日前に王都でフラフラ歩いている、美智子らしき人物を見たとの情報か……」

「半日前ってなると、私達が出会うよりも前の話になるわね?」

「俺があの洞窟で目を覚ました時から考えると……確かにそれはあるかも知れないな」

「だったら王都に急ぎましょう。貴方の知り合いが見つかるかも知れないわ」

「ああ、そうだな」

 クラリッサの言う事はもっともなので、腹ごしらえもした事だし2人は急いで王都に向かう事に。

 賢吾の粘りが美智子の情報に繋がったのは確かなので、後はその見かけた人物と言うのが美智子であれば100点満点である。


 あの渡って来た小島の時と同じく、クラリッサの馬に同乗させて貰う形で王都へとタクシーをして貰う賢吾。

 クラリッサ曰く「普通に馬に乗るよりも少しだけ速いスピード」と言う通り、体感速度で言えば15km位だろうか?

 実際はもっと速いスピードを出す事も出来ると言うのだが、王都までは最低でも半日かかると言う事なので余り飛ばし過ぎてしまうと馬がバテてしまう危険がある。

 だから馬の体力も考えつつ、それでいて少しハイペースで進まなければならない。

 賢吾としては少しでも早く美智子の情報が本当かどうかを確かめたいので、心の中がやきもきする。

 しかしそれで馬が進めなくなったら、かえって時間が掛かってしまう。

(急がば回れとはまさにこの事か……)

 何か少し違う気もする。

 どちらかと言えば「急いては事を仕損じる」と言うのが正しいんじゃないかと頭の中で自問自答をする賢吾を乗せて、馬は王都シロッコへと駆け抜けて行くのだった。


 ステージ1 完

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