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207.大失態

「逃げられただと!?」

「申し訳ありません、侵入者があの吸魔石を持っていたらしく、セバクターがやられました!!」

 王城の中にある玉座に座っていたレメディオスは、城の敷地内を捜索していた自分の部下からそう報告を受けてガタッと玉座から立ち上がった。

 いずれは自分が座っているこの玉座が「ランディード王国」の名前が復活すると共に自分の座る場所として設定される未来をイメージしながら、レメディオスは自分達の部下からの報告を待っていた。

 しかし、フタを開けてみればこの場所の警備を担当している騎士団員を全て動員しても捕まえられないどころか、逃げ切られてしまうと言う大失態を犯してしまった。

「まずい……このままでは私の顔もあのイルダーに見られているし、もし今の国王に色々と喋られたら私は終わりだ。国外へと逃亡されたら厄介だからな。すぐに各所の国境に通達を出し、今以上に検問を強化する様に伝えろ!!」

「は……はい!!」


 王都からあの魔力を持たない2人が逃げ出したと言う報告を受けていたレメディオスは、王国全土に検問を張ると同時に自分でもあの2人が行きそうな所を予想して先回り出来ないかを考えていた。

 イズラルザの地下、それから王城の地下、最後にこのランディードの王城だった場所の地下にそれぞれ魔法陣を描き、転送装置を作って移動出来る様にして目撃情報があれば何処へでもすぐに行ける様にセッティングしていた。

 結果として全国各地の部下達からの話を聞き、3つの拠点を順番に回っているとの報告を受けたレメディオスはこのランディード王国の王城に先回りする事に成功。

 更に周りの林の中で怪しい行動をしていた、騎士団に見習いとして入った筈のイルダーの捕獲にも成功して彼を人質にして、あの賢吾や美智子が来たら投降を呼びかける予定だった。


 だが、その目論見はまず自分の部屋から繋がっている屋敷の地下にある魔物の培養所が襲撃されて、そこから国宝の吸魔石を奪い取られてしまった時から既に狂い始めていた。

 あれは生き物のそばに置いておくだけでもその生き物の体内の魔力を吸い取ってしまう為、取り扱い注意で研究が進められていた代物なのだ。

 吸魔石の中にはその奪い取った魔力が溜まって行く事から、そのエネルギーを利用して開発を進めていた魔導砲のエネルギーにするべく秘密裏に吸魔石を持ち出して計画を進めていたレメディオスだったのだが、それを知ってか知らずか奪い取られて培養所も壊滅させられた。


 そしてその犯人が賢吾と美智子の2人だと言うのを、培養所が屋敷の地下にある事は知られてはいけないので証拠隠滅の為に屋敷に火を放って貰ったロルフとクラリッサから報告を受けたレメディオスは、こうして先回りをしてその2人がやって来たら捕まえるつもりだった。

 その前に潜入を試みていたのであろうか、あのイルダーを捕まえる事に成功したのもあって流れが徐々に自分達の方に向いているとレメディオスは確信。

 彼の口車に乗せられてバトルをしてしまった訳だが、部下の騎士団員達が「手助け」をしてくれた事で計画に支障は出ない筈だった。

 その上、2つ隣のエスヴァリーク帝国から長期休暇を取得して旅行にやって来たと言うその帝国騎士団員のセバクターと言う男を上手く騙して協力させる事に成功し、完全に包囲網を作り上げたつもりだった。


(なのに、まさかあのセバクターが吸魔石にやられただと!? それはそれとしてあの魔力を持っていない奴等には何の影響も無いのか?)

 この世界の生物は人間も獣人も動物もそして魔物も、それぞれ例外無く魔力を持って生まれ育つのが当たり前だ。

 イルダーやあのワイバーン使いのフードの男、それにセバクターは魔力を持っているから影響を受けるとしても、元々魔力なんてものが存在しない世界からやって来たあの2人だったら確かにその石の影響は受けないな……と自問自答して納得するレメディオス。

 城の中に潜入した、反逆者と言う名目で伝えておいたあの3人と対峙したと部下の騎士団員を通してセバクターからは報告を受けていたので、恐らくあのセバクターが吸魔石を持っているメンバーと対峙したその時に影響を受けたのだろうと予想した。


 ……のだが、それ以上に不可思議な人物の報告も一緒に受けていた。

(私もあのイルダーと戦った時、謎の光にいきなり襲われた……)

 イルダーと戦って、人質にする予定だったのを変更して息の根を止めてしまおうとした自分に突然眩い光が襲って来て視界が奪われたのは記憶に新しい。

 それがのちの報告で、光の魔術らしきものを使う女の姿がこの王城の敷地内で目撃されていたと知った。

 その女に関しては勿論レメディオスも知らないのだが、もし女が賢吾や美智子の知り合いならば協力してこの王城に侵入する手助けをしたのは簡単に予想出来る。

 それにあの光に自分達が襲われた時に、何処かから女の声が聞こえた様な記憶もレメディオスにはある。

(くそ、とにかくその女もそうだが……まずは逃げたイルダーやあの魔力を持っていない人間達を捕まえに行かなければ!!)

 しかし、この時レメディオスは更なる盲点を見逃していた……。

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