表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

207/258

206.ナビゲーターの正体

 4人を城からナビゲートして無事に脱出させたこの女は一体何者なのか?

 夜の月明かりに照らされて髪の色も上手く判別出来ないが、女が4人の方を振り向いた途端に賢吾とエリアスの記憶がフラッシュバックする。

「……あ!!」

「あれ、貴女は……!!」

「こうして出会うのは久し振りね」

 まだ賢吾とエリアスが敵対関係にあった頃、エリアスの屋敷から逃げ出して滝壺に向かってダイブした賢吾と、それを追い掛けて捜索に向かったエリアスが川のほとりの村で出会った、賢吾よりも少しだけ背が高くてややエメラルドグリーンの髪の毛を持っている外見年齢25歳位の女がそこに居た。

 そしてその女が「レメク」と名乗っていた事もまだ記憶に新しい賢吾とエリアスの目の前で、彼女が口を開いた。

「確か、あの川のほとりの村でお世話になった、ええと……レメクさん、でしたっけ?」

「そう、良く覚えてるわね」


 その横から美智子が賢吾とレメクの間に割って入る。

「この人……誰?」

「いや、誰って……今の話聞いてただろ? それに前にも話したと思うけど、俺がエリアスの屋敷から逃げ出した後に、川に落っこちてそのまま流されてさ。そしてその川のほとりの村まで辿り着いて、エリアス達から逃げるのを手助けして貰ったって話……したよな?」

「ええ、まぁ……」

 その世話になった、と言うのがどう言う形で「世話になった」のかが引っ掛かる美智子だが、2人のやり取りを見ていた限りでは特にやましい様子は見られないのでそれ以上の追及は止めておいた。


 そんな美智子の横で、今度はレメクがエリアスの方に顔を向ける。

「そうそう、貴方もこの男の人が馬車に乗って村を出て行った後に会ったわよね?」

「そう言えばそうだったな。しかし、何故あの川のほとりの村に居た筈の貴女がこんな所に? それに俺達を助けてくれたみたいだけど、一体どうやってあの騎士団員だらけの城に入ってその後に俺達を引き連れて脱出出来たんだ?」

 考えてみれば、このレメクと言う女については賢吾もエリアスもその川のほとりの村で出会っただけであってその他の部分はかなり謎に包まれている。

 まず、何故自分達がピンチな状況になっているのが分かったのか。

 それから声が良く通るのは結構だが、明らかに自分達とは離れた場所に居たので普通に喋っても聞こえないだろうし、もし声が届く程のボリュームで喋っていたとしたらすぐに騎士団員達に気が付かれていただろうと考える。

 しかも謎の光を少しばら撒いただけで何故あんなに騎士団員達の目くらましが出来たのか?

 そして脱出の時に騎士団員達の妨害を受ける事無く、かなりのハイペースでスムーズに脱出する事が出来たのも何かそれなりの理由がありそうだ……と4人の疑問は尽きない。


 次から次へと4人のどんどん膨らむ疑問に対し、レメクはもう少しここから離れてから何処かで落ち着いて話しましょうと提案する。

「やっぱりここじゃまだ城が近いし、もっと離れてからじゃないと何だか落ち着けなさそうね。何処か安全そうな場所は……」

「安全そうな場所と言われても、この近くには心当たりが無いな」

「でも、離れた方が良いって言うのは僕も賛成だね」

 イルダーもレメクの提案に賛成するものの、その肝心のクールダウンポイントが見つからないと移動のしようが無いと悩むエリアス。

 それに、城の裏口の近くでずっと悩んでいればまた騎士団員に遭遇してしまうかも知れないのでとにかくここから離れようとエリアスはレメクに対して提案する。


 だが、そのエリアスの提案にキョロキョロと辺りを見渡してから考え込む様子を見せるレメク。

「うーん……あそこに見える広い場所なら何とかなるかな……」

「えっ?」

 レメクが顔を向けながら呟いたその視線の先には、裏口から出て来た城の関係者が日向ぼっこをする為の場所として造られているなかなかの大きさの広場があった。

「あそこまで行っても何にもならないだろう! 逃げるならこっちの方がさ……」

「いいえ、私は覚悟を決めた。とにかくあの広場まで一緒に来て」

「ね、ねえちょっと!?」

 賢吾が指差した、裏口から抜け道として続いている林の中の狭い道には目もくれずにレメクが一目散にその広場に向かって走り出したのを見て、美智子が止めようとするものの既に遅かった。

「しょうがない、俺達も行こう」


 エリアスが他の3人を連れてレメクの後に続き、一行は広場へと辿り着いた。

「こんな場所に来ても道なんて無いだろう。一体何をする気だ?」

 林の木々に囲まれた、本当に何の変哲も無い楕円形の広場までわざわざ来た意味は一体何なのか。

 それをレメクに問い掛けた賢吾だが、その賢吾を含む4人の目の前でレメクは自分の着ているアクアグリーンのロングコートの内ポケットから1つのビンを取り出し、そのフタを開けて中の液体を躊躇い無く飲み始める。

「おいおい、のんきに一服している場合じゃ……」

 そう賢吾が言い掛けたその時、レメクの身体が急に眩い光に包まれた!!

「うっ!?」

「うわ!!」

「きゃあ!?」

「うわあ!?」

 4人がそれぞれのリアクションを見せる横で、光の中のレメクのシルエットがどんどん変化する。

 そして光が収まった後にそこに現れたのは、明らかに「ドラゴン」と呼べる四足歩行の大きな生物だった……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ