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204.異国の剣士

 扉の先にはまたもや階段があり、そこから風が吹き込んで来ているので外に続いているのだと判断して確かめてみる事にして上に上がった3人は、目の前に現れた光景を見て思い思いのリアクションをする。

「な、何だここ……」

「中庭ね」

「なかなかの広さだ。流石に元は王城だったと言うだけあるな」

 目の前に現れたのは城の中庭。

 その中庭は運動場と連絡通路の役割も果たしている様で、奥の方にはまた別のドアが取り付けられた城の出入り口が見える。

「とにかくあのドアの先に進んでみれば分かるかも知れないな」


 賢吾がそう結論付け、歩き始めた……その時だった。

「うおっと!?」

「うわ!?」

「なっ……」

 その出入り口に向かって3人が近づいて行くと、ぬっと突然そのドアの先から人影が現れた。

「……!?」

 突然人が現れた事に対して御互いにびっくりしたのだが、3人がびっくりしていたのは現れた男が明らかに武装していたのもあっての事だ。

 その中庭から続く別のドアから現れたのは、ややピンクがかっている赤い髪の毛に金色の縁取りをしている水色の肩当てと胸当てを着けており、紫のブーツにこれまた水色のすね当てを装着している1人の若い男である。

 腰には使い込まれた形跡のある鞘に収まったロングソードをぶら下げているその服装からすると、大方旅人の剣士だろうと対峙した3人は考えた。


 だが、その男は無口な性格なのか3人の容姿をマジマジと観察している状態で黙り込んだままである。

「……あ、あんたは何者だ?」

 特に自分達に対して攻撃を仕掛けて来る様子は見られないが、それでもそのシチュエーションに痺れを切らした賢吾が、我慢し切れずにその男に何者なのかを単刀直入に聞いてみる。

 ここに居ると言う事は、十中八九レメディオスの仲間だと言う可能性が高い。

 しかし、もし仮に目の前の彼がレメディオスの仲間だとしたら出会ってすぐに切り掛かって来ないのも不思議な話だ。


 しばしの沈黙の後、その賢吾の疑問に答える様に男が口を開いたのだが、そのセリフに3人の表情が一気に変わる事になった。

「……反逆者と言うのは御前達の事か」

「はい?」

「な、何よ反逆者って……」

「やはり、あんたはあのレメディオスの仲間なんだな!!」


 賢吾と美智子とエリアスの反応は様々だったが、その男は冷ややかな目つきと態度を変える事無く更に問い掛けて来る。

「貴様等の方こそ一体何者だ?」

「お……俺達はここに迷い込んでしまったんだ。それよりも貴方は?」

 賢吾がなるべく冷静に男にそう問い返すが、男は冷ややかな目線を止めて怪訝そうな表情に変わる。

「迷い込んだ……? 3人揃って何処をどうやったら迷い込むんだ。王国騎士団員の見張りだって居ただろうし、何より今この先で尋問を受けている若い銀髪の男と同じ事を言っているからな……かなり怪しい」

「えっ……? い、イルダーがここに居るのか!?」

「バカ!」


 エリアスが賢吾の頭をグーで殴りつけるが、時既に遅し。

 赤髪の男は使い込まれたロングソードを腰から引き抜き、獲物を見据えるハンターの様に鋭い目つきで構えた。

「やはり何かを知っている様だな」

「待て待て、俺等は別に争う気は無い!」

 賢吾が焦りつつ何とか事を収めようとするが、赤髪の剣士の目が鋭く光る。

「そっちに争う気は無くてもこっちにはある。この国の騎士団長から頼まれたんだ。休暇中で悪いが、王国に危機をもたらそうとしている反逆者の連中が居るから捕まえるのを手伝って欲しい……とな」

「は? いや、反逆者は……」

「既に反逆者の男が1人捕まっている訳だし、その男の名前も知っている様だからな。今更その男と関係は無いとは言うまい?」

 今まさにその答えを口から出そうとしていた賢吾は、赤髪の男に先に間違った結論を言われてしまった。

「な……」

「フン、図星か。これは騎士団長にも報告しなければな」


 何かヤバイ方向に話が向いているのでは無いか?

 3人の背中に冷や汗が流れるので、何とか話題を正しい方向に持って行くべく美智子が声を上げる。

「ちょちょちょ、まだ結論を出さないで落ち着いて聞いてよね。そもそもレメディオスが貴方とどう関係があるのよ?」

 3人が1番聞きたい疑問を美智子がぶつけるが、次の瞬間驚くべき答えが赤髪の男からもたらされる。

「だから俺は頼まれたんだ。この国には俺は休暇で来ていて、本当に偶然なんだがここに来た時にその騎士団長のレメディオスに出会ったんだ。最初は乗り気では無かったんだが、このまま反逆者の御前達を放っておけばいずれはこの国が滅びる事になるから助けてほしい、とな」

 凄い真顔で答えを導き出す長髪の男だが、その話を聞かされている3人にとっては気が気では無い。

 何故なら、反逆者は自分達の方では無くレメディオスの方だからだ。

「本当の反逆者はその騎士団長の方だ……と言って信じて貰えるのか?」

「どうだろうな。だが、完全に反対のその話を信じるにはかなりの時間が掛かりそうだ」


 赤髪の男はロングソードを構えたまま、そう問いかけて来たエリアスにそう言った。

 完全に自分達は反逆者扱いである。

 だったらやるべき事はこの男を退けて先に進み、早くイルダーを見つけ出してさっさとここから脱出する事であった。

 その前にこの男が何者なのかを知っておく必要がある。

「あんた、休暇で来ているって言ってたけど……結局何処から来た誰なんだ?」

 賢吾がそう尋ねると、ようやく男は自分の身分を明かす。

「俺はセバクター・ソディー・ジレイディール。エスヴァリーク帝国の騎士団員だ」

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